目次
白土三平 カムイ伝 第32回
永島慎二 かかしがきいたかえるのはなし
上野昂志 目安箱 第29回 「日本人」 再び「外国人学校制度」について
滝田ゆう ふぇあぷれい
つりたくにこ 六の宮姫子の悲劇
池上遼一 夏
舛田義春 見解の相違
佐々木守 日本忍法伝 第22回
勝又進 作品集 第14回
つげ義春 峠の犬
水木しげる 鬼太郎夜話 第3回
白土三平 カムイ伝(44ページ)
・五郎とアケミの結婚式。物思いにふけるゴン
・ゴンの回想(第29回のラスト:新田に測量に入る役人)年貢の猶予があるにもかかわらず予告なく測量に入る役人に対し、阻止しようとする農民。一触即発。正助の家から火の手があがり、すんでのところでトラブルにならずにすむ。手風に旅を邪魔され戻ってきた正助の機転だった。
争いを回避した正助に対し、武闘派のスダレは批判する
・鍬下年季(年貢の猶予)は確保されるが、農民・の隔離政策は厳しくなる
・アケミのことで鬱屈するゴン。少女サチとの出会いで吹っ切れる。
暴風雨の中ぬかるみに足を取られた牛を担ぎ上げ、闘志を新たにする。
永島慎二 かかしがきいたかえるのはなし
シリーズ黄色い涙 SHINJI GEKIGA. COLLECTION-NO.3
腹ペコでフラフラの旅する蛙。かかしに救われる。
古い井戸の中に生れた蛙は、月の美しさに魅かれ旅に出た。月を求めて旅を続け遠くまで来た。
そんな蛙の孤独を感じたかかしは、一年に一度月に向かってバスが出て、自分はその切符切りで、君は目的がかなうんだと言う。喜びいさんでバス乗り場に向かう蛙。風の中で自分が長い間ここに立っていたその存在理由を悟るかかし。
かかしに自分の存在を重ねてみた、永島さんのファンタジー
滝田ゆう ふぇあぷれい
一人の娘に思いを寄せる二人の武士(新之助と三九郎)。正々堂々二人で思いを伝えるが、娘は三日待ってと言う。
待ちわびている三九郎のところへ、娘がやってくる。新之助のところに嫁ぐけれど、その前に三九郎に身を任せたいと言う娘。それはだめだと三九郎・・・
三九郎の元に新之助がやってくる。娘は別の男と不義密通の場を見つけられ手打ちにあったという。通夜の帰り、娘は新之助のもとにもやってきて同じことを言っていたことを知る。すると、やっぱり、幽霊・・・
実は三九郎は断りきれず娘といたしていた。
混乱する三九郎。なぜなら、娘の腰巻が残っていた。
ちょっと聊斎志異っぽい軽妙な作品
つりたくにこ 六の宮姫子の悲劇
マイペースで特に何をするでもなく、優雅に暮らしている姫子。
思いを寄せる男たちから、なぜ全てに悟っているかのように冷静でいられるかと、問われる。自分は別に悟ってはいない、一つ以外のことは重要ではないと無表情で語る姫子。そんな姫子に男たちは超えられないギャップを感じる。
だが、姫子の大事なことは、自分の目が細いことだった。
池上遼一 夏
巨匠・池上遼一さんの若い頃の作品。池上さんは大阪で働きながら貸本向け漫画を描いており、ちょうどこの頃上京して、水木さんのアシスタントをしていたとのことです。この後何作か描き、連載もあったりしますが、本人の気分としては
あの頃の私は人間不信というか、若さゆえに何か鬱積したものがあり、偽善を嫌い、焦燥感も手伝って、今から思えば暗いものを描いていた
とのこと(ガロ曼陀羅)。傑作「男組」でブレークする前夜の貴重な作品群と言えます。
この作品は、夏のうだる暑さを描いたちょっと観念的な作品。
魚市場のトラックの後ろのオープンカーにサングラスの青年が乗っている。積荷の魚の臓物には大量のハエがたかっている。渋滞のようだ。太陽はギラギラと輝いている。
