金沢発 あれやこれや

-ヒントをくれる存在に感謝しつつ物語をすすめます-

混乱の増すグリーン調達事情10

2011-08-20 02:47:10 | グリーン調達
<相当な力量が必要なAIS記入作業> 
政府が含有物質管理JIS化の土台とする予定なので良くも悪く
も関わらざるを得ないAIS。職場で作成を命じられることも少
なくないでしょう。現行版の問題をまとめてみます。 

AISは欧州の手先のような分析会社SGSを儲けさせるばかり
の状況下で、更に分析MUSTの物質が増えるともはや非現実的
で、商業的に費用面でとてもじゃないがやっていけないとのこと
で集まった業界横断ボランティアが作り上げた自己申告ベースの
含有調査報告書。自己申告なので受け取り人はその内容に追加注
文はできないと聞き、それはいいですね と返事したことを
覚えているが現状は落胆がそこかしこにあります

①照会する法規制や業界基準の化学物質数が宇宙的

 単純合計で5968物質。これだけあると小さな物質照会窓の
 リストのどのあたりにあるかも探しづらい。
 
 化審法 計562物質(第1種462、第2種100)
 安衛法 計739物質(表示99、通知640)
 毒劇物法 計439物質(毒物92、劇物347)
 欧州CLP規則のCMR 
   SVHCとともに将来1000程度になる
 REACH規則 附属書17 制限59
         附属書14 認可対象候補59
 欧州のPBT認定物質、ESISのPBTリスト 
   資料なく数不明
 GADSL 計2766 
 JIG   計355

 その9で述べたとおり、JAMPはCASNOを持たない物質
 用に臨時番号を設ける改善をしてます。

 多い時は数千ある物質リストを上から下まで時間をかけて探し
 、結局実はCASNOの無い物質とわかり、物質リスト最下端
 でJAMP-SN0001等の臨時番号が当てられたなかに
 見つけて呆然とするのはかなりましな作業者。多くの場合は
 力量不足で困難さすら実感できず、最初の感触でわりと面倒だ
 と感じ適当にはしおって作成してしまうのが大半と想像する。

 当初、化学物質には全て1対1のCASNOがあり、それを
 使えば複雑で長い物質名を持つ化学物質も簡単に抵触状況チェ
 ックを実現できると踏んでシート設計したが、実はそうではな
 かったため、修正箇所がかなりのつぎはぎとなってしまったと
 推察する。状況を正しく理解した人でないと迷いやすい。
 
 JAMPはどれがCASNO無い物質かは情報用意してない。
 対象物質説明で、法律や基準制定元ホームページを見て自分で
 調べよとしてる。が、日本ならともかく外国は英語のページし
 かないケース多々あり、英語が苦手な人は化学ではなく英語で
 頓挫する。

 化学物質は名称もCASNOも複数もつものが少なくないのに
 、AISの物質リストにはそのどちらも代表1種類しか載せて
 ない、これは初心者にも熟練者にも使いにくい仕様。

②単なる調査ツールなのに製品品番のつけかたに口を出す

 完成後にXMLデータファイルを抽出するのだが、そのファイ
 ル名の一部に品番を自動であてる仕様となっている。
 そのため当然の結果として、ウインドウズシステムでファイル
 名に使ってはいけない記号のしばりを100%あびる。
 このしばりは業界で通常使われてる品番ルールより厳しい。
    たとえば、カンマが使えない。
 しかもそのルールを犯した時AISはエラー表示を出さない。
 作業者は何が原因で出力されないのかわからずあせる。
 もしもともとあった品番をエラーでないように改めたとして
 いったい誰が得をするのか。
 AIS用意し提出する側も受け取る側も歓迎しないだろう。
 なぜこんな変な設計をしたのか。意図が理解できない。

③作成マニュアルが貧弱で用意されたチェック機能も貧弱

 作成マニュアルで説明あってしかるべき箇所で説明がない。
 AISのエクセルシート上にはチェックボタンがあるが、
 そこでチェックされる項目は少なく、かなりザルチェック。
 材料質量合計値が製品重量にぴったりでなくても通過するし、
 データ仕様上有効数字を多く書きすぎていても通過する。
 必要十分な説明とチェック機能がないので、作成者の力量
 次第となっており、出来に差がある。

 規制法・基準の改訂内容を熟知した人しか正確な修正が
 できないのも敷居が高すぎる。旧バージョンのXML
 ファイルを読み込んだ際にまず、小さい文字で

  読み込んだXMLデータは古い物質リストに基づいて
  作成されています。個々の物質情報を本ツール内蔵の
  新しいリストの内容に更新しますか?

 と表示され、はい を選ぶと読み込み続行し、次に

  物質情報の更新が完了しました。AIS中の物質リスト
  バージョンも更新されました。

 とでる。単に読み込まれただけなのは次の表示でわかる。

  新しい物質リストは情報を必要とする新規物質も含まれ
  ている場合があります。このAISではそれらの物質の
  含有の確認が済んでいることが必要です。

 意味のつかみにくい表示だが、つまり読み込んだだけで、
 改訂内容に応じた抵触確認は自らハンド処理でしなさいとの
 意味。表示文字が小さいためきちんと読む習慣のない人は
 表示の伝える意味を逸しやすいが、要するに、
 改訂内容をすべて理解した作業者が自らの頭を使って抵触の
 再確認(ハンドパッチをあてる)をしなければならない。
 どこがどう変わったのか親切な情報提供も用意されておらず
 一般事務作業者には敷居が高すぎる作業だ。 

