目次
白土三平 カムイ伝 第30回
上野昂志 目安箱 第27回 「防衛」について
佐々木守 日本忍法伝 第20回
永島慎二 生命(いのち)
滝田ゆう かわりみ
楠勝平 参加
升田かずお マンガ革命
池内誠 反乱
つげ義春 李さん一家
勝又進 作品集 第12回
水木しげる 鬼太郎夜話 第1回
白土三平 カムイ伝(40頁)
・ 日置を遠くはなれ、畿内の農村を歩く正助。村は死体だらけで、生きているものはいない。大飢饉が襲ったようだ。正助は死体の中にナナと一太郎に似た親子を見つけ、愕然とする。
・ 川向こうの村には生き残った者がいると聞き、川を渡る。城下は閉ざされ農民は入れない。検問に向かう多数の農民たち。「ご布施米」を要求している。飢え死に一歩手前の状態。
・ 武士は農民を切り伏せ、銃撃し、追い討ちする。バタバタと倒れる農民たち。その中にはゴンに似た者もいる。
・ その光景に衝撃を受け呆然と歩く正助を、同じ農民が襲い身ぐるみをはぐ。
・ 気を失った正助のそばで「口減らしができた」、「農民はいくらでも移住させればよい」と満足げに話す城代
この回は前回の話から飛んでしまい連続していません。後記で作者自身が「種々の事情からかくなる結果になってしまった」と述懐しています。カムイ伝を小島剛夕氏が手伝っていたのは有名ですが、この回は他とちょっと画風が異なります。白土氏が何らかの理由で時間がさけず、小島氏主体で描いたのかもしれません。
なお、後記には
「支配者の言うことは、一つとして信じられるものはない。彼らが口にするヒューマニズム、平等、自由、平和、独立、秩序、道徳、愛国心等々は、われわれのものではない。全て彼らの支配のための、それを維持するための方便にすぎない。」
といった文章が記されています。カムイ伝が描かれた時代の雰囲気を伝えるアジテーションなのでしょうが、高校時代、こういった文章に血湧き肉躍らせていたことを思い出しました。
永島慎二 生命
シリーズ黄色い涙 SHINJI GEKIGA. COLLECTION-NO.1の副題がついています。「少年画報」昭和41年12月号に掲載された作品の再録です。
餌を追い求める狼の親子。猟師の青年を襲い、その腕を食いちぎり逃げ去る。
10数年がたち、生き延びた子供狼は群れのボスとなる。取った餌を母狼に優先的に食べさせようとしたとき、白髪・白髭の老猟師がやってくる。かつて腕を食いちぎられたあの青年の老いた姿。
老猟師は切断された腕に仕込まれた刀で母狼を葬り去る。母狼の死体を引きずっていく老猟師、その後を追う子狼。猟師の家に戻ると猟師もこと切れる。
一陣の風と共に猟師、母狼の死体は風化し白骨化する。
滝田ゆう かわりみ
警察への偽装工作で組が解散し、福祉事務所に勤めるヤクザ。ラーメンを食べては暗く落込んでいる。対立する組との構想のために拳銃が必要となり、親分から事務所の金を盗むように命令される。バイヤーとの取引現場、「やつはまだ来ないのか」と親分。男は横領した金の入った鞄を抱えタクシーに乗っている。男はそのまま料亭に行って、ドンちゃん騒ぎで使い切ってしまった。
楠勝平 参加
難病の息子の手術の成功率が50%だと医者に言われる母親。息子は手術を受けたがっている。
父親は禁煙して願をかけている。母親は息子が治ったら週に一度神社にお参りに来ると誓いを立てる。
手術は成功。父親はタバコを吸い始める。母親のお参りする姿。ある日息子は交通事故で死んでしまう。錯乱する母親。
彼女はお参りを何回か怠っており、それが心の中に罪悪感として残ってしまう。そんな彼女の心を知りながらも、バーの女性と酔って騒ぐ父親。
今回は現代もの。病院の描写にリアリティを感じます。
升田かずお マンガ革命
夢のない商業主義に走った漫画界に革命を起こした男たち。趣旨に賛同した政府や自衛隊の上層部の協力を得て革命は成功し、大手出版社は瓦礫の山に。革命のリーダーたちは新しい出版社を作り、低俗ではないよい漫画を出版し始める。そのうち、仲間が次々と止めていき、それぞれが出版社を立ち上げる。仲間たちは派手な漫画を掲載し人気を得る。リーダーも対抗して派手な漫画を売り出してどんどん利益を得る。しばらくたち、若手漫画家がくだらない漫画の氾濫に、マンガ革命を起こす。
池内誠 反乱
狩りに来て、山奥の村に迷い込んだ青年。村の様子が変だ。4人の男が村を出て行こうとする。長老たちは彼らを止めようとするが、彼らは無視して出て行ってしまう。青年は男たちに同行する。しばらくすると森の獣、鳥、虫が彼らを取り囲む。村を捨てようとする人間に対し、神=自然が怒っているのだという。犠牲になった男たちは獣らに白骨になるまで食われてしまう。仕方なく青年は村に戻る。これで元の村に返るだろうと、長老。そして、青年はよそ者が入り込むことを嫌う村人に殺されてしまう。
