特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

2-25・時間遅れの測定:光学原子時計を使った実験の2

2023-11-23 01:44:37 | 日記

光学時計と相対性理論
C. W. Chou,* D. B. Hume, T. Rosenband, D. J. Wineland

24 SEPTEMBER 2010 VOL 329 SCIENCE (原典は: https://zenodo.org/records/1230910 :からDL可)

こちらは英文のサイエンスに載った記事

24 SEPTEMBER 2010 VOL 329 SCIENCE
https://tsapps.nist.gov/publication/get_pdf.cfm?pub_id=905055

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『要約

相対的な運動や異なる重力ポテンシャルにある観測者は異なる時計の速度を測定します。これらの相対性理論の予測は以前、高速で動く原子時計や標高の大きく変わる場所で観測されてきました。私たちは、光学原子時計を使って光ファイバーで接続された2つの時計を比較することにより、速さが10メートル/秒未満の相対速度からの時間の遅れを観測しました。また、地球の表面近くでの高さの変化による時間の遅れも1メートル未満で検出できるようになりました。この技術は、測地学の分野に拡張され、地球物理学や水文学だけでなく、基本物理学の宇宙ベースの試験にも応用できる可能性があります。』

 

『アルバート・アインシュタインの相対性理論は、現実の概念を変えざるを得なくしました。その理論の中で特に驚くべき結果の一つは、同時性の概念を捨てなければならないことです。これはいわゆる双子のパラドックス(1)に現れており、高速で移動するロケット船に乗る双子の兄弟が他の双子よりも若返って帰還するというものです。この「時間の遅れ」は、旅行者と静止した観測者と一緒に同行する同一の時計の時間を刻む速度を比較することで定量化できます。アインシュタインの理論のもう一つの結果は、時計が巨大な物体の近くでより遅く動くというものです。日常生活で遭遇する速度と長さの範囲では、相対論的な効果は非常に小さいです。例えば、地球の表面付近で高さが1 kmだけ異なる同一の時計がある場合、上の時計は百万年で下の時計よりも約3秒多く時間を刻みます。これらの相対論的な時間の遅れの効果は、いくつかの重要な実験で確認されています(2–6)。

そして、これらの相対論的な影響は、衛星ベースの航法システムで日常的に考慮されています(7)。歴史的に最も正確な測定は、光速に近い速度(8)および標高の変化が10^4から10^7 mの範囲にわたります(3、4)。以前は、小さな相対論的なシフト(<10^−16)は、γ線メウスバウア分光法(5、9)および原子干渉法(6)を使用して短距離でのみ観測できました。しかし、十分に高い感度を持つ時計、例えば光学領域で動作する正確な原子時計、つまり「光学時計」を使用すれば、これらの影響が長距離で検出できる可能性があります。ここでは、27Al+イオンを基にした2つの光学時計を比較することにより、数メートル/秒の速度および33センチの高さの変化による相対論的な時間の遅れの検出を報告しています。

 

ペタヘルツ(1 PHz = 10^15 Hz)の周波数帯域で動作し、自然の線幅がミリヘルツのレベルである光学時計は、現在のマイクロ波時刻および周波数標準に比べて安定性と精度が大幅に向上しています(10)。我々は、個々の捕獲されたAl+イオンを基にした2つの光学原子時計を比較しました。これらは報告されたシステマティック周波数の不確かさが8.6 × 10^−18(11)および2.3 × 10^−17(12)である。比較のために、Cs噴水時計の最も低い報告された周波数の不確かさは3.4 × 10^−16(13)です。これらのAl+光学時計の正確性と関連する感度により、相対論的な効果による時計の周波数変動が10^−16以下で観測できます。

27Al+においては、効率的なレーザー冷却および状態検出のためのアクセス可能な光学遷移が存在しないため、これらのイオンの精密分光は量子情報科学で開発された技術を使用しています。ここでは、Al+イオンは、同じ線形RF(ラジオ周波数)ポールトラップ内で同時に保持される補助の「ロジック」イオンとのクーロン相互作用を介して共感度冷却されます(14)(注1)。ロジックイオンはまた、Al+イオンの内部状態を量子論のプロトコルを介して準備および検出するのに役立ちます。(注2

