金沢発 あれやこれや

-ヒントをくれる存在に感謝しつつ物語をすすめます-

混乱の増すグリーン調達事情7

2011-07-17 16:32:51 | グリーン調達
<用語とその定義に見る構想の差> 
規定・ガイドラインに登場する用語から、構想のの違いを検証
してみましょう。

世の企業のグリーン調達基準/ガイドラインはおしなべて次の
ような書き方がされています。

・主材料--直接製品を構成する材料。原材料、部品とも呼
      ばれる。構成材料/電池部品/電源装置部品/
      照明部品/プリント配線部品/外装部品/梱包
      ・包装部品など
・副材料--主要構成材料ではないが、完成時に残存が予想さ
      れる材料。はんだ/接着剤/樹脂/ラベル等

用語はグリーン調達が登場する以前の調達部門の部資材区分け
からきたものと思われます。従って副材料は完成品に残存して
もしてなくても現場では副材料と呼ばれてるはずです。

これに対し、製品含有化学物質管理ガイドラインはベースその
ものが違います。製品から順に遡ると

製 品(Product)  
   --パーツを組み立てて製造される
パーツ(Part)  
   --原部品の組み合わせ、または加工する ことで製造
     される
原部品(Original part)  
   --サブスタンス/プレパレーションから 成形/乾燥
     /加熱/塗布などの製造工程を経て製造された最初
     のアーティクル
サブスタンス--化学物質
プレパレーション--調剤。2種以上の(化学物質の)混合。
     例.塗料、インク、はんだ、接着剤、合金

わかりにくいのはここからで、原材料という用語が登場してき
ます。その定義は

原材料(Raw Material)
   --塗料等の液状の化学製品や、ポリマーペレットや
     マスターバッチ等の粒子状のものや粉体、はんだ
     等の溶融して使用することで他の化学製品(サブ
     スタンス/プレパレーション)やアーティクルに
     変換されるもの

こう書かれると、原材料がサブスタンスやプレパレーションの
加工上一段階前のものということになりますが、すべて通して
読んでもどんなものを指すのかどうもはっきりしない。
上述のとおり、元々、原材料とは直接製品を構成する材料を意
味しており、調達経験者ほどとっつきにくいと思われます。

わかり難い例をもうひとつ、JGPSSIと関連深いJAMP
のAISのFAQ中に、こんな質問がでてきます。

Q31 成型する上で使用する副資材(はんだ、フラックス
    、溶剤)添加剤等は全て記載するのでしょうか。

 答え アーティクルに変換されて、材質や含有物質として
    追加されるものは変換内容に応じて記載をお願いし
    ます。

質問に登場する資材はガイドラインでプレパレーションとして
定義されており、名称を副資材と変えて登場すると名称とその
定義が場面場面でころころ豹変してるようでまじめに読んで理
屈で理解しようとすると相当苦労する。恐らくこれは不適切表
現でしょう。(JGPSSIにしろJAMPにしろ学生アル
バイトにでも訳させたような文章がちらほらあり途中で頭をひ
ねる事が少なくない。たとえ低価格で翻訳させても編集者がフ
ォローして読みやすくしてほしい。編集者自身があまりよくわ
かってないのではと思わせては利用者は増えていかない)

製品含有化学物質ガイドラインの構想の異質なところは、原部
品からパーツをへて製品になる途中 加工 もあるとは書いて
あるが、その加工は、互いのパーツが全体的部分的に成分に影
響を受けるほどの変化を起こすものでは無いとしているところ
です。マニュアル説明図にもパーツ中の含有量は変化しないと
明記されてます。
実際パーツから製品製造するときにはんだづけや接着等諸々の
加工があるので影響は存在しますし、完成直後から隣接した部
位同士で化学反応が進み含有成分の変化も始まります。簡略化
するためにわざと無視したという推察する人もいるかもしれま
せん。完成品を分析して検証するのが含有調査の基本ですから
、この点は重要です。

含有成分に及ぼす変化は原部品製造完了までで収束し、あとの
フローはそれらをレゴブロックのようにの組み合わたに過ぎな
いという考えは、かなり割り切った思想で、これをベースに設
計されたJAMPのAISの川上企業からの情報伝達のしくみ
にも影響しています。

基本要素を押さえたので次からようやく成分表や最近の含有調
査ツールの検証にはいります。

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混乱の増すグリーン調達事情6

2011-07-14 02:10:48 | グリーン調達
<製品含有物質管理のガイドライン>
企業が成分表提出を求め始めた事を述べる前に業界が手本とする
ガイドラインを紹介します。

含有物質調査関係者のバイブル的なものとして電気電子業界日欧
米の関連機関が協力してまとめたガイドラインが用意されており
、日本はJGPSSIが日本語に訳して提供しています。

製品含有化学物質管理ガイドライン第2版の11ページにある管
理の基本3ステップを確認してみます。

①購入品の含有物質情報
 サブスタンス/プレパレーション、アーティクルごとに含有
 化学物質情報を入手する。

 製品を構成する部品(アーティクル)はいろんな素材(サブ
 スタンス)と調剤(プレパレーション)を使って作られます。
 実はこれ以外に加工工程で使われて製品に残留する可能性の
 ある副資材があります。これも調べておかないと死角ができ
 ます。完成品から由来不明の物質が検出されても原因がたど
 れず困ることが予想されるからです。

