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樹業人~風の通心

持続可能な社会や森林・建築・木製品について、気ままに こそっと考える為のネタ帳です。

kikitoびわ湖の森ローカルシステム専門委員会と公共建築物等木材利用促進法

2012-07-27 | kikito など

この春に完成しました 写真の滋賀県の多賀中学校のランチルームにて
kikito 湖東地域材循環システム協議会
第5回 びわ湖の森ローカルシステム専門委員会が 7月31日(火)に開催されます。
http://www.kikito.jp/pjreport/certification/201207063346.html

この委員会や会場となるランチルームの建築に至る過程は、小さな地域の方にとって参考にして頂けるかもと思うと共に 色々な制度の問題点も浮き彫りにしてくれるのではないかと思い、少しご紹介したいと思います。
(個人的に書いております。私は、ただのkikitoの一メンバーにすぎません。あしからず)

この委員会では、地域の森林のCO2吸収と木材のCO2固定認証を検証して頂いて参りました。
今回は会場となる多賀中学校のランチルームのCO2固定認証も行われます。
「公共建築物等木材利用促進法」に基づき 多賀町の木材が使用され、滋賀県の森林税も利用された建物です。

1.びわ湖の森ローカルシステム専門委員会

森林のCO2吸収に関しては(カーボン)オフセット・クレジット(J-VER)制度というのがあり、通常は、都道府県J-VERプログラム認証というのを利用するのですが、ローカルとありますように「独自」になったのは、この制度が出来る前に始めた事とkikitoが存在する意味を考えた時に、民間の力を借りながら 私たちの身近な森を元気にしていくには公的な支援が入りにくい、民間の小さな面積の集まりである森林こそ 一番何とかしなければならないとの想いからです。

与えられた制度では 既にまとまりのある(公的な)森林の広い面積しか認められなかった事、又、クレジットを利用して頂く側も 大企業でないと参加できず、出来るだけ身近に利用して頂ける制度にしたいとも考えました。

CO2という見えないものを取り扱うのは、ちょっと胡散臭そうに思えるかもしれませんが、本音は山の事をあきらめたり、興味のない森林所有者やその跡継ぎの方と、川下の皆さんをつなげる為の「森や木の見える化」の為のひとつの取組みと、私は思っています。

町の人や若い人・企業などから興味を持ってもらえる事は、山の人にとって 少し森林が「キラキラ」見えてくるんですよね。

kikitoに関しましてはHPをご覧頂ければと思いますが、林業→建築までの地域の木に関わる業種で構成されています。公的機関ではないところがミソです。

2.公共建築物等木材利用促進法

通常、大きな公共工事はゼネコンが落します。設計も大きな事務所です。
すると、先に価格が決まり、下請け・孫請けに渡り 川下から利益を引いていくと 木材はたたかれ  その木材を生産している「地域の森」には 真っ当な価格が還らないという事になります。
入札で落してから、建築業者は「地域材」を探しまわります。普段、大量に流通ストック・乾燥されていないものを短期で集めるのは至難の業です。地域の事情を考えると公共工事に使われる木材は、住宅建築とは違う寸法やスペック、民間の流通に支障をきたす発注などという問題も起こりかねません。

地域の木や日本の木は使われるけれども、例えば使う為に伐採した跡地に植林をする為の資金も残らないという事も起こります。地域で営みをしている製材所や大工、工務店、設計事務所も通常はカヤの外です。使えばいい というものではなく、地域の木を使うという事は、その森林や地域の人、伐り旬や乾燥期間など 今までの公共工事とは違う根回しの必要性を感じていましたところ、地元で しかも 私の母校で 全国に誇れる「公共工事」が行われました。

3.多賀中学校ランチルーム

設計は 多賀町のいくつかの設計事務所の協同体「設計同人社」です。大きな設計事務所でなくても、こういう形で地元の公共工事に参加できる資格を作られています。多賀で暮らしておられる設計事務所の方のプランは、とても「地域思い」だということを ひしっと感じました。

