特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

8-9・ハーフェレ・キーティングの実験と2つの特殊相対論

2024-02-13 03:02:31 | 日記

「2つの特殊相対論」とは「アインシュタインの特殊相対論とミンコフスキーの特殊相対論の事」です。

さてそれで「ハーフェレ・キーティング」の行った実験についての彼らの解釈の仕方、理解の仕方はアインシュタインの理解の仕方に沿ったものでした。

つまりは「北極上空に静止系を設定してそこから観測した」のでした。(注1)

その様に設定して地上に置かれた時計と飛行機に載せられた時計の間に生じた時間の遅れを計算するとそれは見事に実験結果を説明できていたのです。

そうであれば彼らは「アインシュタインの特殊相対論は正しい」と結論を出したのです。

 

さてしかしながら「ミンコフスキーの特殊相対論」には「明示された形の静止系」と言うのは出てきません。

そのかわりに「全ての慣性系は同等である」が前面に出てきています。(注2)

さてその立場に立ちますとそこからは「時間の遅れはお互い様」が出てきます。

そうして「時間の遅れはお互い様」という立場に立った時には「ハーフェレ・キーティングの実験結果を説明する事はできない」という事はすでに述べた事です。

なんとなれば「飛行機で東回りに飛んだ観測者」は「地上の時計は西回りに運動している=地上の時計は遅れている」と主張する事になります。

そうしてまた「地上にいる観測者」は「飛行機が東回りに運動している=飛行機の時間が遅れている」と主張するのです。

しかしながら「実験結果は『飛行機の時間が遅れているの一択」なのでした。

さあ「ミンコフスキーの特殊相対論」はこの結果をどのように説明するのでしょうか?

 

「円運動しているのだから慣性系を対象とした特殊相対論では説明できない」というのでしょうか?

しかしながら「アインシュタインの特殊相対論」によれば「ハーフェレ・キーティングの実験結果は見事に説明されている」のでした。

その事実を「ミンコフスキーの特殊相対論」はどのように釈明するのでしょうか?

 

くわえて「8-6での検討結果」によれば「ハーフェレ・キーティングの実験結果は存在している静止系に対しての地球のドリフト速度は0.5Cを超えてはいない」という事を示していました。

これは「もしドリフト速度が0.5Cを超えていた」とするならば「ハーフェレ・キーティングの実験によって『何か、この実験には見落としがある』」という事が明らかになるからであります。

そうして実際には「ハーフェレ・キーティングの実験結果」は「アインシュタインの特殊相対論の計算結果と一致していた」のです。

そうであれば「静止系に対する地球のドリフト速度は0.3C以下であろう」と見積もる事も出来ました。

さてこの結果はラフな言い方を許してもらえるならば「存在している慣性系のうち地球の静止系となりうる慣性系は30%程度であって、50%を超える事はない」という事を示しています。

それはつまり「全ての慣性系は同等、という事ではない」という事です。(注3)

という事は「全ての慣性系は同等」という「ミンコフスキーの特殊相対論の主張は成立していない」という事になるのです。(注4)

 

注1:このやり方はアインシュタインが提案した通りのものとなっています。

アインシュタインいわく

『・・・この定理から次の事が推論されよう。

地球の赤道上に固定され、自転する地球に伴って、動いている平衡輪式時計(注1)は地球の南北いずれかの極点に置かれた全く同じ構造や性能を持つ時計(置かれた場所の違いを別にすれば、これら二つの時計は全く同じ条件の元にあるとする)に比べて、非常にわずかではあるが、遅いテンポて時を刻むということである。』と言っている

「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年)」: https://archive.md/hjDby#2-6-2 : (6)原論文§4の「2.時間の遅れ」からの引用

注2:数学者としてのミンコフスキーのロジックによれば「特殊相対性原理の主張を認めるならば当然『全ての慣性系は同等である』が成立する」という事になります。

そうであればミンコフスキーが『全ての慣性系は同等である』を前面に出して「ミンコフスキーの特殊相対論を作り上げた」という事はミンコフスキーにとっては「当然の事であった」のでした。