②製造工程の誤使用、混入、汚染防止の日常管理活動での信頼性
 を高める。

 これを怠ると製品に品質問題を起こす可能性が高いので含有
 物質管理に関わらず、従来から既に導入され行われているも
 のと理解します。

③販売製品の含有物質情報
 サブスタンス/プレパレーション、アーティクルごとに含有化
 学物質情報を入手する。

 ①で指摘したように、原材料だけ調査するのは不足です。
 ①はあくまで予備調査で、完成品を調べることは欠かせませ
 ん。加工中にわりとたくさんの副資材が使用されており、そ
 れが部品成分にもたらす影響は無視できません。製品やその
 作り方に無関心な人は抵抗なく受け入れられるかもしれませ
 んが、2~3年現場を経験した人は死角に気づくでしょう。

もし①と②だけしか調べないとしたら調査に死角があるのでその
事実が後で判明するかもしれません。
そうなのですが、川下企業には分析費を節約するため自らあまり
分析しない傾向があることも事実です。完成品の確認を原料の分
析データで代えるのです。この辺はいろんな事情がからんでおり
成分表とからめて後で説明します。

JGPSSI提供製品含有物質管理ガイドラインの気づきにくい
特徴は、登場する用語の定義がこれまでのグリーン調達基準で使
われてる場面の意味と少し違うことです。これは大変重要なポイ
ントで、このガイドラインを元にしくみ作りしたJAMPのAI
Sにも影響を与えており、次で詳しく検証します。

※①で製品に含有する可能性のある副資材は調べると言いまし
 たが、あくまで得意先への製品含有物調査回答の観点であり、
 取り扱う工場従業者の健康リスクや資材保管方法の確認のた
 めにも全副資材が調査されることは言うまでもありません。

※各企業のグリーン調達運用手順はこれを手本に作られており、
 結果似た内容が多いです。が、先進的な会社は必ずひとまわ
 りもふたまわりも手を広げた管理をしています。
 批評家・投資家はぜひそこも注目して見てほしいものです。

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混乱の増すグリーン調達事情5

2011-07-07 02:26:27 | グリーン調達
<不使用証明書やりとりから含有物質管理へ>
その4で書いたように、グリーン調達ではどの程度グリーン設計
を施したかはまず確認しません。そこはISO14001承認審
査や調達先審査等のかなりざっくりした審査、そして社内アセス
メントのような個別審査に機能をまかせています。

グリーン調達の確認は自社調達基準遵守確認だけ。元来法規制を
網羅しただけで、流通してる資材は法律遵守工場と審査認定され
た場所で製造されため、禁止物質が含有して出荷される可能性な
ど無く、緊張感のあるチェックは存在しなかったのです。

将来鉛使用規制が始まるとの予告があり、業界団体が鉛フリー段
階の区分け基準を用意した頃から、自主調査や削減努力が始まり
ました。本当にゆっくりとしたペースでかなり遠い未来に目標を
すえた感じでしたが、数年後のRoHS指令の登場でたちまち突
貫工事のようなプロジェクトに様変わりしました。

鉛フリー活動は期限を明確にしなかった業界自主規制でしたが、
RoHS指令は発効予定日が決まった法律なのでしっかりした計
画をたてて進めねばなりません。

調達部門はその性格上、法規制知識や売り買いする部資材の構成
物質情報等の専門的ともいえるややこしい領域まで関わることな
く処理したい(関わるにはかなり力量ないと無理なので)。禁止
を唱えつつも詳細がなかなか明らかにされないRoHS指令の状
況も考慮し、責任者押印のある遵守または不使用証明書という証
明書類を提出してもらうというルーチン化した処置がとられました。
中身はとてもシンプルで、
 <<対象品はRoHS指令を遵守してます>>
とわずか数行の宣言文があるだけ。

調達部門の人はこれで当分やっていけると思ったに違いありませ
ん。しかし、グリーン調達の変化はとても急でその予想はすぐさ
ま簡単に裏切られます。

RoHS指令は数年毎に禁止対象物質を見直すとされ新禁止物質
候補が提案される度に調査依頼が出され揺さぶられるようになり
ました。更に欧州はREACH規則を作り、政府が認証しないと
輸入も製造もさせない物質を選出し、製品に含有してないか含有
情報の受け渡しを義務化しました。

海外動向がきっかけとなり、グリーン調達は証明書の受け渡しか
ら、次第に部資材の素性と言える含有物質管理へ踏み込まざるを
得なくなっていきます。
規模の大きい得意先が、製品構成部資材の100%の構成成分情
報を自社に蓄積しデータベース化し、それを元にどんな新しい禁
止候補物質が登場してこよとたちまち現状調査できるよう考えて
、納入ベンダーに成分表提出を求め始めたのがこの頃です。

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