前回『子どものケンカ1―親の責任とは』で書きましたように、自己の行為の責任を理解する能力が備わっていない小学生等が、暴力行為などの不法行為を行なっても、その小学生自身は民事上の賠償責任を負いません(民法712条)。
その代わりに、子どもの親が、子に対する監督義務を怠っていなかったと認められない限り、監督義務者の責任に基づいて子どもの行為に対する賠償責任を負います(民法714条1項)。
では、子どもが中学生や高校生などで責任能力が認められる場合、親は子どもの行った暴力行為などの不法行為の結果について賠償責任を負うのでしょうか?
子どもが中学生以上であれば、自己の行為の責任を理解する能力があるとして責任能力が認められる場合が多く、その場合、子ども自身が、自己の不法行為の結果について民事上の賠償責任を負わなければなりません。
そして、子ども自身が民事上の賠償責任を負う場合、親は民法714条1項(責任無能力者の監督義務者等の責任)に基づく賠償責任を負いません。
ところが、中学生や高校生などの未成年者には通常、収入や資産がないことから、子どものみが賠償責任を負うとすると、被害者の救済に欠けてしまう可能性があることから、子とともに親も賠償責任を負うべき場合があるのではないかということが従来から議論されていました。
そして、この点、最高裁(昭和49年3月22日判決)は、未成年者である子が責任能力を有する場合であっても、親に監督義務違反が認められ、親の監督義務違反と子の不法行為によって生じた結果との間に「相当因果関係」が認めうるときは、親も民法709条(一般的な不法行為)に基づく不法行為が成立し賠償責任を負うとの判断を示し、現在もこれが裁判実務における確立した考え方となっています。
中学生や高校生の暴力事故に関する比較的最近の裁判例をみますと、親に監督義務違反が認められるか、また、監督義務違反と結果との間に相当因果関係が認められるかという点については、当該暴力行為を行った子どもの過去における問題行動の有無・程度、子どもの問題行動を親が知っていたかどうか、知っていた場合に親が当該暴力行為の結果を予見することが出来たといえるか、親が子に対しどのような指導監督を行っていたか等の事情が考慮され、個別具体的な判断がされています。
一方で、子どもが、過去に喫煙・飲酒、不良交友、暴力行為、いじめ行為などの問題行動を引き起こしていて、その問題行動を親が学校からの指摘等によって十分に知っていたことから、親は子どもの暴力行為の結果を予見できたとして、親の監督義務違反を肯定した裁判例も見受けられます(親の監督義務違反を認めた裁判例として、さいたま地裁平成15年5月27日判決、東京地裁平成16年5月18日判決、前橋地裁平成22年8月4日判決など)
死亡等の重大な結果を引き起こしている場合、親が子どもに日頃、口頭で注意を与えていたとしても、その場限りの指導であって不十分であるとの厳しい判断が示されているケースもあります。
他方、子どもが日頃大きな問題行動を起こしていない場合や、喧嘩などをしたことがあったとしても、学校からの指摘や相手方の親からの苦情等を受けたことがなく、親が事実をよく把握していなかったような場合には、子どもが偶発的な喧嘩をして相手に怪我をさせてしまっても、親はそのことを予見することが出来なかったとして、親の監督義務違反が否定され賠償責任が認めなかった裁判例も見受けられます。(親の監督義務違反が否定された裁判例として、神戸地裁平成25年4月18日判決、東京地裁平成16年11月24日判決、水戸地裁平成22年8月5日判決など)
中学生や高校生などは、小学生と違って、通常はある程度しっかとした判断能力が備わっていることから、中学生にもなれば自分のやったことは自分で責任をとるべきことが基本となります。
このような考えから、子どもが中学生や高校生などの場合には、子どもが小学生の場合と比較して、喧嘩などの結果に対する親の責任は限定的に考えられています。
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その代わりに、子どもの親が、子に対する監督義務を怠っていなかったと認められない限り、監督義務者の責任に基づいて子どもの行為に対する賠償責任を負います(民法714条1項)。
では、子どもが中学生や高校生などで責任能力が認められる場合、親は子どもの行った暴力行為などの不法行為の結果について賠償責任を負うのでしょうか?
子どもが中学生以上であれば、自己の行為の責任を理解する能力があるとして責任能力が認められる場合が多く、その場合、子ども自身が、自己の不法行為の結果について民事上の賠償責任を負わなければなりません。
そして、子ども自身が民事上の賠償責任を負う場合、親は民法714条1項(責任無能力者の監督義務者等の責任)に基づく賠償責任を負いません。
ところが、中学生や高校生などの未成年者には通常、収入や資産がないことから、子どものみが賠償責任を負うとすると、被害者の救済に欠けてしまう可能性があることから、子とともに親も賠償責任を負うべき場合があるのではないかということが従来から議論されていました。
そして、この点、最高裁(昭和49年3月22日判決)は、未成年者である子が責任能力を有する場合であっても、親に監督義務違反が認められ、親の監督義務違反と子の不法行為によって生じた結果との間に「相当因果関係」が認めうるときは、親も民法709条(一般的な不法行為)に基づく不法行為が成立し賠償責任を負うとの判断を示し、現在もこれが裁判実務における確立した考え方となっています。
中学生や高校生の暴力事故に関する比較的最近の裁判例をみますと、親に監督義務違反が認められるか、また、監督義務違反と結果との間に相当因果関係が認められるかという点については、当該暴力行為を行った子どもの過去における問題行動の有無・程度、子どもの問題行動を親が知っていたかどうか、知っていた場合に親が当該暴力行為の結果を予見することが出来たといえるか、親が子に対しどのような指導監督を行っていたか等の事情が考慮され、個別具体的な判断がされています。
一方で、子どもが、過去に喫煙・飲酒、不良交友、暴力行為、いじめ行為などの問題行動を引き起こしていて、その問題行動を親が学校からの指摘等によって十分に知っていたことから、親は子どもの暴力行為の結果を予見できたとして、親の監督義務違反を肯定した裁判例も見受けられます(親の監督義務違反を認めた裁判例として、さいたま地裁平成15年5月27日判決、東京地裁平成16年5月18日判決、前橋地裁平成22年8月4日判決など)
死亡等の重大な結果を引き起こしている場合、親が子どもに日頃、口頭で注意を与えていたとしても、その場限りの指導であって不十分であるとの厳しい判断が示されているケースもあります。
他方、子どもが日頃大きな問題行動を起こしていない場合や、喧嘩などをしたことがあったとしても、学校からの指摘や相手方の親からの苦情等を受けたことがなく、親が事実をよく把握していなかったような場合には、子どもが偶発的な喧嘩をして相手に怪我をさせてしまっても、親はそのことを予見することが出来なかったとして、親の監督義務違反が否定され賠償責任が認めなかった裁判例も見受けられます。(親の監督義務違反が否定された裁判例として、神戸地裁平成25年4月18日判決、東京地裁平成16年11月24日判決、水戸地裁平成22年8月5日判決など)
中学生や高校生などは、小学生と違って、通常はある程度しっかとした判断能力が備わっていることから、中学生にもなれば自分のやったことは自分で責任をとるべきことが基本となります。
このような考えから、子どもが中学生や高校生などの場合には、子どもが小学生の場合と比較して、喧嘩などの結果に対する親の責任は限定的に考えられています。
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