jump in the box

この小さな箱の中で飛んだり跳ねたりしてみます(笑)

痛いほど透明な川に足を浸す ~1~

2004年09月11日 | 家族
帰省シリーズ第6弾です
…ってまだ続くのかよっ!(爆)

縁側ビールとその後の宴会でぐっすり眠った翌朝
チーちゃんに起こされて重い身体を縦にする。

台所へ行くと弟家族が朝食中だった。
狭いテーブルは甥っ子1.2号と姪っ子の声で溢れている。

すでに朝食を終えていた父は居間でコーヒーを飲んでいる。
「今日はどこ行くん?」父の隣に座りながら聞いた。
「どこ行こうかなぁ」
父はそう答えてコーヒーを一口すすると
「敷物とお弁当持って山でも行くか」と言った。
するといつの間にかそばにいたチーちゃんが
「うん!行く!山行きたい!」と大騒ぎする。
ニパちゃんは今日もキョトンとしてお姉ちゃんを見ている(笑)

早くもお出かけモードのチーちゃんにせかされ
弟家族と交代で朝食の食卓に着いた。

山へ行く前に僕には寄らなければならにところがある。
いつも顔わ出す近所のおじさんのところ。
小さい頃はその家のおじいさんとおばあさんに可愛がってもらった。
おじさんはいつもお米や野菜を僕に送ってくれる。

徒歩1分
訪ねるとおじさんもおばさんも出かけているようで
次女が一人でいた。
仏間に通してもらって線香をあげる。
おじいさんとおばあさんに心の中で語りかける
「今年も無事に帰ってきました。家族はみんな元気です。」
手を合わせて言う事はいつも同じなのだけれど
娘達の成長をしっかりと見てもらえているような気がしている。

次女がお茶を出してくれた。
そこで思わぬお願いをされた。
「あ、そうそうjumpあんちゃ、私な結婚するんな」
あのちっちゃくて丸々した愛らしい女の子が結婚?
目の前のちょっと照れながらもすっかり女っぽくなった次女は続けた。
「それでな、結婚式の招待状に入れる似顔絵描いて欲しいんだけど」
「お安い御用で!」
もちろん喜んで引き受けた。
「彼氏も今きとるで紹介するな」
おおーっ、何か緊張するなぁ!

家主不在の婚約者の家で
どこの誰とも知らない昔近所に住んでたお兄ちゃんという人物に
いきなり引き合わされた彼氏はどんな顔していいのかわからない様子(笑)

とりあえず二人並んだ姿をデジカメに納めて実家に戻った。
もちろん彼氏の笑顔はどれも引きつっていて
後で見返すとそれがとても面白くて
そこから似顔絵を起こさなきゃならない事を忘れて笑った。


ブルーの大きなシート、お茶の水筒、お菓子、子供達の着替え
僕の車と弟の車に積み込んで行く。

それぞれ子供達をチャイルドシートに縛りつけ
僕の車に僕ら夫婦とニパちゃんと両親を乗せ、
チーちゃんは弟家族の車に乗り込みいざ山へ向け出発!

…が、その前にもう一箇所寄らねばならないところがある
母の実家であり、僕らの仲人をしてくれた叔父の家だ。

祖父は建具職人で長女の母を筆頭に4人兄弟。
次女は単身アメリカに渡り今もLAで一人で暮らしている。
末っ子の三女は神奈川に住んでいて
僕の初めての旅で行ったのがこの叔母の家だった。

一人息子だった叔父は祖父の跡を継いで店舗内装の会社を経営していた。
その叔父にとって初めての甥っ子だった僕は
小さい頃から無条件に可愛がられた。

多くの少年がそうであるように車好きだった僕をドライブに連れて行ってくれたり
知り合いのダンプの運ちゃんに頼んでダンプカーに乗せてくれたこともあった。
クリスマスに「仮面ライダーのベルトが欲しい!」と言えば
ちゃんとプレゼントを用意してくれた。
包みを開けてみるとそれは「バロムワンのベルト」だったりするのだが(笑)