青年は少女に出会う。前にも何度か会ったことがあるよう。ただ、偶然出会うだけで、そこがどこなのかもわからない。少女の足元にはハエのたかった狂人が横たわっている。青年は饒舌に語り始める。
窓を締め切った室内にいるはずのないハエが三匹飛んでいる。窓が少し開いていて、外にいる狂人にたかったハエが室内に入ってきた?狂人がいなくなればハエもいなくなる?それを確かめるため、二人は狂人を捨てに行く。狂人を捨てて部屋に戻ると、まだ室内にハエがいる。ハエは増え続ける。少女の口からハエが出てきていたのだ。二人はこれを強迫観念のように恐れていた。
青年の長口舌は続く。「小麦色した僕の皮膚のしたには襤褸の臓物が詰まっている・・・」
トラックに追突したスポーツカー。横転したトラックからは魚の臓物がこぼれだし、凄い量のハエが飛び交っている。死んだ(?)青年の口からまるでハエが出ているように。
絵はメジャーなテイストで、少女もかわいい。後の画風がもうすでに出来上がっています。それゆえこの観念的なストーリーが異化作用を生み出しているように思います。なにげに好きな作品です。
つげ義春 峠の犬
つげ義春氏も池上さんと水木さんのアシスタントをやっていたそうです。
主人公は反物を売り歩く行商人。隣家で一年ほど前から五郎という犬を飼っていた。五郎は無愛想な犬で、飼い主に怒られては主人公の元に逃げてきたりしていた。
ある時、行商から帰ってくると五郎はいなくなっていた。
しばらくして普段は通らない道を通って行商に出かけると、峠の茶屋で五郎を見つける。そこではハチと呼ばれており、一年半ほど前に行方不明になって半年ほど前にヒョッコリ戻ってきたという。犬はあいかわらず無愛想で、覚えているのかもわからない。翌朝、主人公は何故か引返さなければならないような気がして、雨の中、ゆっくりと峠を降りる。
犬のとぼけた表情が理解不能性をよく出しています。静かな語り口と乾いた目線が当時の漫画界ではやはり衝撃だったのではないでしょうか。
この号には次号(創刊三周年記念9月特大号)の予告が載っています。つげさんの作品は「湖畔の風景」となっていますが、次号の掲載作品は「海辺の叙景」です。当初は湖畔を舞台にした作品だったのでしょうか。
水木しげる 鬼太郎夜話
・餌である漫画家をめぐって牛鬼と吸血鬼が激闘を行い、もつれ合って丸い玉になってしまう。
・ねずみ男に見つかり食べられそうになった親父。漫画家に助けられる。
・日本血液銀行の禿山頭取は製品に幽霊の血が混じっていたことから国内での信用を落とし、米国に血液を輸出しようと米国に行った帰りの飛行機で、鬼太郎の魂が入った風船を手に入れる。
・深夜禿山頭取のところに鬼太郎が呼び寄せられる。鬼太郎は魂を取り戻し正気に戻る。鬼太郎から父親の話を聞き、血液に幽霊の血を混ぜた犯人に違いないと、100万円の懸賞金で父親探しの新聞広告を出す。
・ねずみ男はもつれ合った牛鬼と吸血鬼を地中に埋める。たまたま新聞広告を眼にし、目玉親父を捕まえて禿山頭取のところへ持っていく。
・鬼太郎と目玉親父の再会。
・ねずみ男は100万円の代わりにドラム缶1本の血をもらって帰る。
ストーリーは荒唐無稽ですが、背景や人物が描き込まれていて、作品としてはなかなか味があります。鬼太郎は喫煙したりしていて、テレビに出たときより若干不良です。
「この作品は、六年前に描いたものを原作としています」という注があるので、リメイク作品なのでしょう。
以上
白土三平 カムイ伝 第32回