この研究では、2つのAl+時計はそれぞれベリリウム(9Be+)イオン(14)およびマグネシウム(25Mg+)イオン(11)をロジックイオンとして使用しました。周波数f0が約1.121 PHzのAl+ 1S0↔3P0クロック遷移は(注3)、Δf = 8 mHzの狭い自然線幅と、対応する固有の品質(Q)因子f0/Δf = 1.4 × 10^17を持ち(注4)、小さな周波数シフト効果を検出するための高い感度を可能にします。ただし、クロック遷移の観測される線幅はプローブレーザーの線幅によって制限されています。我々はクロック遷移を、高いフィネスの光学空洞に基づく、サブヘルツの線幅を持つレーザーを用いて調査しました(15)。アルミニウム-マグネシウムクロックでは、300ミリ秒のプローブ期間で、狭く、フーリエ変換により限られた線幅を得て、Qファクターは4.2 × 10^14で、ほぼ80%のコントラストを実現しました(図1)。この高いQ値は、高い安定性のクロック操作と小さな周波数シフトへの感度の基盤となります。』

図1. Al+の1S0↔3P0遷移。300 msのプローブパルスで観測されました。各データ点(青い点)は、9または10の個々のプローブの平均で構成され、プローブレーザーの周波数ドリフトによる歪み効果を排除するためにプローブ周波数の順序がランダム化されました。このデータに対するローレンツフィット(注5)(図には表示されていません)は、2.30 ± 0.51 Hz(不確実性は1 SDに対応)の線幅[ハーフマックス全幅(FWHM)]を生成します。ローレンツ線幅は、プローブパルスの四角い時間波形の結果であるフーリエ変換限界スペクトル(滑らかな適合赤曲線)よりも狭くなっています。ここで使用されたプローブ時間に対して、フーリエ制限は2.7 Hzの線幅(FWHM)とQファクター4.2 × 10^14に対応し、これを達成した値としています。黄色い影のあるバンドは、量子プロジェクションノイズ(注6)に起因するデータの予想されるばらつきを示しています(34)。』

翻訳はチャットGPT3.5+修正は当方

図1については原典を参照されたい。

ここではテストの要約と今までの経緯、それから使った光時計についての説明になっています。

 

・図1の解釈について

青のドット一つが「継続時間300 msのプローブパルスで観測された」9~10個の測定値のアベレージを示す。

横軸がそのプローブレーザーの周波数であり、これは指定された値に固定されている模様。

全部で21個の周波数が±7Hzの範囲で均等分割されて指定されている。

それで縦軸が遷移確率になっている。

これはつまり「一個のAl+イオンがプローブレーザー光にどの程度の確率で共鳴したか」を示している模様。

で、プローブレーザーを時間間隔300 ms照射中にAl+イオンが共鳴すればポイント1、しなければポイント0でそれを一つの指定周波数で連続10回繰り返す、のではなくて21個の分割された周波数点をランダムに選んで、そうして一つの測定周波数については合計で10回になるまで繰り返す。

その様にランダム化する理由は「プローブレーザーの周波数ドリフトをキャンセルする為」らしい。

さてそうすると「一つの指定された周波数でAl+イオンが共鳴した遷移確率が計算できる」となる。(10回中何回共鳴したか、というだけの話です。)

そうしてまたこの場合に実際にそうやって測定した典型的なデータを一つ例示したものが図1らしい。

つまりは図1は「実験を始めるにあたってこの程度の精度の光時計を使いました。」を示したものと思われる。

それで図1の様なデータが得られた場合は近似曲線(赤色)をつかって「ー0.6Hzの周波数シフトである」とする模様。(「ー0.6Hzの周波数シフト」は当方の図1の目視よみ。)

さてそうであれば「測定精度を上げる為=統計的に有効と判断できる為」には上記の様な測定を千回ほど繰り返すことが必要になるのです。

というのも「測定そのものが量子力学の測定」になっていて、つまりは「確率の測定になっているから」ですね。

 

ちなみに「周波数f0が約1.121 PHzのAl+ 1S0↔3P0クロック遷移」は

1,121,000,000,000,000.Hzである。(1121兆Hz)

それに対して0.4~0.5Hzほどの周波数シフトを読み取れる、というのだから「驚き」である。

なおういきによれば

750 THz–30 PHz (電磁波)紫外線(波長400–10 nm)

との事。

 

注1:チャットGPT3.5によれば

『この文は、質量数27のアルミニウムイオン(Al+イオン)が、同じ線形RF(ラジオ周波数)ポールトラップ内で同時に保持される補助の「ロジック」イオンとのクーロン相互作用を介して共感度冷却されると述べています。これを解説します:

アルミニウムイオン (Al+イオン): これは特定の種類のイオンで、アルミニウム原子が1つの電子を失った状態を指します。

線形RFポールトラップ: これは、電場勾配を利用してイオンを捕捉するための装置です。(追補1)RFはラジオ周波数を指し、線形RFポールトラップはその電場が線形な構造を持つものです。これにより、イオンが特定の位置に保持されます。

