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⚠️ 揺れる台湾『歴史の終わり』のフクヤマが警告した理由 202203

2022-03-10 20:32:00 | なるほど  ふぅ〜ん

揺れる台湾『歴史の終わり』のフクヤマが警告した理由
 Wedge より 220310  野嶋 剛


 ロシアによる侵攻を受けたウクライナ情勢が、地球のほぼ裏側にある遠く離れた台湾を大きく揺さぶっている。

 23年前『歴史の終わり』という論文で自由主義勢力の勝利を宣言した米政治学者フランシス・フクヤマが、ロシアのウクライナ攻撃が始まった直後の2月26日、台湾の大学が開催したオンライン講演で力を込めて語った。

 「ロシアのウクライナ侵略はリベラルな国際秩序に対する外部からの脅威であり、全世界の民主政治体制は一致団結して対抗しないとならない。なぜならこれは(民主体制)全体に対する攻撃だからだ」

 蔡英文総統は米国のマレン元米軍統合参謀本部議長ら会談するなど、ウクライナ情勢に対して動きを見せている

 『歴史の終わり』(三笠書房)は、グローバリズムの影響のもと、世界は民主化と市場化に向かい、歴史の変化は終着点に達する、と論じたものだ。

 本来のフクヤマの議論からすれば、今回のウクライナ出兵は予想外のものであり、民主主義の拡張と経済相互依存が世界を支配するという未来への想像を打ち砕くものだった。

 ただ、フクヤマは2015年ごろから主張を修正し、中国による科学技術を駆使した高いレベルの権威主義体制には成功のチャンスがあり、「自由主義世界にとって真の脅威になる」とも述べていた。

 フクヤマは今回の講演のなかで、台湾に対する中国の武力行使は、近年の国際環境の変化とウクライナ情勢によって「想像できない事態から想像しえる事態になった」とし、ウクライナと比べると台湾は自ら戦う決意が弱いように見えており、「もしも自らのために戦わなければ、台湾は米国が救いにくると期待することはできない」と述べた。これは台湾への叱咤激励であり、警告でもあった。

 台湾の世論調査では、6割以上の人は台湾が侵略を受けた場合は武器を取って戦うと答えている。一方、台湾社会は、世界が心配するほどには、中国の武力行使を不安視しない傾向があった。

 台湾民意基金会の昨年の世論調査では中国による台湾侵攻が将来起きるかどうかについて「そう思わない」と答えた人が64.3%にのぼっている。それは1949年以来、70年以上にわたって中国との緊張関係にある台湾では「現状維持バイアス」が働いているためと見られてきた。

 実際に台湾の自己防衛の決意がどこまで強いか、それは「その日」が来るまで本当のことはわからない。ただ、台湾人がウクライナに自分たちの姿を重ね合わせたことは間違いない。

⚫︎「台湾見捨てられ論」へ懸念を抱いた蔡英文
 象徴的なのは「今日のウクライナは明日の台湾」という言葉で、ウクライナと台湾の運命を同一視するかどうかで、いまも台湾では議論が続いている。

 当初、蔡英文政権は「台湾はウクライナではない。安心してほしい」と打ち消しに走った。「今日のウクライナは明日の台湾」が、世論を揺さぶるためのフェイクニュースだとまで言い切った。

 「米国には台湾関係法があるので台湾は米国の安全保障の枠内だ」「台湾の戦略的重要性ははるかにウクライナより高い」などの意見が、民進党サイドから次々と発表された。

 ウクライナがロシアに攻撃され、米国など北大西洋条約機構(NATO)の支援も得られないまま、あっさりと政権が転覆されてしまえば、台湾社会には、米国が台湾を守ってくれるかどうかに不安が広がり、中国の武力行使に対する態度をめぐり世論が分断されてしまう可能性があったからだ。

 「台湾は安全であり、中国は手出しができない」という認識をできるだけ社会のコンセンサスまで高めていきたい蔡英文政権にとって、好ましい状況ではない。アフガンの米軍撤退のときも「台湾見捨てられ論」が一時広がったが、米国の弱体化が顕在化するほど台湾の安定が揺らぐ構図にある。

 これに対して、世論調査などを手掛ける台湾民意基金会の游盈隆会長は「今日のウクライナは明日の台湾」が広がることを政府が止めようとしたことを「民心の士気が打撃を受けてしまうことを心配したかもしれないが、この議論を意図的にフェイクニュースに矮小化するのは、やり方としては愚かだ。人の心に浮かんだ不安は意図的に膨らんだものではない。ウクライナのような事態が台湾で起きないか真摯に議論するほうがいい」と批判した。

