伊勢ー白山 道

集団では無く、社会の中で心身の健康を正しく個人で目指します

「小工」(こだくみ)さんの存在

2013-09-18 11:21:34 | Weblog

伊勢神宮の素晴らしい社殿や、御宮に関係する木造の物を造る宮大工さんのことを、古来から「小工」(こだくみ)さんと呼ばれています。
一般人には小工という敬称を聞きましても、意味が分からない人が多いことでしょう。
外宮に在ります「せんぐう館」(http://www.sengukan.jp/)を見ましたが、神宮の小工さんの技術と誠意には凄いものが有りました。

これから伊勢神宮の遷宮(せんぐう:20年間ごとの社殿の建て替え)が継続するためには、神宮お抱えの小工さんの継続が必要不可欠です
外部からは神官の存在が一番に目立ちますが、遷宮の陰には一般人は気づかない小工さんたちの存在があります。
もし、神宮専属の小工さんがいなくなれば、従来の伝統に正確な遷宮は不可能に成ることでしょう。
社会で浸透する経費節約のための外部委託・アウトソーシング化などは、社殿の造営においては絶対にしては生けないことです。神気の継承にも影響します。
次の遷宮のカギを握るのは、小工さんの継続と継承だと私は感じます。

最高神官であるヒミコが存在した世紀から継承されます、高床式の神明造(しんめいづくり)は、伊勢神宮だけは更に特別で独特な「唯一神明造」(ゆいいつしんめいづくり)と呼称されて、その伝統が引き継がれて来ました。
(意外なことに台湾の神様の祭り場の造りも、その基本に神明造が継承されています)


20年ごとの遷宮により、太陽の日当たりも意識された口伝(くでん:文書にない言葉による継承)の教えが現場には必ず在るものです。
1本の木材でも、木表(きおもて)・木裏(きうら)という木の表面の向かわせ方が意識されています。
伊勢神宮の独特な様式が、小工さんにより継承されています。
江戸時代の古文書では、建物に関する職人の区別は、
手伝<小工<大工<副棟梁<棟梁、とされています。
一般的な小工という呼称は、「大工の手前」という位置づけでした。この呼称が神宮でも昔から使われているとは、「修行」という意味もあるのでしょうが、なかなか厳しい世界を感じます。

昔に奈良の宮大工の作業場に、木材と建造への興味から通ったことがありました。
若い職人などは、「最初の10年間はタダ働きが当然」の厳しい世界でした。休みも殆ど無い様子でした。
神宮の小工さんの待遇は存じませんが、良い職人が育ち継続するには、やはり生活費が重要です。
「唯一神明造」という神宮の伝統を盤石に継続させるためにも、小工さんたちの良い年収が大切だと感じます。

ただ、遷宮という大仕事は、20年間に1度だけです。その間の小工さんのお仕事とは、私の想像ですが、社殿の補修やヒノキの原木の管理かも知れません。
小工さんを絶やさないためにも、国の許可を受けられれば、神明造(全国に需要があります)の職人養成学校や、伊勢神宮と縁ある全国の神社の造営を事業として請け負えば、十分に採算的にも小工さんの組織を維持していけるのではないかと、素人ながらに想像します。

今日の私が言いたかったことは、社会で金属関係のメーカー会社などが製造の現場を外部委託したり、職人の優遇を忘れていたことが原因で衰退することが非常に多いのです。
創業者は「職人上がり」であり、職人を大切にしましたが、3代目となりますと「事務方上がり」となり、経営者が日々会います営業や事務員の待遇を、重労働の現場職人と同等かそれ以上に遇することで、職人の士気が下がって行きます。
職人は、口下手ですから、言いたいことも言えないまま辞めて行くことに成るものです

これと小工さんの世界を同じに論じる気は無いですが、盤石に神宮の伝統を継続するためには、社会で一般的に起こりがちなことも考慮するのが人間の世界では大切だと思いました。
以上のことは、社会における職人の年収と待遇、職務階級の昇格への夢、という視点からの、私が気になる想像の話でした。

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