アフターコロナの組織のあり方と人事制度
(有)人事・労務 社会保険労務士の畑中です。人事制度構築のお手伝いをさせていただいている中で、この1年、組織の在り方、そして個人の働き方があきらかに大きく変わってきています。
いろいろな要素が考えられますが、主に次のような理由といえるでしょう。
・テクノロジーが発達し、場所や時間を気にせずに働くことが可能になってきた
・以前であれば一部の経営トップなどにしか入らなかった情報がほぼ無料で誰でも得ることができるようになってきた
・個人が情報発信したり、個人同士で情報共有することができるようになった。
・単純な仕事はAIや機械でカバーできてしまうことが多くなってきた。
・個人(特に若者)の働くことへの意識が、これまでの利益追求型(資本主義型)から、社会や地域への貢献へと変化してきた。
このような変化が徐々に進んできていた中で、2020年の新型コロナパンデミックがトリガーとなり、一気に組織の在り方や働き方が変化しました。具体的には以下のようなことが起こり、この傾向はさらに続くのではないでしょうか。
・テレワークやワーケーションといった場所を選ばない働き方の増加
・副業(複業)の増加
・フリーランサーなど、雇用にとらわれない働き方の増加
・オフィスの縮小・分散化
・ギグワーカーの増加
・一部企業の独占化(巨大化)と地域企業の増加
・株式会社以外の組織の増加(NPOや社団法人、ワーカーズコープなど)
このような中で、組織の在り方は、単に利益を求めるだけの集団ではなく、地域や社会のことを意識し、その課題を解決していくために地域社会と結びつきながらイノベーションを生み出していくことが求められる時代になってきています。そして、その組織は、明らかにこれまでのピラミッド型組織からの変容が必要になります。それが「自律分散型」の組織なのです。自律分散型組織とは、
・多様な価値観を認め、一人一人の個性や能力を十分に発揮しながらも
・組織として強いつながり(関係性)をもつ
組織のことを言います。
「ティール組織」(フレデリック・ラルー著 栄治出版)でも述べられているとおり、組織には発達段階があります。ここで述べられていることは、細かい点はさておき、日本の中小企業にもあてはまります。
昭和の行動経済成長の時代の日本の組織は、その多くが、アンバーからオレンジ的な組織だったでしょう。典型的なピラミッド型組織です。大量消費大量生産を重視し、欧米にキャッチアップしようとする日本は、非常にこの組織マネジメントがうまく機能したといえます。バブルがはじけて平成に入り、IT企業などが多くではじめたころから、フラットでボトムアップを重視するグリーン企業も見られるようになってきました。しかし、組織が大きくなってくる過程や時間が経過するなかでグリーン組織はオレンジやアンバーになってしまうことも少なくないようです。結果として、コロナ前の日本の企業はいまだにオレンジ的要素が最も多く、それにアンバーやグリーンの要素が混じっているような組織構造をしている企業が多いのです。
もちろんすべての企業がティール型になるのがいいわけではありません。業種や地域、そしてなによりその企業の組織風土や社員の意識構造によって、もっとも適した組織構造が1社1社違うはずです。また、同じ一つの組織の中にも、単純にすべて「ティール」だとか「オレンジ」だといってしまうことはできず、実際はティール的要素の強い組織にもオレンジ的な部分が含まれていたり、またその逆もあるのです。
しかし先ほどみたように、世の中全体の急激な変化の中で、どのような組織であっても、その組織構造を変容させていく必要性があり、その方向性は地域や社会のことを意識し、その課題を解決していくために地域社会と結びつきながらイノベーションを生み出していく自律分散型(いわいるティール組織に近い)の組織であることは間違いないでしょう。
では、自律分散型組織の人事制度とはどのように構築すればいいのでしょうか。今からスタートするベンチャー企業なら、いきなりフラットで書籍「ティール組織」にでてきているような人事制度に挑戦することはできるかもしれません。しかし、すでに組織として(おそらくピラミッド型の組織)歴史があり、人事制度がすでにあるような企業にとっては、どのような変容の過程をたどるかも重要になってきます。既存の企業がどのような人事制度を構築していくべきか、事例なども含めて、またご紹介できればと思っています。
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