今朝早く 携帯が鳴る
あわてて取ると 「〇〇さん お元気?」と
私のことを 迷わず旧姓で呼びかけるのは
K県に住むYさん
若いころ柔道の選手だったというYさんは
がっちりした大きな身体で フッフッフッ と 肩を震わせ
眼鏡の奥からのぞく 小さくて優しい目は いつも穏やかに笑っています
「僕、今にっぽん丸の船の上なんですよ。今朝お隣の県のS市の港について 有田に行くんですけど」と 奥様とご一緒に船旅を楽しんでいらっしゃるご様子
ずっと昔 若かりし頃 国の国際交流の事業の一環として「にっぽん丸」に乗って
一緒に南半球を旅し 活動をご一緒し Yさんは ひとグループ30人ほどのチームのリーダーをされていました
退職後 各地に旅され 行く先々でメンバーの一人一人と再会されているようです
メンバーにとって お父さんのような存在でもあります
町の焼き物屋さんに立ち寄られるとのこと
7~8年ぶりの再会でしょうか
Yさんの大好きな羊羹をお土産に そのお店に出かけました
出がけにお客様がお見えになり 少し時間が遅くなった私を
お店の前の入口のところで 待っていて下さいました
「お久しぶりです・・」とご挨拶をして
「奥様はどちらですか?初めてお会いしますからご挨拶をしたいんですけど」と私が言うと
「そう 奥さんね 今 お店の中でお買い物してる」といって 中に入っていかれます
そして 広いお店の入口に立って
「うちの奥さんどこですか?」 「うちの奥さん 誰か知りませんか?」と
大きな声で お店の人や クルーズのお仲間の方に 聞かれます
一斉に お店の中のお客様が 私たちの方を見ています
昔 メンバーの誰かを呼ぶように 良く通る大きな声で・・・
可笑しくて クックックッ 声を出して笑ってしまいました
間もなく 奥の方から 奥様が 「風鈴を買いました」と
新聞紙に包まれた風鈴を 大切そうに抱えながら 出てこられました
「いいですね 夏には きれいな音色で涼やかだと思います」というと
「あのね 私はひさしにかけて 一年中聞くのが好きなんです」と やさしい表情を浮かべて
ふふふ・・・と 笑っていらっしゃいます
素敵な奥様です
次は 伊万里の焼き物屋さんを回るのだと バスに乗って行かれました
手を振ってお見送りをしながら ふと・・・
忙しくて 仕事は まだ 山のように残っているけど・・・
やっぱり 新しい「にっぽん丸」を私も見てみたい・・・
次はいつ見られるか分からない・・・ やっぱり 行きたい
夕方 S市の港に向けて 夫の運転で出かけました
港に 大きな船舶が泊まっています 昔乗船した「にっぽん丸」とは 違いますが
大きな窓から漏れる灯りや デッキを見ていると 懐かしさで いっぱいになります
しばらくして 船を見に来たことをYさんに電話で告げると
「どこどこ?」と言われるので 「お土産屋さんの並んだテントの前です」と告げると
「あ~~、そこ ずっと右 右 そうそう そのまま ずっと進んで・・左見て・・」と
言われる通り進んで フッと 見上げると
キャビンの窓から 半身裸のYさんが タオルを片手に 元気よく手を振ってます
「え~~ッ 班長 なんではだかんぼうなんですか?」と聞くと
「お~ッ、 熱くってシャツ脱いで キャビンで休んでいたところよ」と ガハハハッと笑っている
小さな船窓から 大きな身体で手を振るYさんの姿は まるで子供のようです
可笑しくて 私も いっぱい手を振りました
「またね 元気でね~」と 寒いデッキに出て
奥様と一緒に いつまでも手を振ってくださいました
お風呂上りに 寒風にあたって大丈夫だったでしょうか?
遠ざかる船を見送りながら
側で一緒に見送ってくれていた夫が ポツンと
「船の別れは なんだか 物悲しいな~」と つぶやきました
今度は いつ会えるのだろう・・・
お互いに元気で また きっと お会いしましょう・・
佳秀窯HP ↓
https://www.nishiyama-tadashi.com