僕が高校生になると一緒に飲めるのが嬉しいらしく
しょっちゅう家に呼ばれた。
仕事の話や祖父や母の苦労話をしてくれた。
「お前に会社を継いで欲しい」と言われた事もあった。

僕が大阪に出てからも帰省の度に家に呼ばれ朝まで飲んだ。
僕も就職して結婚が決まった。
報告と仲人の依頼に行くとすっかり白髪頭になった叔父は
自分の息子のように喜んでくれた。

形式だけの結納のために大阪まで来てくれた時は
白髪をキレイに黒く染めていたのに驚いた。
「jumpの嫁さんのご両親に会うのに恥ずかしいだろ」
叔父はそう言っていつの間にか深く刻まれた目じりの皺を一層際立たせて笑った。

チーちゃんが生まれて初めての帰省の時は
僕の両親よりも嬉しそうに
飲んでいる間中ずっとチーちゃんを膝の上に抱えていた。

叔父の子供、いとこは3人。
長女、長男、次男といたが男の子人は良く問題を起こした(苦笑)
たくましくやんちゃで奔放に育った。

その長女が結婚し、初孫が生まれ、長男も結婚が近づくと
自然に僕らが叔父の家に顔尾を出す頻度は減っていった。

「叔父さんが倒れた」
早朝や深夜にかかってくる電話はこんな内容の事が多い。
だからできれば出たくないのだ。

慌てて田舎に帰った。
病室の叔父は頬がこけていたがまだ元気そうだった。
早く治して仕事しなきゃと言っていた。
「あと半年だって」看護士だった母は弟の余命を聞いてうろたえていた。
がんだった。

叔父の生命力は医者の診断と病気を凌駕していた。
入退院を繰り返し最初の入院から1年半が経っていた。
なんとしても半年後に迫った長男の結婚式には出るんだと言っていた。

その電話は深夜にかかってきた。
「さっき亡くなったよ」母は落ち着いた声で電話してきた。

東京で単身赴任中だった僕は
とりあえず一人で田舎に帰った。

「まるで眠っているようだ」そんな手垢のついた表現がぴったりだった。
台所では近所のお組合の女性達が通夜の支度であわただしくしている。
静かに横になっている叔父の横で僕は酒を飲んだ。
湯のみ茶碗に酒を注いで叔父の枕元に置いて一緒に飲んだ。
そこだけ時間が止まったようだった。
飲みながら話しかけても
いつものような笑顔と返事が返ってくることはなかった。

通夜も葬式も忙しく感傷に浸る間もなくあっと言う間にすぎて行った。
出棺の時チーちゃんは花とタバコを棺に入れ
嫁さんにしがみつきながら泣いた。
僕は悲しかったけれど不思議なほど涙が出なかった。

火葬場で最後のお別れをした。
その最中はみんな落ち着いたようで
待合室でお茶を飲み談笑していた。

僕はそこを抜け出してロビーに出てタバコに火をつけた。
ふーっと煙を吐き出して窓の外を見る。
煙突からまっすぐ天に向かって煙が立ち昇っていた。

その瞬間堰を切ったように涙が溢れ出した。
親戚や近所の人の目もはばからずに泣いた。
嗚咽を繰り返し声をあげて泣いた。

空は青く高かった。

3ヵ月後
いとこの結婚式は新郎の父は不在だったが
延期はするなと言う強い希望で滞りなく行われた。
最後の新郎の挨拶で会場は泣き声に染まった。
叔母が抱えていた遺影だけが穏やかに微笑んでいた。

その叔父に手を合わせるために
山へ行く前にその家に寄らねばならなかったのだ。
…って前置き長すぎ(笑)

てなわけでまたもや続くのだ(爆)








