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Responsibility、Accountability

2021-06-03 12:00:00 | 20期生のブログリレー

20期の大井です。

ビジネスでよく使う横文字responsibilityとaccountability。辞書を引くとそれぞれ「責任」、「説明責任」と訳が出てきます。さて、どちらが責任が大きいでしょうか?accountabilityは「説明」だけだから、responsibilityより軽いのか?先日、NHKのビジネス英語を聞いていたら、こんな説明が出てきました。

responsibilityが現在・未来の事柄についての責任を表すのに対して、accountabilityは過去の事柄についての責任を表します。言い換えると、responsibilityは「これからすることは誰の責任か」、accountabilityは「したことについて誰が責任を負うのか」というニュアンスの違いがあります。

(出典:NHK出版『NHKラジオ ラジオビジネス英語2021年4月号』)

どうも訳語とニュアンスが違います。こういうことのようです。

例えば、9月に完了予定の商品開発プロジェクトを考えみましょう。今、6月。ある担当者はマニュアル作成を担当しています。この担当者が負っているのはresponsibilityです。今している、または、これからすることだからです。つまり割り当てられたタスクを完了させる責任がresponsibilityです。そして特徴的なのはresponsibilityは他者と共有できる概念という点です。

一方、このプロジェクトが調達トラブルで10月に延期になりました、という状況を考えます。このとき、プロジェクトマネージャーが負うのはaccountability、タスクの結果に対する説明の責任です。accountabilityは結果責任とも言い換えることができます。そして、accountabilityは他者と共有できない概念です。つまりaccountabilityのほうがより重いロールと言えます。

最近、RACIチャートという役割分担を明確にしたマトリックスがよく使われます。通常、横軸に部門や担当者を、縦軸に業務を構成するタスクを並べます。各タスクにおいて、どの部門が何の役割を持つかが明示します。また役割は、R: Responsible(責任がある)、A: Accountable(説明責任がある)、C: Consulted(意見を求められる)、I: Informed(事後に共有される)の4種類で表します。この頭文字をとってRACIと呼んでいます。例えば社内システム導入で書くと、簡単にはこんな感じです。実際にはもっと詳細なタスクごとにブレイクダウンします。

RACIマトリックスはプロジェクトだけでなく日常の業務プロセスの役割分担の明確化にも使えます。また、通常、Rは複数になることがありますが、Aが複数になることはありません。Aが説明責任=結果責任を負うからです。RだらけでAが書けないとか、CだらけでRが書けないといったタスクがあったら、それは組織設計やプロジェクト設計上の澱み点です。早めに摘み取らなければなりません。

私が過去に見かけたもので、品質トラブル対策でRACIを使ったものがありました。関係部署と業務を洗い出しRACIを整理したところ、最終のテストフェーズで、RがあってもAが存在しなかったタスクがありました。局所的なテストは見届けできていましたが、テスト全体や各テスト間の整合性に責任を持つ部門が無かったのです。よく見ると、テスト計画のaccountabilityもちょっと変なところにあります。


このときは経営者が組織を変える判断をしました。開発プロジェクトを統括する部門を設置し、そこにaccountabilityを持たせました。このように業務プロセスの分析や組織の穴があることの訴求にも、RACIチャートは有効です。このときは品質課題という喫緊の事態だったため理想的な解決法になりましたが、問題がシリアスでない場合、なかなか組織まで手が入らないのが現実です。よくあるパターンは、

日本(メンバシップ型組織):
 ・関係部門でカバーし合う
 ・カバーできない場合、社内で空いている人をまわして補充する(または外注する)
欧米(ジョブ型組織):
 ・必要とされるスキルを明確化する
 ・そのスキルがある人材を外部採用する

RACIとジョブ型組織は非常に相性が良いです。その役割が必須で人が必要となると、採用でダイナミックに解決します。一方、日本的解決法は、実はaccountabilityを誰が持つかという問題の解決がなかなかできません。メンバシップ型のカバーし合う良さが、責任を負わない業務プロセスを生むという皮肉な結果になっているのです。ジョブ型人事制度が広まりつつありますが、その大前提として、各タスクのRACIを明確にすることが求められます。メンバシップ型の責任共有(回避?)タイプの業務プロセスに慣れてきた我々日本のビジネスマンには、相当なマインドチェンジが必要です。

 

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コメント (2)
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