ウィーンで学ぶ

---ウィーン医科大学心臓胸部外科
留学日記とその後...---

弁形成術

2007年09月23日 | 病院
この日は弁形成術を得意としているS教授の症例の担当助手でした。

僧帽弁後尖P3 prolapseが主病変でそれほど困難な症例ではないと思っていました。通常通り心房間を剥離し右側左房切開でアプローチしましたが、左房径サイズの問題か、どう展開してもなかなか視野が得られませんでした。それでも何とか教授は弁輪にring逢着用の2-0 Ethibond を全周かけ、病変部をcut and sutureで形成しほぼ逆流は消失したかのように見えました。しかし教授は一部残存しているリークに納得せず、追加運針をかけ、さらにリング用のEthibond糸にも納得がいかずかけ直しましたが・・・。

視野不良のため思うような運針が出来ず、結局人工弁置換術を決断されました。手術途中でも経右房切開もあると打開策も脳裏にはあったのですが、結局大動脈遮断時間も長くなり、弁置換と至ったわけです。

S教授は困難な形成症例も手がけていますが、視野が得られないのではお手上げでした。アプローチもかなり剥離して僧帽弁に近い位置で左房を切開したと思っていましたが、実際はもっと剥離が必要だったのでしょうか。若しくは初めから経中隔切開をするべきだったのでしょう。何れにしても弁置換でさえ困難な症例でした。


2日後、その日の担当助手症例はペースメーカーリードが感染源の三尖弁IEというやや珍しい症例でした。執刀医のG教授は体外循環を確立し右房切開。後尖に2cm大のvegeが着いていて、典型的な所見です。さあどうするのか?

ベテラン外科医のG教授ですが、弁形成術を得意としているS教授をORに呼び意見を求めました。議論の末、形成術で治癒可能との結論になり、彼の助言の下、Cut and suture + sliding で病変部は完全に切除されかつ逆流もなく形成されました。さらにリングで弁輪を補強しました。


どちらの形成術にも学ぶべきことが多く含まれており、大変勉強させて頂きました。
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