今回は、学習塾や家庭教師の契約において、合わせて「関連商品」の販売契約がある時の解約について、整理してみたいと思います。
「関連商品」とは、サービス提供を受けるに際し消費者が購入する必要がある商品として政令で定める商品をいい、学習塾や家庭教師のサービスでは以下のような商品がこれに該当します。
・書籍(教材を含む)
・カセットテープ、CD、CD-ROM、
DVD等
・FAX、テレビ電話装置
商品が、消費者に対するお勧め商品(「推奨商品」)とされている場合、以下に述べるクーリングオフ等は認められませんので、契約書において商品が「関連商品」とされているかどうか確認することが大切です。
(1)契約期間が2ヶ月を超え、支払総額も5万円を越えるような契約の場合
①クーリングオフについて
前回 述べましたが、契約期間が2ヶ月を超え、かつ、支払総額(入会金や教材費なども含む)が5万円を超えるような学習塾や家庭教師のサービスは特定継続的役務提供というサービスに分類されています。
そして、消費者は、特定継続的役務提供に該当する学習塾や家庭教師のサービスに関する契約については、契約書を受領した日から8日間の間(契約書の受領日を含めて数えます。)、書面によりクーリングオフすることが出来ます。
この場合、消費者は、「関連商品」の販売契約についても、契約書を受領した日から8日間、書面によりクーリングオフすることが出来るとされています(特定商取引法48条2項)。
※契約書でクーリングオフが出来ないと定められた消耗品は除きます。
消費者は、「関連商品」の販売契約をクーリングオフした場合、商品を事業者に返還することにより(返送料は事業者が負担)、「関連商品」の代金全額の返金を受けることが出来ます。
②中途解約について
次に、前回 述べましたとおり、特定継続的役務提供に該当する学習塾や家庭教師のサービスに関する契約については、仮に、クーリングオフが可能な期間が経過したとしても、消費者は、一定の金額の支出を負担することにより、契約を中途解約することが出来ます。
この場合、消費者は、「関連商品」の販売契約についても、中途解約をすることが出来ます(特定商取引法49条5項)。
ただし、中途解約をする場合、消費者は、商品を返還する際に、商品の通常の使用料相当額を上限額する金額を負担しなければなりません。
※減価額が使用料相当額を超えるときは減価額が上限額となります。
この点、使用料相当額はどのように算定されるのか問題となりますが、具体的にみるならば、例えば、書籍の場合「包装を開封しただけでは商品価値は減少しないが、書き込みをすると商品価値が著しく減少する。一般的には、消費者は書き込みをした冊数の価格を負担し、書き込みをしていない冊数の価格が返還されると考えられる。」、DVD等のソフトの場合、消費者がダビング等をしたことを事業者が証明できるのでなければ、「使用日数を役務提供期間で日割り計算した割合を商品価格に掛けて使用料を算出する方法などが考えられる」とされているようです(以上につき、圓山茂夫著「特定商取引法の理論と実務[補訂版]」522~523頁参照)。
もちろん、契約書で中途解約の際の関連商品に関する返金額が規定されていて、返金額が上記の考え方に則っているのであれば、消費者はその金額の返金を受けることとなります。
(2)月謝制の学習塾、家庭教師の場合
月謝制の学習塾や家庭教師については、契約期間が2ヶ月を超えるとはいえず特定継続的役務提供に該当しないことから、「関連商品」の販売契約についても、クーリングオフや中途解約に関する特定商取引法の規定は原則として適用されません。
ただし、受講料は月謝制とされている学習塾や家庭教師であったとしても、合わせて長期間の学習サービスに対応するような高額な教材を購入しているような場合、実質的に見るならば、学習塾や家庭教師のサービスに関する契約や関連商品の販売契約は特定継続的役務提供に該当すると判断される可能性はあります。
したがって、月謝制の学習塾や家庭教師を解約したが、業者が多額の教材費について一切、教材の返還や返金に応じないというような場合、消費者センター等にご相談されてもよいのではないかと思います。
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