⚫︎ロシア苦戦で変わる風向き
 ところが、ここにきて風向きが変わった。ウクライナ戦線が長引き、ロシアの苦戦が伝わり、世界にロシア制裁とウクライナ支援が広がると、民進党政権は素早くロシア制裁の輪に加わった。

 3月になると蔡英文総統をはじめ、頼清徳副総統、蘇貞昌行政院長が給与1カ月分をウクライナへの義援金に充てることを表明し、蔡英文総統は「台湾はウクライナと共にある」と述べて、ウクライナ問題における台湾の立ち位置を修正した。台湾の義援金は5日間で日本円にして12億円を集めたという。

 台湾では、中国の台湾侵攻に備えて、軍事訓練を受けたいと希望する民間人が増えていると現地の報道では伝えられている。

⚫︎野党はリンケージ論を「利用」して政権攻撃
 野党の国民党サイドは、台湾とウクライナのリンケージ論が、対中関係を重視する同党のメリットになると判断している。

 対中関係を改善した馬英九政権時代に安全保障政策や中台政策を担った蘇起氏は「米国の行動から台湾の将来は分かる。中国の国力はロシアよりはるかに強い。米国はロシアとも対抗したくないのに、どうして中国と対抗するだろうか。米軍が太平洋を越えて台湾を助けにやってくるなど、想像がつかない」と述べて、「米国に台湾は見捨てられる」可能性を示唆した。

 馬英九前総統までが今回、ウクライナ情勢と絡んで記者団に米軍救援に関する見解を問われた時、「米国は、武器を売り、情報をくれるが、兵は出さない」と述べている。台湾の元指導者としてはかなり思い切った発言だ。

 昨今の米国政界がほぼ民進党支持一色で、国民党に対しては冷淡であり、国民党は対米関係の運営で民進党より劣勢を強いられていることも、米国の関与を小さく見せようという国民党のスタンスに関係している。

⚫︎「次期総統」最有力とTSMC創業者、ポンペオ氏が食事
 米国も、中国という競争相手が絡んでくる台湾の問題だけにリアクションは素早かった。皮切りは、やはりトランプ前大統領。

 「台湾は、次の潜在的な侵攻目標になる」

 そのトランプ大統領のもとで国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏が3月2日から5日にかけて、台湾を訪れた。台湾外交部は「長年の揺るぎない友人で、台湾への度重なる武器売却や安全保障をめぐる米政府の支持強化など、台米関係を発展させた貢献者だ」として、訪台を歓迎した。

 ポンペオ氏は対中強硬派として知られ、トランプ政権末期の2020年11月には「台湾は中国の一部ではない。米政府は過去35年間、この政策を守っている」と述べるなど、台湾寄りの発言を繰り返していた。

 関心を集めたのが、政権ナンバー2の頼清徳副総統主催でポンペオ氏との夕食会が開催され、そこに世界最大の半導体製造企業「TSMC」の創業者、張忠謀(モリス・チャン)氏夫妻が現れたのである。

 TSMCが勝負をかけた最新の半導体製造工場を台湾・台南市に立ち上げるとき、当時台南市長だった頼清徳氏はTSMCを全面的にサポートし、モリス・チャン氏と個人的に深い関係を結んだとされる。

 TSMCはトランプ政権時代にアリゾナへの工場進出を米側から頼み込まれて決定している。米国が台湾重視を近年強めている理由の一つにTSMCなど台湾の半導体産業があることは周知の事実だ。24年の米大統領選で共和党の候補の一人と目されるポンペオ氏と「台湾半導体産業のゴッドファーザー」と呼ばれるモリス・チャン氏、次期総統の最有力候補とされる頼清徳氏というマッチングは、政治的想像力を掻き立てられる光景だった。

 一方、民主党のバイデン大統領も黙っていない。

 もともと予定されていたポンペオ氏の台湾訪問よりも1日早く、マレン元米軍統合参謀本部議長らによる非公式訪問団を台湾に送り込んだ。マレン氏は蔡英文総統と会談して「台湾海峡の平和と安定は全世界の利益であり、米国は一方的な現状変更に反対し続ける」と述べた。

 バイデン政権による台湾支持のメッセージであり、トランプ前大統領やポンペオ氏への牽制でもあった。

 「今日のウクライナが明日の台湾」かどうか、すぐには答えの出る問題ではない。
ただ、かつてウクライナで起きた13年から14年にかけての民主化運動「マイダン革命」は、権力に対する抵抗運動として14年の台湾のヒマワリ運動、香港の雨傘運動に素早く波及した。ウクライナや台湾のように、地政学的要衝にある地域では民衆の感情は大きく振れやすく、大国の介入も起きがちだ。
 ウクライナ情勢が台湾へ何も波及しないと考える方が非現実的ではないだろうか。

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