池内誠氏はその後、白土三平氏の赤目プロに入り、池内誠一名義で作品を描いておりました。現在はゴルフ漫画を描いているとのこと。
つげ義春 李さん一家
つげさんの有名な作品の初出です。スローライフを目指し、郊外のボロ家を購入する主人公。トマトや胡瓜を作りのんびりした生活を送っていた。ある日「ギャングのカポネ時代に流行ったような縞模様の薄ぎたないズボンを穿きその尻ポケットにむりやり上衣を詰め込んでいるので、そこがものすごく出っぱっていた」男がやってくる。
彼は鳥語がしゃべれるという。男は李さんという朝鮮人で妻と二人の子供がいる。李さん一家はそのまま家の2階に住んでしまう。李さんは定職がなく、怠け者。奥さんは無表情なグラマーで、時々主人公の作ったトマトや胡瓜を当然のように持って行く。子供は痩せこけ陰気な様子。
そんな一家に主人公の優雅な生活が侵害された、というのがこの作品の話。
つげさんの作品としては66年2月号の「沼」がすでに世の中にショックを与えていたようですが、この作品も衝撃的だったと思います。ストーリーらしいストーリーはなく、淡々とした語り口ですが、李さんとその一家の存在感は印象的です。ちょっと煩わしく、かといって排除できない、しかるに理解することはできない存在である李さん一家、何かしらほのぼのとした気分を感じてしまいます。
ラストシーンは特に有名ですが、同様な構図が繰り返し現れてきます。
窓の外から覗く感じの距離感が気持ちよいのかもしれません。個人的にはこれらのコマの板目の描線に慰安を感じてしまいます。
水木しげる 鬼太郎夜話 第1回
「鬼太郎夜話」は貸本漫画として、これより前に描かれたものと思いますが、この号から再録で連載します。
初回は、自己の研究の正しさを証明するために、牛鬼(うしおに)の墓を探す理学博士・有馬凡が登場。
瀕死の状態で野鼠の大群に体を貪り食われながらも、墓を掘り返すことに成功、博士の血液を吸って牛鬼が甦った。
白土三平 カムイ伝 第30回
上野昂志 目安箱 第27回 「防衛」について
佐々木守 日本忍法伝 第20回
永島慎二 生命(いのち)
滝田ゆう かわりみ
楠勝平 参加
升田かずお マンガ革命
池内誠 反乱
つげ義春 李さん一家
勝又進 作品集 第12回
水木しげる 鬼太郎夜話 第1回
白土三平 カムイ伝(40頁)
・ 日置を遠くはなれ、畿内の農村を歩く正助。村は死体だらけで、生きているものはいない。大飢饉が襲ったようだ。正助は死体の中にナナと一太郎に似た親子を見つけ、愕然とする。
・ 川向こうの村には生き残った者がいると聞き、川を渡る。城下は閉ざされ農民は入れない。検問に向かう多数の農民たち。「ご布施米」を要求している。飢え死に一歩手前の状態。
・ 武士は農民を切り伏せ、銃撃し、追い討ちする。バタバタと倒れる農民たち。その中にはゴンに似た者もいる。
・ その光景に衝撃を受け呆然と歩く正助を、同じ農民が襲い身ぐるみをはぐ。
・ 気を失った正助のそばで「口減らしができた」、「農民はいくらでも移住させればよい」と満足げに話す城代
この回は前回の話から飛んでしまい連続していません。後記で作者自身が「種々の事情からかくなる結果になってしまった」と述懐しています。カムイ伝を小島剛夕氏が手伝っていたのは有名ですが、この回は他とちょっと画風が異なります。白土氏が何らかの理由で時間がさけず、小島氏主体で描いたのかもしれません。
なお、後記には
「支配者の言うことは、一つとして信じられるものはない。彼らが口にするヒューマニズム、平等、自由、平和、独立、秩序、道徳、愛国心等々は、われわれのものではない。全て彼らの支配のための、それを維持するための方便にすぎない。」
といった文章が記されています。カムイ伝が描かれた時代の雰囲気を伝えるアジテーションなのでしょうが、高校時代、こういった文章に血湧き肉躍らせていたことを思い出しました。
永島慎二 生命
シリーズ黄色い涙 SHINJI GEKIGA. COLLECTION-NO.1の副題がついています。「少年画報」昭和41年12月号に掲載された作品の再録です。
餌を追い求める狼の親子。猟師の青年を襲い、その腕を食いちぎり逃げ去る。
10数年がたち、生き延びた子供狼は群れのボスとなる。取った餌を母狼に優先的に食べさせようとしたとき、白髪・白髭の老猟師がやってくる。かつて腕を食いちぎられたあの青年の老いた姿。
