独り合点(ひとりがてん)

きもの業界をステージとした、ビジネスと生活スタイル、および近況。

帯の伊勢丹

2012-01-12 | きもの

資料探しというほどでもないが、パラパラ本を読んでいたらこんな文章が目にとまった。「伊勢丹は1886年、神田明神下で創業した。呉服店時代からの歴史の長さを比べると高島屋、三越、松坂屋といった老舗に劣り、老舗というブランドでは太刀打ちできなかった。その対抗手段としての差別化は、創業者である小菅丹治が、当初から努めて実践してきたことで、その一例が1909年に行った「帯の展覧会」だ。「帯は服飾美の中心であり、女性の精神を象徴するものである」という考えのもと西陣織や巨匠の作品はじめ、鹿皮帯、コブランなど華麗で斬新な帯を一堂に見せるイベントを催した。以来「帯の伊勢丹」の名声はゆるぎないものになったという。「帯と模様の伊勢丹は、『独自性のある模様の創造にこそアイデンティティがある』という考え方そのものであり、ファッションの伊勢丹の原点を形作っている」と指摘する。

この時代に帯を「女性の精神の象徴」、つまり自己表現の一つとしてとらえていたという事実は、ファッションの伊勢丹の面目躍如たるものがあります。そして、昨日の読売新聞に「染織作業 60年代の風景」と題して、伊勢丹の呉服担当者が伝統作業の継承に役立てたいと1960年代に全国23ヶ所の織物や染めの産地を記録した16ミリを1年かけて復刻し、DVDにしたと報じられていた。3月には完成試写会も計画されているとか。今きもので、一番注目されている新宿伊勢丹。ブームだからという付け焼刃ではなく、創業からの精神が脈々と伝わっている。すごい。


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