1.木材に関しては、町からの支給という形をとり、入札からはずした事。
 この事により、町として守るべき地域の森林・林業にしわ寄せをせずにすみます。

2.地域の木が出せるかという事を森林側と話をつけて プランや工程を組んだこと。

3.建築家としてすばらしいと思ったのが、地域の木材で地域の大工さんにも加工できる工法を考えられたこと。

150×180×2M の木材を基準とし、かつ構造用合板の大きさに合わせた寸法でローコスト・ロングスパンが可能な「すだれ工法」を考えられました。町の予算 つまりは 自分たちの支払っている税金も有効に活用する事にも配慮されています。

県立大で多賀木匠塾をされている「設計同人社」中西先生を中心に「設計事務所」の仕事の範囲を超えて、取組まれている姿勢には、本当に感動たしました。
中西先生とは、湖東流域森林づくり委員会でご一緒です。
今回、このランチルームのCO2固定認証を受けようと提案されたのは、「設計同人社」とkikitoのメンバーでもある Aサイトさん。木材も kikitoのメンバーである大滝山林組合の木です。

大量に安定供給できない事が「日本の木を使わない理由」とされて、林業に変革を求められているのですが、建築側にも変わる事を求めてもよいのではないでしょうか。ちなみに、木造住宅でハウスメーカーがしめる割合は、たった15%ほどで、後、85%は 地域の工務店です。地域で公共工事が年間どれほどあるのかという事を考えても「建築からの歩み寄り」も必要だと、kikitoで「森林側」の皆様の実状を聞き、敵(笑)と見られがちな「建築側」も感じております。林業の方が、森林→原木市場までの事しか考えていなかったらこういう関係は築けなかったことと思います。 


びわ湖の森を元気にするコピーペーパー アマゾン発売

2012-06-30 | kikito など

今から、8年前、はじめてつくったEA21の環境活動レポート。その冊子の裏に、こんな事を書きました。

その後、この冊子が環境コミュニケーション大賞を頂き、ウッドマイルズの本に少し文章を書かせて頂いた、その出版パーティーでの出会いから、kikitoへの活動につながっています。そのkikitoで間伐材を直接、山主さんから買い 製品になったのが 写真のコピー用紙です。

実際には、私はほとんど動いていないのだけど、願えば、かなうものである。と。
kikitoのメンバーに感謝感謝です。
そして、昨夜、アマゾンでご購入頂けるようになりました
とりあえず、UPした状態ですが・・・ぜひ、ご覧 じゃなく ご購入下さい

 アマゾン

グリーン購入、日本の森林を元気にする紙としは 結構 安いです。
500枚×5冊 2150円 安い訳は、最後に・・・w

「びわ湖の森を元気にしたい」と始まったkikitoの活動。
今、日本の森の木の価格は安く、手入れをしたり間伐したり植林したりする資金が、森林に還っていません。「安い」というのは、消費者にとっては「比較」でしかないのだけれど、実際に必要なコストに全く見合っていないのです。

紙の原料となる「木材」ですが、海外で違法な伐採により安く製造されたコピー用紙が日本の流通価格を下げています。国と国との約束で海外からの輸入もしなくてはならないらしく、私たちが大切にしたい「びわ湖」の水と木を守る「森」の為にはどうすれば良いのか考え行動した結果が、この「木になる紙のkikitoペーパー」になりました。

 紙は、大量生産、木のチップが安定供給されないと、流通価格に合いません。
私たちの地域で森林を守りながら1つのブランドをつくるのは、森を壊すことにつながります。
そこで、既に日本の間伐材を使った(株)ファイルさんの「木になる紙」に、びわ湖の森の間伐材を一部使って頂く事で、お買い求め頂きやすい価格で提供できるようになりました。

箱の左上に貼ってある白い紙がびわ湖の森の木の証明です。

私たち自ら、通常の価格より高く間伐材の買取をして、直接、森林の持ち主さんにお支払いしています。

こんな風に、軽トラで運んでこられたり

手で降ろしたり・・・。このおじさんは、毎回コンスタントに山から降ろして運んできて下さいます。
つまり、山の手入れがされる面積が増えている事になります。
紙になるチップにするには、細い木や短い木もOKなので 林業専門の機械がなくても 一般の個人の林家でもなんとかなるのですが、そりゃ山の斜面を降ろしてくるので、大変なんですよね。