④データ設計仕様とその運用がとてもぎくしゃくしてる

 ポータルを設け、AISデータがほしい場合はもよりのポータ
 ルにアクセスしてデータ入手する構想を立てて進められてる。
 その構想発表まもなく、いわゆるデータベース化することから
 ポータルに登録するAISのデータ仕様が発表されたが、AI
 Sシートはそこで設定された有効数字桁数よりたくさん入力可
 能に各セルがおしなべて作られており桁数超えて入力できる。
 本来なら、チェックポタンを押したときに有効桁数オーバーと
 かエラー表示がでておかしくないのにそれが出ずチェック通過
 してしまう。
 ポータルのAISデータ仕様は積極的にPRされてないので
 知らない人も少なくないと思われる。

 <材質質量>という項目がある。これは少数点以下4桁までに
 制限とされた。項目の単位はmg。製品重量が0.1mgより
 小さい部品はわりとある。最小材質質量は0.0001mg。
 これは分母となる製品の1000ppm。つまり、製品重量が
 小さい部品はマテリアル重量を1000ppm単位でしか表現
 できないという制限を受ける。これは微妙な判定ができにくい
 雑な成分構成表しかもたらさない。

 もう少し小さい単位も選択できないか尋ねたら、1ppm未満
 の極小さい重量までは記入必要ないとの意見が多数だったとの
 おかしな返事を得た。とっても奇妙だがどうやら<材質質量>
 の項目単位をmgではなく%と勘違いした可能性がある。
 これは可能性が高い。JAMP版AISではmgまでしか用意
 ないが、JAMPが承認したJEITA版AISでは材質質量
 の項目ではなんとpgまで選択可能になっている。全く理屈が
 合わない。
 次期AIS版改定で当初の返事をくつがえし、μgまで
 選択可能に変わるのだが、少しはまともな担当者に変わった
 といえるかもしれない。

 しかしね。一旦少数点以下4桁まで制限され、切り上げても
 0.0001mgに届かない材質質量の物質を省略する修正を
 時間かけてしたあとにまた元に戻す仕事はただ時間をドブに捨
 てるだけでやる気がしない。業界ポランティアを名乗るなら役
 に立つボランティアをしてほしいものだ。今後は電気電子だけ
 でなく日本のあらゆる業界が使うツールなるので不具合による
 被害の規模もでかくなる。

⑤ツール名、ファイル名に配慮が見られず非効率を強いられる

 AISから出力できるXMLデータファイル名からは作成
 言語とAISバージョンは区別不可能。AISが古くても
 新しくても、言語が何語でもいちいち開けてみないと中身が
 いつのバージョンでかつ何語のものかわからない。
 XMLデータファイル名から 英語、日本語、どちらの記入か
 区別できないのは、複数言語作成する時にまちがって上書き
 しないよう保存ファイル分ける手間も発生しかなり面倒。

⑥構成成分をオープンにしてないので改訂の度作成要求必要

 そのとき法規制・基準に抵触した物質以外は名前を書かない
 ルール。受領者がふせられた物質名をわかるはずなく、改訂の
 度再び提出依頼しなければならない。面倒だがその部品・部材
 の採用が続く限りこの手間が続く。
 構成成分を100%公開するJAMAやAIAG、IPC
 1572という調査ツールとは大きく異なる。

⑦規制変更部分の予備調査に使えない

 法律の追加・変更が決定してからでないと反映されないので、
 予備調査に使えない。昨今は予備調査にもっともパワーがさか
 れておりこれでは役にたたない。
 いくらより汎用的な含有調査ツールになったとしても相変わら
 ず予備調査に使えないままでは魅力ないまま。

⑧法律の調査ツールへの反映がそもそも遅い

 改定された法律のツールへの反映が遅い。調査が必要な時に
 使えないことがしばしば。JIGなどはあまりに古い版を
 掲載続けていて、制定元のJGPSSIサイトを外部参照する
 ようにと説明されていたがそこでかなり古いバージョンなので
 もう掲載やめてた時は吹いた。調査初心者ならとたんに路頭に
 迷わせるところであった。

⑨日本国内の普及すらまだ低い

 昨年末から国内有名企業が採用しだしたが全体普及率はまだ
 低い。提出を求められる側の川中企業の対応が進まない様子。
 これだけ問題抱えてると頑張ればカバーできる範囲を超えてる
 とも思うがそもそも無料の教育機会が少ない。有料はきつい
 だろう。
 皆感じると思うのは動作速度の遅さ。今後本当に普及させたい
 ならばオフィス互換ソフトでの動作保証も視野に入れないと
 アジアでは無理かもしれない。

以上認識した事ざっと並べてみました。
ECHA発行のREACH規則関連情報の予告版に日本発ツール
として紹介ありましたが正式発行版では紹介コーナーそのものが
省かれてました。

実は今、米国発の紛争鉱物規制法が運用ルール決定をひかえて
かなり注目を集めており、各社が調達基準に加えだしたら
含有物質調査ツールにも影響を及ぼしそうな状況に突入しかかっ
てます。ある機関が精練所を監査し、そこで合格した精練所で
精練した物質しか納入品に使うなというややこしい注文が飛び交
いそうな雲行きになっており、AISの将来を心配するどころで
はないというのが正直なところ。まさに旬な話題で
情報がまとまったら紹介しようと思ってます。

 

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