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11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
川ファンのおれ (しなたま)
2004-09-12 01:22:10
川好きなんですよ。電車に乗ってても鉄橋のおとに車窓をみちまうくらい。



って、この記事、川かんけーないし!!(笑



でも素敵な記事でした。

騙され甲斐があったというものです。



続き、待ってます。
返信する
川っていいですね (kawakero)
2004-09-12 13:20:31
コメントダブリますが・・。

川だ、川だと禁断症状だしながら読むと・・・川が出てこなーい!(笑)



色々な事思いだして、俺もしんみりしちゃいました。

知人が別の世界にってしまうって、慣れる事はないですね。

小さい頃、大人はお葬式でも泣かないんだなと思っていましたが、そのような大人にはなれそうにありません。
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確かに (kissh)
2004-09-12 21:38:07
話がすり替わってるなぁ(笑)

お子さんとの楽しいふれあいの話のハズが悲しい話に。

親族の葬儀で泣いたこと無いなぁ・・・。

なんでかな。

友達の葬儀では泣きが入ったのにな。



しかし一番気になったのはバロムワンのベルト。

欲しかったんですよぉ(笑)
返信する
節をつけてどうぞ。 (kawakero)
2004-09-12 21:59:14
>>kisshさん



バロムワンのベルトは俺も欲しかったです。

ちなみに節をつけて叫んでみてください

    ↓

“バ~ロォ~ムッ!”



正確に発音できた方は、同年代決定です(笑)
返信する
プールで (jump)
2004-09-13 10:13:21
友人と両端から全力で泳いで中央で腕を組みぐるぐる回って

バロームクロース!とかやってました(笑)

モロに世代です。



しなたまさん

 東京で単身赴任中は多摩川のすぐそばに住んでたので

 週末はいつもバーベキューする家族連れを横目に(笑)

 河原を散歩してました。



kawakeroさん

 だってHNが川好きそうですもん(爆)

 自分でも書いてていつ川に着くんだろうと…(苦笑)

 次くらいで終わらせたいんですけどねぇ



kisshさん

 自分でも叔父の葬式で泣くとは思わなかったなぁ

 葬式はもとより、結婚式でもボロボロ泣いちゃうんですよねぇ(笑)



 バロムワンも好きだったんですけど

 仮面ライダーだと思ってただけにショックだったんですよ~(笑)

 
返信する
その前に (kissh)
2004-09-13 13:10:16
脱線してきましたが(笑)



「たけし!」「健太郎!」

と叫ばなきゃ!

それから「バ~ロォ~ムッ!クロスッ!」そして回転ですね。



食らえ、外道照身霊波光線!

(さすがにわからないか?)
返信する
さすがに (jump)
2004-09-13 19:36:29
それはわかんないっす(笑)<外道照身霊波光線!



自分と同じ年代の少年が変身するってのが

妙に親近感あって好きだったなぁ。

返信する
タイトルに惹かれて (ほにゃらか)
2004-09-13 20:59:07
更新情報で見た「タイトル」が素敵だったので

読みに来てみたら、悲しい話でした。

私も先日、伯母を亡くしました。

お葬式に行くまでは不思議と悲しくなかったのに、

棺のなかの伯母を見たら、もうたまらなくなりました。



jumpさんの叔父様も、泣いているjumpさんの姿を

きっとごらんになっていたと思います。

叔父様のご冥福をお祈り致します。
返信する
それは (kissh)
2004-09-14 00:52:34
ダイヤモンド・アイです。

この光線を照射すると、人間に化けていた怪人が「ば~れ~た~か~」と言って実態を現すのです。

あまりにマイナーなヒーローなんで無理がありましたね、失礼。
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帰省の話も (わど)
2004-09-14 08:47:56
はやくしないと、もう冷えてくるよ。



でも、続けるってところがエライ。

継続は力だとか。

今年中にはおわりそうかい?

来年の帰省につづくのかい?w
返信する