補助の「ロジック」イオン: アルミニウムイオンと同時に保持されている、補助的なイオンです。ここでは「ロジック」と呼ばれていますが、これは共感度冷却プロセスにおいてアルミニウムイオンの制御や測定に役立つ役割を果たしています。

クーロン相互作用: クーロン相互作用は電荷の間の相互作用を指し、正の電荷と負の電荷の間には引力が働きます。アルミニウムイオンとロジックイオンの間でのクーロン相互作用は、彼らがトラップ内で相互作用し、共感度冷却プロセスを可能にします。

共感度冷却: 共感度冷却は、2つ以上の系が互いに熱平衡にある場合、一方の系の温度を冷却するプロセスです。ここでは、アルミニウムイオンが共感度冷却され、補助のロジックイオンがこのプロセスにおいて役立つとされています。

総じて、この文はアルミニウムイオンが共感度冷却によって冷却されるプロセスにおいて、同時に保持される補助のロジックイオンが役立っていることを述べています。』

追補1:「ポールトラップ」についての説明は: https://www.toray-sf.or.jp/aboutus/pdf/62-h24_2.pdf :の28Pにあります。

現物は「世界的「光原子時計」の研究者が日本に初集結」: https://archive.md/gz4wU :

単一イオンを閉じ込めるポールトラップの現物写真が確認できます。

追補の2:共感度冷却については「 サイドバンド冷却」として: https://www.nict.go.jp/publication/shuppan/kihou-journal/houkoku63-1/book/pdf/67.pdf :で説明されています。

注2:チャットGPT3.5によれば

『この文は、「ロジックイオンはまた、Al+イオンの内部状態を量子論のプロトコルを介して準備および検出するのに役立ちます」と述べています。これを詳しく説明します:

ロジックイオン: これはアルミニウムイオン(Al+イオン)と同時に保持されている補助的なイオンで、共感度冷却プロセスにおいて役立っています。

アルミニウムイオンの内部状態: アルミニウムイオンが持つエネルギー準位や量子状態のことを指します。これは通常、アルミニウムイオンの電子がどのエネルギー準位にあるかを表します。

量子論のプロトコル: これは量子論の原則や手法に基づいた手続きや手順のことを指します。ここでは、アルミニウムイオンの内部状態を制御、準備、および検出するための手順やプロセスが含まれます。

準備および検出: アルミニウムイオンの内部状態を特定の状態に準備することと、その状態を検出することを指します。これは、例えば特定のエネルギー準位にイオンを導入し、後でその状態を読み取るプロセスを含みます。

総じて、この文は、補助のロジックイオンがアルミニウムイオンの内部状態を量子論のプロトコルを使用して制御し、準備し、検出するのに役立っていることを述べています。これは、アルミニウムイオンを操作し、量子的なプロセスを制御するための技術的な手法を指しています。』

追補の3:イオン量子系の極限計測と極限制御については: https://www.nict.go.jp/publication/shuppan/kihou-journal/houkoku63-1/book/pdf/67.pdf :も参照願います。

注3:チャットGPT3.5によれば

『この文は、Al+(アルミニウムイオン)の1S0↔3P0クロック遷移の周波数 f0  が約1.121 PHz(ペタヘルツ)であることを述べています。クロック遷移とは、原子やイオンのエネルギー準位の変化に伴う電磁放射の周波数の特定の変換を指します。この場合、Al+イオンのクロック遷移は、1S0から3P0のエネルギー準位への変換に関連しているようです。そして、その周波数が約1.121ペタヘルツであると述べられています。

 

1S0は、原子やイオンの電子のエネルギー準位を表す記号です。この記号にはいくつかの要素が含まれています:

主量子数 (n): 1S0の"1"は主量子数を示しています。主量子数は、電子がとることができるエネルギー準位の大まかな大きさを表します。主量子数が1の場合、それは最も内側のエネルギー準位を示します。

軌道角運動量 (S): Sは軌道角運動量を表します。Sが0の場合、それはs軌道を示します。s軌道は球対称であり、最も内側の電子軌道として知られています。

したがって、1S0は主量子数が1で、軌道角運動量が0で、s軌道に属する電子のエネルギー準位を指します。これは通常、最も基本的で内側の電子軌道を表します。

 

3P0も、原子やイオンの電子のエネルギー準位を表す記号です。この記号にもいくつかの要素が含まれています:

主量子数 (n): 3P0の"3"は主量子数を示しています。主量子数は、電子がとることができるエネルギー準位の大まかな大きさを表します。主量子数が3の場合、それは比較的外側のエネルギー準位を示します。

軌道角運動量 (P): Pは軌道角運動量を表します。Pが1の場合、それはp軌道を示します。p軌道は球対称ではなく、主に3つの軸に沿った軌道を持ちます。数字0は、この軌道が軌道角運動量のz成分が0であることを示しています。

