ジョーの日記

米国での日々の生活を写真と言葉で綴ります。

「風が吹くとそこから物語が始まる」〜角野栄子さんとジブリ映画と宮沢賢治

2024-01-13 | 日記
今日は土曜日。
以前は土曜日の朝は散歩だけだったが
最近は10時のヨガのクラスにも行くようになった。
1月だからか、土曜日だからか、けっこう混んでいた。
ヨガをやるとその日の身体の調子がよくわかる。
悪い夢を見て真夜中に目が覚め、
日本での熊対策を頭の中でぐるぐると考えてしばらく眠れなかったにも関わらず、
身体が元気な感じだったのにはちょっと驚いた。

家に帰ってきて朝と昼一緒のご飯を食べていると、
うちのサビ猫がテーブルの端に座って窓の外を凝視している。
ヨーロピアンスターリング(ホシムクドリ)の群れが
一斉に庭の木に止まったり飛び立ったりしていたのだ。
最近ホシムクドリの群れを家の近くで見かけていなかったので
猫と一緒にしばらく眺めていた。
地上に降りると何か食べている様子なのだけど何を食べているかわからない。
わたしの持っている小さな図鑑では
虫や穀物、フルーツ(木の実?)を食べるのだとか。
木からワーッと一斉に飛び立つ様子を見るのは楽しい。

何かの番組でまた角野栄子さんの特集をしていた。
彼女のドキュメンタリー映画が出るらしいのでそのせいかもしれない。
彼女が若い頃、ブラジルに行って最初は言葉もわからないし大変で葛藤もあったらしいが
ある日、窓を開けたらすーっと風が入ってきてすごくいい気持ちになり、
この国で生きていけると思った、と言う。
おー「風」かあ、と思った。
彼女が原作の「魔女の宅急便」の中ではキキが修行に出ようとホウキに乗ると
ぶわ〜〜〜っと風が立ち、ピューンと空に舞い上がったし、
トトロでも風がどーーーっと立つ場面はたくさんあった。
どこかで読んだのだけれど、宮崎駿は宮沢賢治からも影響を受けたそう。
宮沢賢治と言えば、もちろん「風の又三郎」もあるし、
「風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、
木はごとんごとんと鳴りました」の「注文の多い料理店」もある。
「風」が吹くとそこから物語が始まるのだ。

宮沢賢治の「注文の多い料理店」の「序」が好きで繰り返し読んでいる。
少し長いけど紹介します。

「わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、
桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。
またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、
いちばんすばらしいびろうどや羅紗や、宝石いりのきものに、かわっているのをたびたび見ました。
わたくしは、そういうきれいなたべものやきものをすきです。
これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、
虹や月あかりからもらってきたのです。
ほんとうに、かしわばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかったり、
十一月の山の風のなかに、ふるえながら立ったりしますと、
もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。
ほんとうにもう、どうしてもこんなことがあるようでしかたないということを、
わたくしはそのとおり書いたままです。
ですから、これらのなかには、あなたのためになるところもあるでしょうし、
ただそれっきりのところもあるでしょうが、
わたくしには、そのみわけがよくつきません。
なんのことだか、わけのわからないところもあるでしょうが、
そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。
けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、
おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、
どんなにねがうかわかりません。」

大正十二年十二月二十日        
                     宮沢賢治


100分de名著で宮沢賢治スペシャルを放送した際のNHKテキストに山下聖美さんがこう書いている。
「普通、作家の執筆の様子と言えば、
机に向かって原稿用紙にペンを走らせているイメージを思い浮かべると思いますが、
賢治の場合はそうではなく、野外を歩き、メモを取ったりしながら書いていたようです。
頭の中で物語を構想して書くというよりは、自然の中を歩き、
そこで感受したものをそのまま筆先から文字に変えて書いていた、とも言えるでしょう」
宮沢賢治の物語は「自然からもらってきたもの」ということなのだろう。




今日のサビ猫。毛繕い中。
ほんとうは動画なのだけど、スクショしたものです。

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2 コメント

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Unknown (gosen-sugi-jun)
2024-01-14 18:26:50
先日、福島へ行ったとき、ホテルで映画「銀河鉄道の父」を見ることができました。
この映画は賢治の父が主役ですが、賢治は私のイメージとはずいぶん違うように感じました。
監督のイメージでしょうから、仕方ないのでしょう。
Unknown (ジョー)
2024-01-15 06:14:33
Gosenさん、コメントありがとうございます。
「銀河鉄道の父」、観ることができたんですね。
わたしもいつか観たいと思っているんですが。
役所広司さんが賢治の父親役で菅田将暉さんが賢治役ですよね。
みんなそれぞれ宮沢賢治への思い入れだったりイメージがあると思うので
受け止めかたもさまざまだろうと想像します。
わたしもどんなふうに感じるのかなあと思います。

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