永島慎二 かかしがきいたかえるのはなし
上野昂志 目安箱 第29回 「日本人」 再び「外国人学校制度」について
滝田ゆう ふぇあぷれい
つりたくにこ 六の宮姫子の悲劇
池上遼一 夏
舛田義春 見解の相違
佐々木守 日本忍法伝 第22回
勝又進 作品集 第14回
つげ義春 峠の犬
水木しげる 鬼太郎夜話 第3回
白土三平 カムイ伝(44ページ)
・五郎とアケミの結婚式。物思いにふけるゴン
・ゴンの回想(第29回のラスト:新田に測量に入る役人)年貢の猶予があるにもかかわらず予告なく測量に入る役人に対し、阻止しようとする農民。一触即発。正助の家から火の手があがり、すんでのところでトラブルにならずにすむ。手風に旅を邪魔され戻ってきた正助の機転だった。
争いを回避した正助に対し、武闘派のスダレは批判する
・鍬下年季(年貢の猶予)は確保されるが、農民・の隔離政策は厳しくなる
・アケミのことで鬱屈するゴン。少女サチとの出会いで吹っ切れる。
暴風雨の中ぬかるみに足を取られた牛を担ぎ上げ、闘志を新たにする。
永島慎二 かかしがきいたかえるのはなし
シリーズ黄色い涙 SHINJI GEKIGA. COLLECTION-NO.3
腹ペコでフラフラの旅する蛙。かかしに救われる。
古い井戸の中に生れた蛙は、月の美しさに魅かれ旅に出た。月を求めて旅を続け遠くまで来た。
そんな蛙の孤独を感じたかかしは、一年に一度月に向かってバスが出て、自分はその切符切りで、君は目的がかなうんだと言う。喜びいさんでバス乗り場に向かう蛙。風の中で自分が長い間ここに立っていたその存在理由を悟るかかし。
かかしに自分の存在を重ねてみた、永島さんのファンタジー
滝田ゆう ふぇあぷれい
一人の娘に思いを寄せる二人の武士(新之助と三九郎)。正々堂々二人で思いを伝えるが、娘は三日待ってと言う。
待ちわびている三九郎のところへ、娘がやってくる。新之助のところに嫁ぐけれど、その前に三九郎に身を任せたいと言う娘。それはだめだと三九郎・・・
三九郎の元に新之助がやってくる。娘は別の男と不義密通の場を見つけられ手打ちにあったという。通夜の帰り、娘は新之助のもとにもやってきて同じことを言っていたことを知る。すると、やっぱり、幽霊・・・
実は三九郎は断りきれず娘といたしていた。
混乱する三九郎。なぜなら、娘の腰巻が残っていた。
ちょっと聊斎志異っぽい軽妙な作品
つりたくにこ 六の宮姫子の悲劇
マイペースで特に何をするでもなく、優雅に暮らしている姫子。
思いを寄せる男たちから、なぜ全てに悟っているかのように冷静でいられるかと、問われる。自分は別に悟ってはいない、一つ以外のことは重要ではないと無表情で語る姫子。そんな姫子に男たちは超えられないギャップを感じる。
だが、姫子の大事なことは、自分の目が細いことだった。
池上遼一 夏
巨匠・池上遼一さんの若い頃の作品。池上さんは大阪で働きながら貸本向け漫画を描いており、ちょうどこの頃上京して、水木さんのアシスタントをしていたとのことです。この後何作か描き、連載もあったりしますが、本人の気分としては
あの頃の私は人間不信というか、若さゆえに何か鬱積したものがあり、偽善を嫌い、焦燥感も手伝って、今から思えば暗いものを描いていた
とのこと(ガロ曼陀羅)。傑作「男組」でブレークする前夜の貴重な作品群と言えます。
この作品は、夏のうだる暑さを描いたちょっと観念的な作品。
魚市場のトラックの後ろのオープンカーにサングラスの青年が乗っている。積荷の魚の臓物には大量のハエがたかっている。渋滞のようだ。太陽はギラギラと輝いている。