老猟師は切断された腕に仕込まれた刀で母狼を葬り去る。母狼の死体を引きずっていく老猟師、その後を追う子狼。猟師の家に戻ると猟師もこと切れる。
一陣の風と共に猟師、母狼の死体は風化し白骨化する。
滝田ゆう かわりみ
警察への偽装工作で組が解散し、福祉事務所に勤めるヤクザ。ラーメンを食べては暗く落込んでいる。対立する組との構想のために拳銃が必要となり、親分から事務所の金を盗むように命令される。バイヤーとの取引現場、「やつはまだ来ないのか」と親分。男は横領した金の入った鞄を抱えタクシーに乗っている。男はそのまま料亭に行って、ドンちゃん騒ぎで使い切ってしまった。
楠勝平 参加
難病の息子の手術の成功率が50%だと医者に言われる母親。息子は手術を受けたがっている。
父親は禁煙して願をかけている。母親は息子が治ったら週に一度神社にお参りに来ると誓いを立てる。
手術は成功。父親はタバコを吸い始める。母親のお参りする姿。ある日息子は交通事故で死んでしまう。錯乱する母親。
彼女はお参りを何回か怠っており、それが心の中に罪悪感として残ってしまう。そんな彼女の心を知りながらも、バーの女性と酔って騒ぐ父親。
今回は現代もの。病院の描写にリアリティを感じます。
升田かずお マンガ革命
夢のない商業主義に走った漫画界に革命を起こした男たち。趣旨に賛同した政府や自衛隊の上層部の協力を得て革命は成功し、大手出版社は瓦礫の山に。革命のリーダーたちは新しい出版社を作り、低俗ではないよい漫画を出版し始める。そのうち、仲間が次々と止めていき、それぞれが出版社を立ち上げる。仲間たちは派手な漫画を掲載し人気を得る。リーダーも対抗して派手な漫画を売り出してどんどん利益を得る。しばらくたち、若手漫画家がくだらない漫画の氾濫に、マンガ革命を起こす。
池内誠 反乱
狩りに来て、山奥の村に迷い込んだ青年。村の様子が変だ。4人の男が村を出て行こうとする。長老たちは彼らを止めようとするが、彼らは無視して出て行ってしまう。青年は男たちに同行する。しばらくすると森の獣、鳥、虫が彼らを取り囲む。村を捨てようとする人間に対し、神=自然が怒っているのだという。犠牲になった男たちは獣らに白骨になるまで食われてしまう。仕方なく青年は村に戻る。これで元の村に返るだろうと、長老。そして、青年はよそ者が入り込むことを嫌う村人に殺されてしまう。
池内誠氏はその後、白土三平氏の赤目プロに入り、池内誠一名義で作品を描いておりました。現在はゴルフ漫画を描いているとのこと。
つげ義春 李さん一家
つげさんの有名な作品の初出です。スローライフを目指し、郊外のボロ家を購入する主人公。トマトや胡瓜を作りのんびりした生活を送っていた。ある日「ギャングのカポネ時代に流行ったような縞模様の薄ぎたないズボンを穿きその尻ポケットにむりやり上衣を詰め込んでいるので、そこがものすごく出っぱっていた」男がやってくる。
彼は鳥語がしゃべれるという。男は李さんという朝鮮人で妻と二人の子供がいる。李さん一家はそのまま家の2階に住んでしまう。李さんは定職がなく、怠け者。奥さんは無表情なグラマーで、時々主人公の作ったトマトや胡瓜を当然のように持って行く。子供は痩せこけ陰気な様子。
そんな一家に主人公の優雅な生活が侵害された、というのがこの作品の話。
つげさんの作品としては66年2月号の「沼」がすでに世の中にショックを与えていたようですが、この作品も衝撃的だったと思います。ストーリーらしいストーリーはなく、淡々とした語り口ですが、李さんとその一家の存在感は印象的です。ちょっと煩わしく、かといって排除できない、しかるに理解することはできない存在である李さん一家、何かしらほのぼのとした気分を感じてしまいます。
ラストシーンは特に有名ですが、同様な構図が繰り返し現れてきます。
窓の外から覗く感じの距離感が気持ちよいのかもしれません。個人的にはこれらのコマの板目の描線に慰安を感じてしまいます。
水木しげる 鬼太郎夜話 第1回
「鬼太郎夜話」は貸本漫画として、これより前に描かれたものと思いますが、この号から再録で連載します。
初回は、自己の研究の正しさを証明するために、牛鬼(うしおに)の墓を探す理学博士・有馬凡が登場。
瀕死の状態で野鼠の大群に体を貪り食われながらも、墓を掘り返すことに成功、博士の血液を吸って牛鬼が甦った。
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