注3:地球に対して0.5C以上の速度で移動している慣性系では「ハーフェレ・キーティングの実験結果を説明できない」のです。

つまりは「宇宙にはハーフェレ・キーティングの実験結果を説明できる慣性系」と「出来ない慣性系」の2つの種類がある、という事になるのです。

言葉を変えますと「ハーフェレ・キーティングの実験は宇宙に存在する慣性系を2つに分けた」のです。

そうしてこの事実はあきらかに『全ての慣性系は同等である』という主張を否定している事になります。

我々の暮らす宇宙では『全ての慣性系は同等である』という主張は成立してはいないのです。

注4:「アインシュタインの思考をたどる」: http://www.hmn.bun.kyoto-u.ac.jp/pasta/newsletter04_sugano.pdf :から、以下関係がある所を引用します。

『4.座標変換に対する理論の不変性

特殊相対性理論では、すべての慣性系は物理的に同等であり、LT(注:ローレンツ変換) により結ばれる。座標変換の下での理論の不変性 (方程式の共変性) は、その理論の客観性を増す。基礎方程式はその理論の性格 (論理性 )を表現している。
その理論の性格を決めるのは座標変換の下での「不変量」である。

・ニュートン力学では、不変量は「空間距離と時間」: ガリレイ変換
・特殊相対性理論では、不変量は「4 次元距離 (ミンコフスキー空間の世界線) 」 :ロ-レンツ変換。』

ここでの菅野さんの主張は「ミンコフスキーの特殊相対論の主張」をよく表しています。

そうして「ミンコフスキーの特殊相対論の特徴」はやはり「共変性」にあってそれが「特殊相対論へのテンソル解析の導入に結びついている」様です。

それで「それらの元になっている思想が『全ての慣性系は同等である』」という事になります。

ちなみに「13.真空の物質性」に興味深い記述がありますので引用しておきます。

『特殊相対性理論は真空のエーテルを追放し、空の空間を電磁波が伝わる「物理的場」としたとよく言われる。
しかし、空の空間がどうして物理的場となりうるのか、その疑問に対する答えはなかった。

一般相対性理論では、真空、すなわち物理的空間は「場」であり、電磁場や重力場の担い手として、単なる空虚な空間ではない。
空間はその歪みによってエネルギー・運動量を有する存在であるから、物質的存在である。

さらに、場の量子論では、真空の物質性は一層強くなる。特殊相対性理論は真空からエーテルを追放して空にしたが、量子論と結合して真空を粒子・反粒子対で埋め尽くし、真空に物質性を与えた。このような真空は、電磁波を伝える物理的場となりうるだろう。

また、相互作用の統一理論では、真空をヒグス場の縮退した空間 (真空の相転移) とした。

このように、相対性理論は、真空概念にも革命的変化をもたらした。

真空概念の発展史は、物理学理論の発展史でもある。』

 

ちなみに「時間の遅れ」については菅野さんは以下の様に主張されています。

「微分形式による特殊柑対論」
菅野礼司著
丸善(1996 年9 月)

33ページ『蛇足ながら付言すると,運動系での時計の遅れ,距離の短縮の原囚は慣性系ごとに同時性や時間・空間尺度が異なるところにある.運動系の現象を静止系から見るとそのように観測されるのであり,実際に連動系で時計が遅れたり長さが短縮しているのではないということである.

この点がマイケルソンーモーレイの実験を説明するために仮定されたフィッツジェラルド—ローレンツ短縮とは物理的内容が違うのである.また,相対性理論ではローレンツ理論と違い物質のない真空の空間距離もすべて一様に短縮して観測される.

高速で飛行しているロケットの中ではすべての現象は正常に進行する.事実,地球は遠い銀河系に対して,ほぼ光速度で運動しているが,地上では物体の短縮も時間の遅れもなく物事は正常に経過している.』

この記述の中で

>実際に連動系で時計が遅れたり長さが短縮しているのではないということである.

の部分、物体の短縮については同意できますが、時間の遅れについての認識には同意できません。

と言うのも「ハーフェレ・キーティングの実験結果」は「時間の遅れは客観的な事実である」という事を示しているからであります。

にもかかわらず「相対論の専門家である菅野さん」が『運動系の現象を静止系から見るとそのように観測されるのであり,実際に連動系で時計が遅れたり・・・しているのではないということである.』と言うように主張せざるを得なくなるのは「『全ての慣性系は同等である』というミンコフスキーの特殊相対論を支持しているから」であります。

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PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/rOvAG