樹業人~風の通心

持続可能な社会や森林・建築・木製品について、気ままに こそっと考える為のネタ帳です。

林道はつくったらあかん

2007-11-10 | 森林と樹と人
前のブログのケヤキは、かなり先の方だと思われますが それでも直径60cm以上はあったと思います。

私は、どうしても その切り株が見たくて しばらく今の作業が落ち着かれるまで様子を見ていました。



この樹は近くに小屋と家があったので バサッと倒すわけにはいかず ロープ1本で体を支え 丁寧に樹の先端から60cm位づつを伐り落とす作業をされていました。
すごいの一言です。

ちょうどそこに その作業を請け負っておられる素材業者の宮崎木材の社長さんが見えました。
五年程前 生まれて初めて父親に連れられて 兄弟全員で自分ちの山を見に行った時に奥山で伐採搬出されている時に お会いして以来 二度目です。

その時は まだ私たちは本格的に 地元の木の伐採はしていませんでした。
地元の木が 製材業をしている私たちにさえ 手に入らない頃でした。
「この木は どこに持って行かれるのですか」と尋ねたら
「名古屋」と おっしゃいました。複雑でした。
その頃は、たぶん 名古屋あたりから建築材が入ってきていたからです。

正直、もったいないと思いました。車に乗せて往復するのです。
隣の山の木も手に入らないもどかしさ…。
近くの木材市場が経営が成り立たず ほとんどなくなっていたからでもあります。 
ある意味 それがきっかけで 自分たちで近くの木を伐採する事を少しづつ始めて 私は ウッドマイルズを計算してみようと思うに至ったのです。

ご挨拶をして 気になっていた森林の状態などをうかがい
本来 山と人を結ぶ位置にある「製材業」である私たちが
木とともに 山の状況も伝えないといけないのではと 思っているというと 

「林道は つくってはいけない」

以前に書いた 「広葉樹は 植林なんてしちゃだめ」
の時も びっくりしましたが 今回は更に
頭を殴られた思いでした。

これを言われたのが、林道が出来て一番 得をすると思われる山で樹を伐って搬出する事を生業とされている素材業者さんなのです。

林道というのは、雨が降れば川になり 土砂くずれの原因になるし
大型機械で踏みつけて 土壌がかき回されたところには しばらく植物は生えないからだとおっしゃいました。

頼んではいないのに ちょっと 来てみと 

この先にある ケヤキの切り株のところに案内して頂きました。

びっくり。直径1.2M位はあったと思います。
相当大きな樹高の木であったにも関わらず 何もなかったかのように 他の木が全然 倒れても 傷ついてもいないのです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あんなー 早く仕事をしようと思ったら バサッと伐ったらええわな。
そやけど 大きな枝をつけたままやったら 他の木を傷つけてしまうやろ。 
若いやつらにも 言うてるんやけど 今は細い木でも 何十年も生きてきとるねん。今は いらんもんに見えても 又 何十年かしたら ちゃーんと 良い木になって 又 仕事をさせてもらえるかもしれんってな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

上の写真よりも ずっと大きくてやっかいなケヤキの枝を大切にはらって
とても 丁寧に倒された事が 何事もなかったかのような土壌を見るとよくわかります。だんじりを作られている大工さんが わざわざ見にこられたそうです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今の 机の上で決めてる事はあかん。
何も 山の為になってへん。
広葉樹も植えるもんと違う。
間伐材は、森の肥やしにしたらええ。
補助金もらう為だけのもんやし 木の評判も落とす。
山を知らんもんが 手を出すと荒らしてしまう。

企業の森林事業も お金の出し方が間違ってる。
ちゃんと 買って使ってもらったら 
自然と山の手入れはするようになる。

大工さんも 木を見られるようにならんとな。
あんな 電子レンジで チンしたような木は もたんわな。
( 人工乾燥材の事です )
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 林道をつくってはいけないというのも 1本1本の木を大切に 自分の世代の事ではなくて 本当に心から森林を大切に思う気持ちからなのだと 心に染みました。

 現状を知る前は、私はこの人達が儲けてるのねと思っていました。反省です。うちも含めてですが、ちゃんと山の事を思い 木にたずさわっている人は 流通の川下近くまで もうかってなんていないのです。

「他の仕事に変わった方が なんぼ楽な事やと思うけどな…」

 その言葉の続きは いとおしそうに切り株をなでていらっしゃる仕草で 言わずもがな です。
 大規模林業も ハウスメーカーや国民のニーズに応える為には必要なのかもしれませんが 将来の持続ある日本の森林を考えるのなら 各地 各山にいらっしゃる こういう本当のプロをサポートして 絶やさないようにしなくてはいけないと思いました。

又 お天気のいい日に 切り株の写真を撮りに行きます。
心材の真ん中に 石灰が白く出ていました。
初めて見た現象です。
最近は 鹿が年二回 出産する話とか…
「空師」の方の話とか…
その時に 又 続きは書きますね。 

あっ ついでといっちゃなんなのですが 
わが社の工場に行ったら 又 別の こんな 象 見たいな樹が
ゴロゴロしていました。今日は 巨木シリーズです。
こんな日も めずらしい。






   

最新の画像もっと見る

コメントを投稿