特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

2-26・時間遅れの測定:光学原子時計を使った実験の3

2023-11-29 03:05:46 | 日記

1、「単振動させたイオンの時間遅れの測定について」の前書き

さてもともと原子時計は精密機械ですから「振動はいや」なはずです。

従って「くみあがった原子時計を上下に単振動させながら時間をはかる」などという「時計の振動耐久試験をかねたような時間測定」は考えられません。

しかしながら「単原子時計ならそれができる」と気が付いた所がこの実験のポイントでした。

というのも「時計はもともと一個の原子である」という所がミソですね。

そうしてその一個の原子から遷移周波数情報を取り出す為のレーザーやらエレクトロ二クスがその周りを取り囲んでいます。

そうやってようやく「人間が使える時計のできあがり」となるのでした。

しかしながらこの「単原子時計は元は」といえばやっぱり「原子一個がもっている遷移周波数」なのです。

 

さてそれで通常はポールトラップの中心でイオンをトラップして「動かないようにしておく事」が時計としては大事な事でした。

このイオントラップの時にイオンがトラップの中心からずれるとトラップ電場の周波数で振動をし始める。

そうすると前ページで紹介した図1の「遷移周波数測定カーブが横に広がる」のです。

それは「時計としては望ましくない事=周波数測定の精度が落ちる事」ですから「イオンをなるべく振動させないようにすることが大事」でした。

しかしながらその状況をよく考えてみますと「振動しているイオンの時間平均の周波数ずれが観測出来るのでは?」という事に気が付きました。

 

もちろんこの時にプローブレーザー光は振動するイオンの振動方向とは直交する様に当てなくてはなりません。

そうしてプローブレーザーの周波数を固定する為にはもう一つの「振動させていない原子時計が必要」になります。

しかしながら「状況をその様に準備できる」ならば「振動しているイオンの時間平均の周波数ずれが観測出来る」のです。

そうして実際にやってみた、というのがこの報告になっています。

 

さて、最初に述べましたように「くみあがった原子時計のセットを単振動させながら時間遅れを測定する」という事は「不可能な事」です。

しかしながら「一個の原子を単振動させてその時に単振動している原子に発生している時間遅れの平均値であるならば測定が可能である」という事に気が付いたのがこの実験の重要なポイントでした。

そうしてまた「単振動による時間遅れの精密測定」というのは「この実験が初めてである」といってよいでしょう。

 

さらに言うならば「単振動している原子がプローブレーザー光を吸収する=電子のエネルギーレベルが上昇する=電子が上のバンドにシフトした」という事をイベントとして観測対象にしています。

その場合単振動しているイオン原子は振動面に直交する方向から来る光を観測している事になります。(注1)

さてそれで「その時の状況は」といいますとまさに「横ドップラーシフトの測定そのもの」になっている事が分かります。

しかも「観測者が静止していて光源が運動する」という「今まで行われてきた横ドップラーの測定」に対してここでは「光源が静止していて観測者が運動する」と言う条件になっています。

 

さて「そのような、観測者を動かす横ドップラーの測定」というのは「難しいだろうなあ」と言うのがこれまでの感想でした。(注2)

しかしながら単原子イオン時計を使う事で「観測者が動いた場合の横ドップラーが測定できていた」という事は特筆すべき成果です。

そうして「その結果は」といいますれば「観測者は青方偏移を観測した」のです。

さてこれは「横ドップラーは常に赤方偏移を観測する」という「通説の主張を否定するもの」であり「アインシュタインが提示した通りの結果」でありました。

その結果は「W横ドップラー測定では一方が赤方偏移を観測したならば、他方は青方偏移を観測する」という事です。

そうしてまたそれは「時間のおくれはお互い様ではなく一方的である」という事について「また一つ実験的な証拠が増えた」という事にもなります。

それはつまりは「静止系は客観的な存在である」と言う事の証明でもあります。

 

注1:原子が光を吸収してエネルギーレベルを上げる、その瞬間が「原子が光を観測したタイミング」になります。

注2:確かに回転するローターを使った「円運動する観測者と回転中心にある静止した光源を使った時間遅れの測定実験」はありました。

そうしてその場合も「円運動する観測者の時間は遅れる」ので「中心からの光は青方偏移して観測される」のでした。

 

追記:この 「Chou氏ら研究チームの報告」では単振動させた原子の周波数シフトについては「相当に簡略化しての報告」になっています。

したがって「単に表面上を読んだだけ」ではなかなかその実験の本質を理解する事は難しくただ単に「単振動させると時間が遅れる」という「通り一遍の理解に留まってしまう」のです。(ちなみにそうなってしまう事は当方が自分自身で経験した内容でもあります。)

まあその場合でも「単振動すると時間が遅れる」しかもそれは「特殊相対論の予測通りに遅れるらしい」という事はレポートから分かります。

そうして「その事だけでも初めて実験で確かめられた事」であり「報告するに値する内容」になっています。

しかしながら「相当な部分を追加して状況を理解するならば実験の全貌が見える」のであり「そうするとこの実験の本質が横ドップラー効果の測定である」という事が明確になるのです。

そうしてまた「Chou氏ら研究チームの報告」では『今回の実験は、相対性理論の証明というよりは、原子時計の驚異的な精度の方に意味がある、とChou氏は説明している。』と述べられている様に「実験を行った本人たちもこの実験のもつ本当の意味の重要さを認識していない」という所が「興味深い所」であります。

ちなみに「単振動させた原子に発生していた時間の遅れ」は特殊相対論の計算と一致していました。

その結果はつまりはこの実験は「縦方向のGは時間の遅れを発生させない」という事の「もう一つの確認実験になっていた」という事になります。

追記の2:単原子イオンの光時計であるからこのような実験が可能となりました。

これが「日本発の光格子時計」となりますと「このような実験は難しい」という事になります。

まあ「時計にはそれぞれ得手不得手がある」という事になりますか。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/KdJTG

https://archive.md/gOxIR