こんにちは。ながいち!です。
埼玉県の私鉄沿線の街に住んでいるのですが、駅前の本屋をのぞくと、組織に関する分厚いビジネス書が5冊も平積みで置かれていました。
書名は『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(2018年、フレデリック・ラルー著、英知出版)です。
「10万部突破!」と帯に書いてあるので、ベストセラーです。
(稼プロ!20期生であれば、『企業診断』馬渕編集長の特別講義で学んだばかりですね。)
発売以降、ビジネスマンの間で注目の書籍だったそうですが、私が知ったのは半年前くらい。
600ページ弱もあるため、読み切れないリスクを感じ躊躇していました。
今回も購入せず。「ティール組織」の解説本や関連本は何冊か読んだのですが。
ブログのネタにしたのは、この分厚い組織論のビジネス書が、都心の大規模な書店ではなく、ターミナル駅でもない私鉄駅前の本屋に5冊も平積みで置いてある、という事実に驚いたからです。
チェーン店の本屋です。
確かに売れるからこそ置いてあり、そこに世の中の変化が表れていると感じるのです。
ラルー氏が提唱する「ティール組織」について、解説本やネット記事の助けを借りて要点を説明すると次の通りです。*1
1.ラルー氏は5段階の組織の進化論を唱え、「ティール組織」を最も進化した組織モデルに位置づけています。(「ティール」は英語で、青緑色の意)
2.社長や上司からの指揮命令はなく、メンバーが相互信頼に基づき独自のルールや仕組みを工夫しながら運営を行います。
3.メンバーは組織が掲げる社会的使命を意識しながら、自分がやりたいこと、自分ができることを考え、提案し実行します。そのことで組織と個人の成長を図ります。
4.「ティール組織」であるための重要な要素は以下の3点とのこと。
(1)進化する目的
組織を、誰かの所有物としてではなく生命体と捉え、生物に生きる目的があるように、組織も存在し続ける目的を持つべきと考えます。指揮命令系統がないため、環境変化に合わせて、メンバー自身が組織の目標を進化させる必要があります。
(2)セルフマネジメント
情報の透明化、意思決定プロセスの権限委譲、人事プロセスの明確化が図られ、メンバー全員が主体的に運営に関わることのできる状態を実現しています。
(3)ホールネス
個人が能力を最大限に発揮できることが重視され、一方、組織はメンバーの個人的な弱さや不安にも寄り添います。
このような組織論が広く読まれるのは、従来型の組織が人をあまり幸福にしないという意識が、多くのビジネスパーソンの中で育っているからではないでしょうか。
従来型とは、例えばラルー氏が「オレンジ組織」と名付けた組織モデルです。
階層型組織の進化版で、階層は軍隊のように硬直的ではなく、成果を上げたメンバーが評価され出世できる実力主義の組織です。
メンバーは、組織の生産性をあげるために働き、変化と競争の中を生き抜く必要があります。
さらに、半年におよぶwithコロナの業務環境が、この本がビジネスパーソンに売れる原因になっているように思います。
オフィスを離れリモート中心に仕事をしていると、「組織がどうあればよいか」について考えてしまうのではないでしょうか。
雑談や飲み会などの非公式コミュニケーション、表情や行動などの非言語コミュニケーションが、リモートワークではかなり失われます。
メンバーとメンバーの感情的なつながりが希薄になり、組織の規範的な側面が全面に出てくるような状況で、人と組織との関係を問いたい思いが生れるのではないでしょうか。
「ティール組織」は、究極の組織モデルのように見えます。
ただ、実現のハードルは相当に高いと思わざるを得ません。
管理職による指揮命令をなくしてしまうのですから、特に既存組織が、自己変革により「ティール組織」になるのは至難の業でしょう。
実現例としてよく取り上げられるのが、米国にある靴のネット通販会社「ザッポス」。
サービスを通じて「ワォ!」という驚きの体験を届けることを目指し、ネット通販でありながら、カスタマーサービスの人間味あふれる対応で顧客の支持を集め、成功を収めた会社です。
成功の原動力は、会社が大事にする価値への共感と、企業文化でつながりあった社員たちでした。
しかし、2014年に「ティール組織」への組織変革が打ち出され、マネージャーの職がなくなるとわかったとき、18%の社員がやめたそうです。
さて、従来型の組織であった私の所属会社では、最近、社員の異動が原則「公募制」に変わりました。
ポストが空けば社内公募し、手を上げた人から選ぶ方式です。
また、会社と個人の対等な関係、自律的にキャリアをつくることの重要性が研修で強調されるようになりました。
階層型組織をなくすことはできませんが、会社と個人がWIN-WINの関係になれるよう、会社も一生懸命なのがわかります。
600ページ近い「ティール組織」論が多くの人に読まれる時代。
コロナ禍は、持続可能な社会への希求、デジタル化等、世の中の様々な潮流のスピードを速めていると言われます。
10年後には組織のあり方や、人と組織の関係が大きく変わっている予感がします。
*1 参考文献
・『実務でつかむ! ティール組織 “成果も人も大切にする”次世代型組織へのアプローチ』 (2018年、吉原史郎著。大和出版)
・JIACコーポレーションコラム&ニュース「Teal(ティール)型組織とは?達成型組織との違いについて」
しっかり理解できていないので、今回のブログも参考にしながら理解を深めたいと思います。
イメージができないのは、まだ経験したことがないからなのかもしれません。
フレデリック・ラルー
『[イラスト解説]ティール組織』
近藤宣之『社員に任せるから会社は進化する』
~日本版「ティール組織」で黒字になる経営の仕組み~
コメントをありがとうございます。ティール組織なるものを知ったのは、実務従事で人事担当のメンバーがこれを診断先に提案したからです。こんな組織が実現できるのか????との疑問からスタートし、今でも?マークは消えていません。
鴨志田先生
本の推薦をありがとうございます。手にとってみようと思います。
この組織モデルでよくわからないのは、どうやって給与・報酬を決めているのか、という点です。
そうならば、近藤氏の本がお薦めです。
私は、人を大切にする経営研究会で2度、近藤氏の講演を聞いています。
今年もあるのではないかと思います。スポットで参加も可能のようですよ。宇野さんに確認するとよいでしょう。