僕は中学生の頃ある病気で、入院していました。
そこは、養護学校併設で入院しながら学校に
通えることもあって同じ病気の子供が沢山
入院していました。
病気のため基本的に、スポーツは出来ないので、
その病棟ではギターが大流行でした。
Morris派とヤマハ派に分かれましたが、
その当時、チャンピオンなど次々とヒット曲を
出していたアリスが使っていた
Morris派が多かったと思います。
大抵は、定価2万円のW-20か
2万5千円のW-25を使っていた。
中学3年で1番ギターが上手いと
言われていた竹本君や、
僕にギターを教えてくれた
西川先生もW-25を使っていた。
僕も中学生になった時W-25を買ってもらった。、
病棟のお誕生日会などで弾いた。
MorrisW-25
W-20とW-25の違いは、W-20は Martin D28のように
飾りが何も無いのに対して、W-25は、
細いけどボディ周りとサウンドホール周りに
アバロン貝風のキラキラが入っているところ。
材木の違いなどは、中学生の小僧には、
全く分からなかった。
その病院の別の病棟に、
ただ1人高校生の野呂君がいた。
僕は野呂君には、会ったことがない。
僕と同じ中学1年で、野呂君と同じ病棟にいた
川原君が、僕のギターを見て、
「野呂さんのギターは、もっと貝が沢山入っていて、
とても良い音がする」と教えてくれた。
以前入院していて野呂君を知っている山口君から、
野呂君は、六万円のモーリスを持っていると
聞いたことがあった。
さすが高校生、六万円と言えば、
僕のW-25の2倍以上だ。
でも野呂君は、ギターの扱いが乱暴だったらしく、
川原君によるとボディに穴が開いていたそうだ。
それでもいい音がすると。
ある時ギターを弾く野呂君の写真を
見せて貰ったことがある。
そこには、縦にTF Morrisのロゴ、
フレットにはヘキサゴンインレイの入った
ギターが写っていた。
これが噂に聞く六万円のモーリス。
Morris W-60か。
どんな音がするんだろう。
想像は膨らみまくった。
野呂君は絵も上手くてその病棟の食堂には、
野呂君の描いた絵が飾られていた。
Fender STRATCASTERの文字の書かれた
ギターのヘッド部分を描いた絵だった。
その頃はまだコピーモデルばかりで
Fenderのロゴの入った本物のストラトは、
何十万円もして、町の楽器屋に行っても
見ることすら出来なかった。
今でもFender ロゴのギターに思い入れがあるのは、
野呂君の影響だ。
1度も会ったことも話したこともない
野呂君は、僕のヒーローだった。
高校生になり、散々弾き倒して、
ボロボロになった W-25に代わって新しいギターを
買ってもらえることになった。
予算は W-60を遥かに超えて15万円
ぐらいまで出してくれるという。
志望校に落ちてしょげている僕を見るに見かねた親父
が買ってくれると言ったのだ。
Morris W-100にしようかと思ったが、
その頃からうぬぼれていた僕は
「プロになるんだから、これからはエレアコが
必要になる。」
と考え買って貰ったのが、今も愛用のTornade SZだ。
その考えはあながち間違いでもなく、ピックアップ
は交換したものの、今のメインギターとして大活躍だ。
MorrisTornadoSZ
ところが、この大切な愛機トルネードの
ボディが割れる事故が今年発生した。
このトルネードは、Ovationタイプの裏が合成樹脂
表は木材で出来ているため温度変化による膨張率の
違いからボディが割れるということは、よくある
ことらしい。
そうでなくても、ライブにもっていくと、
会場によっては、置き場所がなかったり
異常に狭かったり薄暗くてぶつけたり、
満員電車に持って乗らなければいけなかったり、
で35年間大切にしてきたギターがみるみる
うちに傷だらけになってきた。
それとやはりトルネードはエレアコでアコギではない。
会場によっては、アンプが使えない場合がある。
もう1本スペアが必要だ。
トルネードの修理の間、実家からもってきた
これまた35年ぶりに出すW25を使おうと
思ったが、2万5千円のギターは、現在の自分
には、人前に出せるクオリティーの音ではなかった。
スペアのギターは何を買おうか?
そうだ、野呂君が使っていたW-60がいい。
いまこそ37年前のあこがれのギターを
手に入れる時がきた。
ヤフオクや、中古楽器店を探しまくること
4ヶ月。
ついに憧れのMorrisW-60が我が家に到着!
MorrisW-60