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多様な時代に重視すべき社員の「あり方」(Being)

2021-03-22 17:36:00 | 人事制度

 以前のブログで、「これからの時代組織は自律分散型の組織構造に変容していかなければならない」とのべました。

「アフターコロナの組織のあり方と人事制度」

しかし、その変容とはいわいる人事制度などの組織のルールや制度といったハード部分を作り替えれば、できるわけでなく、むしろそこで働く人材(ソフトの部分)がかわらなければ決してうまくいきません。逆に、働く社員の意識構造にあわせて、その自律的な働き方を邪魔しないように、制度のほうもその発達段階に応じて徐々に変化させていくと考えたほうがいいいでしょう。

 

これまでの人事制度は、例えば目標管理やコンピテンシーなどを活用することはかなり効果がありました。大量生産大量消費を前提とした時代のピラミッド型組織において、過去の経験から会社や上司がもっていノウハウを社員に伝え、ある程度決められたやり方で働いてもらうことで、かなりの確率で予想された成果を上げることができたからです。ただ、社会全体が多様化し、これまでにないスピードで変化が起こっている現代において(もちろんすべてがそうだとは言えませんが)その効果がでにくくなってきているのです。

目標管理は上司と部下で面談を行い、今期の達成すべき目標を会社目標に沿って設定します。その目標を達成するために部下は1年間活動し、上司はこれを支援します。しかし、今の組織では1年間も同じ目標を追い続けることで、企業の業績に本当に貢献できるでしょうか?1年後の目標などを具体的に立てることが不可能になってきているのです。

また、コンピテンシーでは、業績の高い社員の行動特性を抽出し、その特性を他のメンバーも実施することで全体のレベルをあげようというものです。これも、職務内容が皆同じで、そのプロセスが変化しない環境なら効果はありました。しかし、今は一人ひとり担当する職務は多様で、しかもそのプロセスも常に変化が起こります。「業績を必ず出す行動特性」を抽出すること自体が難しくなっているのです。

もちろん、今後も、職種、仕事の内容や本人の等級などによっては、これからも有効な手法である場合も当然あります。例えば、入社から3年以内の新人を育成、評価する場合はどちらも有効な手法でしょう。しかし、多くの企業では、ある程度職業経験をつんで、複雑な業務にたずさわるようになると、このような定型的な評価は限界がくるようになっているのではないでしょうか。

このように、人材育成・評価において、これまでの「決められた目標にむかって努力する」「きめられた優秀モデルの人材になるように具体的なスキルを磨く」というだけでは、自律分散的な組織では対応できなくなってきているのです。では、会社は社員のどのような点に注目し、育成・評価すべきなのでしょうか。

これからはBeingといわれる、その社員の「あり方」(意識・思い・人生哲学・視座など)を会社はもっとも意識すべきなのです。

 

 

 

Beingの一つの指標に「視座」があります。今日や明日のことしか考えずに仕事をしている人が、成し遂げることができる仕事は、限られるでしょう。世の中にいいインパクトを与えるような業績をあげるリーダーは、自分個人のことよりも、組織全体はもとより、地域や社会全体にとって何が最も良いことかという広い視野で行動しています。この人間的な成長がないまま、Doing、Knowingだけを伸ばそうとしても、ベース(Being)が狭ければその上にあるDoing、Knowingを高めることはできません。これは逆三角形や長方形になることはないのです。

これからの組織は、そこに所属しているメンバーのBeingをしっかりと把握し、その高まりに応じた役割を与えていくべきです。また、Beingいかにして高めていくか、その経験と気づきの成長の場をどのようにつくっていくかを重視すべきなのです。特に自律分散型の組織を目指す企業にとっては、人事制度や社員育成においてBeingを重視した仕組みを作っていかなければならないでしょう。