深みのある人間ドラマだった・・・『守護神』(2007年6本目)

アメリカの沿岸警備隊の海難レスキュー隊員の物語。

深みのある見応えがある映画だった。

迫力ある映像、師弟愛、友情、恋愛、夫婦間の問題、世代交代・・・
まさにハリウッド映画の十八番ともいえる内容。

沿岸警備隊という設定は目新しいが、
Aスクールと呼ばれるレスキュースイマーを養成する学校で
若い訓練生が厳しい訓練を経て一人前に成長していく過程は
軍だったり警察だったりと舞台こそ違うが
これまでも多くのハリウッド映画で使われてきたストーリー展開。

でも、そんな奇をてらわない作りが、
逆に骨太でハートフルな人間ドラマを作りだしていた。

この映画、『守護神』などという邦題がついたせいか
邦画の『海猿』のような映画と勘違いされたりもしているが
似ているのは海洋レスキューという設定だけ。

ティストはまったく違う映画である。

レスキュースイマーの訓練でも、エリートを育成するというより
この厳しい訓練を終了しない者に、救助などできないという考えが前提だ。

さらにここを修了してもエリート部隊などになるのではなく、
それほどいい待遇でもなく、日々のハードな救助活動に従事するのである。
だから訓練の内容もとてもハードで現実的なものが多い。

訓練生を教える教官のベン(ケビン・コスナー)も
『守護神』という邦題から連想される神がかった存在ではない。

「救助を求める人が目の前にいるのに、自分は何も出来ない。
波にもまれ、苦しみ悶え、絶命していく様を、ただ見ているだけ」・・・

・・・そんな自然の力の前で

「自分が救うことができることなど、ほんの一握りしかいない」

「救った人間の数より、救えなかった人間の数を覚えている」
と自分の非力を嘆き、また私生活では
夫婦間の問題で悩む人間くさい男である。

この役にケビン・コスナーの渋く哀愁を感じさせる雰囲気がよく似合う。

さらに救助シーンも豪華客船の沈没などという大掛かりな設定ではなく
もっとも海難事故の対象になりやすい小型船やカヌーなどからの
乗員救出のシーンだ。

しかしこれが豪華客船の沈没シーン以上に
嵐の海の怖さを味あわせてくれるからスゴイ。
もうこの先二度と船に乗るのが嫌になるくらいの恐怖感がある。

救助活動にあたるレスキュー隊員の演技にも大袈裟な感じはない。

映画の宣伝では日本人好みの『死んでも守り抜く』の
キャッチコピーだけが一人歩きしているけど、
この言葉は神の言葉でも、スーパーマンの言葉でもない。

自然の前での自分の力を知っている伝説のレスキュースイマーが
「救えると信じた人間を守る」時の覚悟を決めた重みのある言葉だ。

ベンが人生最期の救助活動に出動し
ジェイクの手をはなし自ら落下して最後の救助を行なうラストシーン。

ベンは自分が救うことができる人間を死んでも守り抜いた

大仰なセリフを残すわけでもなく
静かに海の中へ消えていったベン。

きっと守ったジェイクが、
またいくつもの命を救ってくれることを願ってだろう・・と
ここまでの展開から、自然とそんな連想をしたくなる。


秋に葉が散り、春に新芽がでる・・・・
まるで自然の摂理のような感じの世代交代だった。

淡々としているからこそ、より深いものを感じる。

☆ケビン・コスナーの私服のアメリカンカジュアルの着こなしも渋くてよかったな~

『守護神』公式サイト

にほんブログ村 映画ブログへ

※この映画はハリケーン・カトリーナの際の
沿岸警備隊の救助活動にインスパイアーされて作られた作品だという。
映画の中で海軍の兵士に馬鹿にされるシーンがあったから
アメリカ国内で軍より格下的な見方がされてい<るかな?
だとしたら劇中の歌の中で海軍さえも救助するといった内容の歌詞
もあったから沿岸警備隊のアピールになるだろう。







コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )
« 第30回日本ア... 今月は映画ブ... »
 
コメント
 
 
 
誇り高い職業 (メビウス)
2007-02-20 22:08:57
こんばんわ♪TB有難うございました♪

外国・・特にハリウッド映画ってこういう人命救助を扱った作品の力の入れようは抜きん出ているように思えるし、個人的には海猿よりも面白かったです。
アメリカで消防士などが『将来なりたい職業』の上位に常にあると聞きますし、やはり他の国よりも人の命を救う職業を誇り高いものと思っているんでしょうね。
 
 
 
人命救助 (傷だらけの天使)
2007-02-20 22:55:18
メビウスさん>
コメントありがとうございます。
そうですね。
アメリカの場合は自己犠牲の精神というより
『自分自身の使命感』というものを強く感じます。

けっこう海猿と比べられてますが
形が似ていてもピザとお好み焼きは
お互い何の関係もない別料理って感じです(笑)

自分もこちらが好みです。
 
 
 
残念ながら~ (cyaz)
2007-02-21 17:28:00
TBありがとうございましたm(__)m
せっかくTB戴きながら僕の不注意で記事を飛ばしてしまいました><
久しぶりにケビン・コスナーの男くさい映画が観れたんですけどね~
 
 
 
残念です (傷だらけの天使)
2007-02-21 22:48:08
cyazさん>
いや~、タイトルだけだなーと思っていたのですが
これから書かれるのかなと思ってTBいたしました。

いつも自分の気がつかない部分が書いてあるレビューなので
読むのを楽しみにしています。

この映画のケビンは男くさい映画という表現がぴったりです。
 
 
 
こんばんは (ichi-ka)
2007-02-21 23:09:18
TBありがとうございます。
ジェイクの成長が観ていて嬉しかったです。ベンもジェイクを誇りに思い、安心して後を任したんでしょうね。
ケビン・コスナー、渋い男の魅力がたっぷりでしたね。
 
 
 
こんばんは (傷だらけの天使)
2007-02-22 00:04:38
ichi-caさん>
ジェイクがケビンと心を通わせるながら成長していく姿は良かったですね。
その男同士の友情のティストがアメリカ風味であるところが自分は好きでした。
ケビンはこういう役が似合う年齢になってきたので
これからすごく楽しみです。
 
 
 
TBありがとうございました (ミチ)
2007-02-25 09:52:13
こんにちは♪
「海猿」に似ていて萎えたという方もたくさんいらっしゃったようですが、テイストが違うというご意見を拝読して嬉しくなりました。
>救った人間の数より、救えなかった人間の数を覚えている
救助に関わる方というのはそういうものなのでしょうね。
久しぶりのケヴィンにピッタリの役柄も嬉しかったです。
 
 
 
コメントありがとうございます (傷だらけの天使)
2007-02-26 22:32:11
ミチさん>
「海猿」と設定が同じですからそう思われるんでしょうね。

でも同じ太平洋戦争を描いても『男たちの大和』と『硫黄島の手紙』が違うように
味わいはかなり違いますね。

ケビンはいい味がでる年代になってきたように感じます。
これからもアメリカの渋い男の役を演じてほしいものです。
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。
 
 
<