一郷一会・関東周辺100名湯プロジェクト

一郷一会が威信をかけて ^^: 選定。センター系、スパ銭・・・ お湯さえよければどこでもOK! 料金上限1,200円也。

□ 楽天地天然温泉 「法典の湯」 (元100湯)

2005-12-25 21:16:30 | 千葉
近年、関東平野部でつぎつぎと掘削されている温泉のなかで、とくに多い泉質が食塩泉だ。その多くは、地中に封じられた太古の海水を汲み上げる”化石海水型温泉”といわれるもの。海水の成分濃度は35g/kg以上あるから、それを起源とする化石海水型温泉もかなり濃厚な高張性強食塩泉となることが多い。
数万年から数百万年も地中に封じ込まれていたといわれる化石海水型温泉は、長い年月のあいだに成分が変化し、海水とは異なる性状をもつようになる。このあたりのハナシはやませみさんの「温泉の科学」に詳しい。

関東南部の地熱勾配からすると、掘削1,000mで25℃、1,500mで40℃の泉温になるという。このあたりでは1,200~1,500mくらい、泉温40℃弱で湧出するケースが多い。
わりに湯量も豊富なので、非加温ないしは微加温、非加水のかけ流し浴槽の設置はさほど困難ではない。実際、このあたりの温泉施設はたいてい源泉槽をもっていて、人気を集めている。
また、濃い食塩泉は濾過循環や希釈をかけても温泉らしさ(というか塩気)がわりあい良く残るので、人口密集エリアの大規模温泉施設向きの泉質だと思う。

よく、「地中でじっくりと熟成され、こんこんと自然湧出するお湯だけがホンモノの温泉、深層ボーリングと動力でむりやり引き揚げた化石海水など温泉ではない」というドラスティックな意見を耳にする。自然湧出泉のすばらしさはたしかに認めるが、化石海水型温泉も捨てたものではない。塩気が強くよく温まるので、万人にわかりやすい温泉といえる。
深層ボーリング技術のなかった時代には、化石海水型温泉にはまず入れなかったし、濃厚なものは深層地下水の補給も少ないので、賦存量(地中に貯えられている量)を汲み上げてしまえば枯渇する運命にある。その意味で、高濃度の化石海水型温泉はとても貴重なもので、現代人のみが享受できるたいへんな贅沢だと思っている。

市川市あたりから江戸川沿いに遡っていくと、大谷田、保木間、流山、吉川、柏(ゆの華、湯元)、野田、春日部など、強食塩泉が目白押しだ。総計20g/kgを越えてくるような濃厚な成分をもつこれらの温泉は、深層地下水の侵入の少ないピュアな化石海水型温泉とみることができる。
化石海水型というと塩気の強さだけがとりあげられることが多いが、良質なやつは、土類(Ca、Mg)、鉄分、アンモニア、ヨウ素(I)、臭素(Br)、重曹などを豊富に含んでいて、これらのブレンド具合を楽しむのが醍醐味だ。

そんな化石海水型温泉の集大成ともいえるような良泉が、ここ「法典の湯」。さして特徴のないつくりのスパ銭ながら、成分総計=32470mg/kgの化石海水型強食塩泉をかけ流す露天源泉槽が白眉だ。
黄茶色で透明度20cmのにごり湯は、金気臭と粘土系アブラ臭とアンモニア臭と臭素臭とヨウ素臭が渾然一体となって匂い立つ。圧倒的な強鹹味の裏に金気系だし味と重曹味と苦味が潜み、強食塩泉らしい重厚な浴感と温もり感に土類と鉄分によるキシキシと重曹系のツルすべが合わさる浴感は、化石海水型温泉の真骨頂かと思う。
鮮度感も十分で、しっかりとアワつきもある。

お客はこの源泉槽に集結するので、平日か休日の早い時間にじっくりと味わうのがベター。また、温泉ではないが、内湯ゾーンにある高濃度人工炭酸泉は、療養泉規定のCO2=1,000mg/kg以上の炭酸濃度を保ち、皮膚の収斂感と炭酸冷感がはっきりと感じられるスグレもので一浴の価値がある。
料金もリーズナブルだし、温泉好きにはなにかとお楽しみの多いおすすめ湯である。

「法典の湯」のレポはこちら。(関東周辺立ち寄り温泉みしゅらん「掲示板過去ログ」)

Na-塩化物強塩温泉 36.0℃、pH=7.5、208L/min(1,500m掘削揚湯)、成分総計=32470mg/kg、Na^+=11230mg/kg (89.29mval%)、K^+=433.0、NH4^+=9.7、Mg^2+=300.0、Ca^2+=432.6、Fe^2+=7.5、Cl^-=19210 (98.08)、Br^-=133.5、I^-=28.4、HCO_3^-=531.5、陽イオン計=12430 (547.1mval)、陰イオン計=19900 (552.4mval)、メタけい酸=84.7、メタほう酸=10.9 <H17.3.4分析>

文・画像 別働隊@うつぼ