で、その場で重さを計り( たまたま、弊社の土場横が土取場で、計量機があり借りています)
その場で、キャッシュで支払います。働いた結果がすぐに見えるのは、悪くない。
皆さん、うれしそうです。銀行振込に必要な資金や手間が、kikitoのような団体には大変なので、コストも押さえ、みんな うれしい 近江商人の極意ですな(笑)

この間伐材が入った紙をつくって、kikitoで販売をして、その資金で 又 森林の手入れがすすめてもらえるという「森と人をつなげ、森林の循環ができるコピー用紙」ができたのです。

目的は、間伐をすすめてもらうことと、苦労が報われない(お金にならない)為に 自らの森林に感心がなくなった 地域の山主さんや その次世代の担い手の人にもう一度、森林に目を向けてもらうこと。
山主というと、すごい! と思われる人もいますが 一人が所有している面積はすごく少ない。
そんな、小さな面積を持っている多くの人の山が集まって、森になっているのです。

色々な森林の認証制度もあるけれど、それには資金や人出も必要で、まとまりのある取組みを公的機関ではない私たちがする事は、現実的には不可能に近い。
又、一度 伐ったら植林や草刈り、間伐に資金が必要で 何十年後にしかお金に変わらないのに、それを個々の山主さんに経費の負担を頼むことは、現時点でできない。 

認証をとる事で生まれるメリットと、私たちの地域の森林事情でできる事を考えると コストアップになり 紙が売れず 森林整備が進まない事はさけたい。

だけど、ちゃんと顔も その木が伐られた森も知っている関係で、消費者の方に納得して使って頂ける情報も出していきたいと思っているのです。それが、小さな地域のメリットだしね。

最近、更に製紙用チップの買取価格を下げるという通達がありました。日本の森林側に価格を決めるインセンティブはありません。輸入材の7割の価格なのに です。
それでも、山主さんに還す 買取価格は変えないと 主要メンバーは腹をくくったそうです。

安いコピー用紙と比べると、ほんの少し高いですが 出来るだけ皆さんにお求め頂きやすい価格設定にしています。それは、利益というよりも 少しでも広く多く使って頂くことで 山を手入れする面積を増やしたいとの思いのからです。

個人的には、安すさ競争をすると 自らの首を絞めることにつながる事と 全国的に木材の価格が下がる事は山が手入れされない事、丁寧な木の生産されない事につながり 建築業としては複雑です。

又、最初に書いた「わが社」のチップは、まだ紙になって 私のところに戻ってきていません。
国産の木の製材時に出る端材で出来た同じ用途に使うチップでも 更に すごく安いのです。
で、チップの生産はやめました。つまり、お金に変わっていないという事になります。
( 敷炭の炭にしていますが・・・)
廃棄物処理業者から出る木のチップは、既に 処理費をもらった上でのチップ価格ですが
丸太を購入している製材屋は、端材の部分にもお金を払っているのです。そこが、お金に変えられないと、丸太も高く買えないという悪循環がうまれています。

燃やしてはいけない、廃棄にお金がいる、使える所がないとなると 製材屋は大変です。
私たちの地域では、地域の木を活かせる(そこそこの価格で買える)製材屋が、ほとんどなくなってしまいました。本来ならば、その端材部分を如何にお金に変えるかか やっとの利益だったのにです。

廃棄物処理法やグリーン購入、間伐材のみの推進が 通常の木材生産のコストに影響しているのです。これも、縦割りの弊害、川上と川中 川下とがつながっていないからなでしょう。んー。

実は、省エネ政策で その日本の木材を活かす建築方法が、できなくなりつつあるという問題も出てきていますが、これは また・・・。

ついでに、今は どこでも見られない最初の環境活動レポート。
ほんと、この時は 間伐材入りの紙を手に入れるの 大変だったのよねー。
進歩 進歩。