青年は少女に出会う。前にも何度か会ったことがあるよう。ただ、偶然出会うだけで、そこがどこなのかもわからない。少女の足元にはハエのたかった狂人が横たわっている。青年は饒舌に語り始める。
窓を締め切った室内にいるはずのないハエが三匹飛んでいる。窓が少し開いていて、外にいる狂人にたかったハエが室内に入ってきた?狂人がいなくなればハエもいなくなる?それを確かめるため、二人は狂人を捨てに行く。狂人を捨てて部屋に戻ると、まだ室内にハエがいる。ハエは増え続ける。少女の口からハエが出てきていたのだ。二人はこれを強迫観念のように恐れていた。
青年の長口舌は続く。「小麦色した僕の皮膚のしたには襤褸の臓物が詰まっている・・・」
トラックに追突したスポーツカー。横転したトラックからは魚の臓物がこぼれだし、凄い量のハエが飛び交っている。死んだ(?)青年の口からまるでハエが出ているように。
絵はメジャーなテイストで、少女もかわいい。後の画風がもうすでに出来上がっています。それゆえこの観念的なストーリーが異化作用を生み出しているように思います。なにげに好きな作品です。
つげ義春 峠の犬
つげ義春氏も池上さんと水木さんのアシスタントをやっていたそうです。
主人公は反物を売り歩く行商人。隣家で一年ほど前から五郎という犬を飼っていた。五郎は無愛想な犬で、飼い主に怒られては主人公の元に逃げてきたりしていた。
ある時、行商から帰ってくると五郎はいなくなっていた。
しばらくして普段は通らない道を通って行商に出かけると、峠の茶屋で五郎を見つける。そこではハチと呼ばれており、一年半ほど前に行方不明になって半年ほど前にヒョッコリ戻ってきたという。犬はあいかわらず無愛想で、覚えているのかもわからない。翌朝、主人公は何故か引返さなければならないような気がして、雨の中、ゆっくりと峠を降りる。
犬のとぼけた表情が理解不能性をよく出しています。静かな語り口と乾いた目線が当時の漫画界ではやはり衝撃だったのではないでしょうか。
この号には次号(創刊三周年記念9月特大号)の予告が載っています。つげさんの作品は「湖畔の風景」となっていますが、次号の掲載作品は「海辺の叙景」です。当初は湖畔を舞台にした作品だったのでしょうか。
水木しげる 鬼太郎夜話
・餌である漫画家をめぐって牛鬼と吸血鬼が激闘を行い、もつれ合って丸い玉になってしまう。
・ねずみ男に見つかり食べられそうになった親父。漫画家に助けられる。
・日本血液銀行の禿山頭取は製品に幽霊の血が混じっていたことから国内での信用を落とし、米国に血液を輸出しようと米国に行った帰りの飛行機で、鬼太郎の魂が入った風船を手に入れる。
・深夜禿山頭取のところに鬼太郎が呼び寄せられる。鬼太郎は魂を取り戻し正気に戻る。鬼太郎から父親の話を聞き、血液に幽霊の血を混ぜた犯人に違いないと、100万円の懸賞金で父親探しの新聞広告を出す。
・ねずみ男はもつれ合った牛鬼と吸血鬼を地中に埋める。たまたま新聞広告を眼にし、目玉親父を捕まえて禿山頭取のところへ持っていく。
・鬼太郎と目玉親父の再会。
・ねずみ男は100万円の代わりにドラム缶1本の血をもらって帰る。
ストーリーは荒唐無稽ですが、背景や人物が描き込まれていて、作品としてはなかなか味があります。鬼太郎は喫煙したりしていて、テレビに出たときより若干不良です。
「この作品は、六年前に描いたものを原作としています」という注があるので、リメイク作品なのでしょう。
以上
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