したがって、3P0は主量子数が3で、軌道角運動量がP(p軌道)で、軌道角運動量のz成分が0である電子のエネルギー準位を指します。これは、相対的に外側で、複雑な形状を持つ電子の軌道を表します。』

注4:チャットGPT3.5によれば

『この文は、「Δf = 8 mHzの狭い自然線幅と、対応する固有の品質(Q)因子 
f0/Δf=1.4×10^17  を持ち」と述べています。以下にそれぞれの用語の説明をします:

・Δf = 8 mHzの狭い自然線幅:

 Δf: クロック遷移の周波数の変化を指します。ここでは8 mHz(ミリヘルツ)で、非常に小さな周波数変化を表します。

 狭い自然線幅: クロック遷移のスペクトル線の広がりを示し、この場合は非常に狭いことを指します。自然線幅は、エネルギー準位の寿命や不確定性に関連しています。(追補の4

・対応する固有の品質(Q)因子 f0/Δf=1.4×10^17  を持ち

f0/Δf: クロック遷移の周波数 f0  と自然線幅 Δf の比率を表します。

固有の品質(Q)因子: クロックの安定性や精度を示す指標であり、f0/Δf の大きな値ほど高い品質因子を持つことを意味します。ここでは 1.4×10^17と非常に高い品質因子を示しています。
総じて、この文はアルミニウムイオンのクロック遷移が非常に狭い自然線幅(8 mHz)を持ち、その品質因子 f0/Δf  が 1.4×10^17  と非常に高いことを示しています。これらの特性は、高い安定性と精度を持つ光時計やクロックとしての特性を反映しています。』

追補の4:「自然線幅」(あるいは自然幅)についての説明は: https://www.toray-sf.or.jp/aboutus/pdf/62-h24_2.pdf :の26P~30P、図7~図11にあります。

『「自然線幅」は理想的な条件~計算上で求められる理論値である』とチャットGPT3.5は言ってますが、さて、、、。

注5:チャットGPT3.5によれば

『「ローレンツフィット」は、データや観測値がローレンツ曲線に適合するように行われる統計的なフィッティング(適合)手法を指します。ローレンツ曲線は、数学的にはローレンツ関数とも呼ばれ、広がりのあるピークを表現するために使用されます。

広がりやばらつきのあるデータセットに対してローレンツフィットを行うことで、データの特性やピークの位置、幅、高さなどを詳細に把握することができます。この手法は、さまざまな科学分野で広く使用されています。特に、スペクトル解析やスペクトルラインの形状分析、物理学や化学の実験データの処理などでよく利用されます。

文脈によっては、「ローレンツフィット」が具体的にどのような手法やアルゴリズムを指しているかが異なる場合があります。一般的には、観測データに適したローレンツ関数が使われ、そのパラメーターをデータに最も適合するように調整する手法を指します。』

注6:チャットGPT3.5によれば

『「量子プロジェクションノイズ」は、量子力学において特定の状態にある系を測定する際に生じる不確実性やノイズのことを指します。これは、ハイゼンベルクの不確定性原理に基づいています。

具体的には、ある物理量(例: 位置や運動量)が特定の状態において確定的に測定されることができないという原理があります。そのため、ある物理量を測定すると、測定結果が確率的であるという性質が現れます。

「プロジェクション」は、量子状態を別の基底に射影することを指します。量子系の状態を測定すると、測定結果に基づいて系の状態が新しい基底に射影され、それに伴って不確定性が生じるのが量子プロジェクションノイズです。

具体的な実験や計算において、このノイズは量子系の特性を理解し、測定結果の解釈に影響を与えることがあります。』

 

追記:使っているイオンの電子が上方にあるバンドに遷移する際に吸収する光の周波数の読み取り、決定が「光時計のキモ」であるらしい。

そのあたり「単一40Ca+イオン光周波数標準器: https://www.jstage.jst.go.jp/article/lsj/38/7/38_517/_pdf :の「3.1 時計遷移の観測」を参照されたい。

また: https://www.toray-sf.or.jp/aboutus/pdf/62-h24_2.pdf :の36Pに次のような記述がある。

『青白く光っているのが、レ ーザー冷却されているストロンチウム原子です。光を当ててレーザー冷却して光格子の中 に入れ、暗くした一瞬に分光し、それを何回 も繰り返していくことによって、より正確な 周波数を求めます。』

ちなみに「青白く光っているのが、レ ーザー冷却されているストロンチウム原子」の現物写真は: https://archive.md/gz4wU :にあります。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/EG2Eh