ChatGPTが変える世界 日本人が考えるべき5つのこと
Wedge より 230410 冷泉彰彦
オープン型のAI「ChatGPT」が話題だ。確かに、こうしたAIの実用化は、世界における比較的単純な知的労働を大きく変える可能性を秘めているし、教育やコミュニケーションの方法論も影響を受けるだろう。
では、日本としては、この技術にどう向かい合って行ったら良いのだろうか。5点ほど問題提起をしてみたい。
⚫︎英語圏では日進月歩の精度向上
1点目はまず現状を知るということだ。このサービスが一般に公開されたのは、2022年11月30日で、サンフランシスコのベンチャー企業 Open AI 社が、AIが人間と対話する「チャットボット」をインターネットのオープンな空間でリリースした。
筆者が使い始めたのは、リリースから約1カ月弱後の12月後半だったが、その時は英文のネイティブチェック的な使い方を、テック技術者のアシストで経験しただけだった。
⚫︎英語圏では日進月歩の精度向上
1点目はまず現状を知るということだ。このサービスが一般に公開されたのは、2022年11月30日で、サンフランシスコのベンチャー企業 Open AI 社が、AIが人間と対話する「チャットボット」をインターネットのオープンな空間でリリースした。
筆者が使い始めたのは、リリースから約1カ月弱後の12月後半だったが、その時は英文のネイティブチェック的な使い方を、テック技術者のアシストで経験しただけだった。
それでも、かなりの長文でも瞬時に添削する性能、特にその生成する英文の精度に驚嘆したのを覚えている。それから1カ月経過した本年の1月末には、米国で大きな話題となって、社会現象化した。
1月の時点では、サーバーの容量不足から、ログインに際して待たされるなどの問題があったが、その後、インフラの拡充が図られたようでサービスは向上している。更に、マイクロソフトとの提携、多くのアプリとの連携が進む一方で、類似のサービスもどんどん出てきている。
この開発と普及のスピードは、過去30年に起きた「ウインドウズ革命」「インターネットの普及」「サーチエンジンの拡大」「スマホ、タブレットの登場」「ウエアラブル端末の登場」といった動きと比べると、比較にならない猛烈なスピードと言える。
まずは、この動きに乗り遅れないことが肝要だ。例えば、ファクトに関する質疑では、日本語の場合は情報量が不足していることから、まだ「ChatGPTは息を吐くように嘘をつく」などといってこの技術を軽視する意見が多い。
1月の時点では、サーバーの容量不足から、ログインに際して待たされるなどの問題があったが、その後、インフラの拡充が図られたようでサービスは向上している。更に、マイクロソフトとの提携、多くのアプリとの連携が進む一方で、類似のサービスもどんどん出てきている。
この開発と普及のスピードは、過去30年に起きた「ウインドウズ革命」「インターネットの普及」「サーチエンジンの拡大」「スマホ、タブレットの登場」「ウエアラブル端末の登場」といった動きと比べると、比較にならない猛烈なスピードと言える。
まずは、この動きに乗り遅れないことが肝要だ。例えば、ファクトに関する質疑では、日本語の場合は情報量が不足していることから、まだ「ChatGPTは息を吐くように嘘をつく」などといってこの技術を軽視する意見が多い。
だが、英語圏ではその実用性というのは、日本語とは比較にならない完成度を見せている。この点なども、正確に理解しておきたい。
⚫︎きれいな英語へのネイティブチェック
2点目は、まず使ってみるということだ。お勧めは「英文の添削推敲」のツールとしてである。今でも多くの日本企業が、英文のビジネス文書の発信において、ネイティブチェックを通さずに送付することがある。それでも意味が通れば良いと思っている企業も多いようだが、明らかに印象は悪化する。
そこで、ChatGPTを使うことで、正確で感じの良い英文による対外発信を心がければ、生産性も、そしてコミュニケーションの精度や速度も飛躍的に向上するであろう。
もちろん、ファクトの部分は機密事項だからダミーのデータを入力して後で置き換えるなど、使い方のコツはあるが、とにかくツールとして極めて有力であることは間違いない。
⚫︎きれいな英語へのネイティブチェック
2点目は、まず使ってみるということだ。お勧めは「英文の添削推敲」のツールとしてである。今でも多くの日本企業が、英文のビジネス文書の発信において、ネイティブチェックを通さずに送付することがある。それでも意味が通れば良いと思っている企業も多いようだが、明らかに印象は悪化する。
そこで、ChatGPTを使うことで、正確で感じの良い英文による対外発信を心がければ、生産性も、そしてコミュニケーションの精度や速度も飛躍的に向上するであろう。
もちろん、ファクトの部分は機密事項だからダミーのデータを入力して後で置き換えるなど、使い方のコツはあるが、とにかくツールとして極めて有力であることは間違いない。
留学を検討している学生なども、申込みのレター等を「留学支援エージェント」などに頼むのではなく、ChatGPTを使って自分で行うことで手続きがサクサク進むであろう。
一番の恩恵があるのは、英語に苦手意識を持っている理系の研究者などだ。現在は、サイエンスの研究者においては、英語の論文執筆や、英語による学会発表というのは、ほぼ必須事項となっている。
一番の恩恵があるのは、英語に苦手意識を持っている理系の研究者などだ。現在は、サイエンスの研究者においては、英語の論文執筆や、英語による学会発表というのは、ほぼ必須事項となっている。
その論文執筆におけるツールとしてChatGPTは、大きな手助けとなる。
もちろん、オリジナルなデータや発見など、大切な部分はダミーにしてAIを通す必要があるし、学術誌によってはAI使用のガイドラインを守る必要がある。
もちろん、オリジナルなデータや発見など、大切な部分はダミーにしてAIを通す必要があるし、学術誌によってはAI使用のガイドラインを守る必要がある。
だが、仮に参照するだけの使い方であっても,読みやすく好感度の高い英文がサクサク書けるようになるわけで,日本人の研究者に取っては大変に心強い味方になるのは間違いない。
その他、インバウンド需要に期待する飲食店やサービス業などは、これを機会にメニューやホームページを日英バイリンガルにして、英語の部分については、ChatGPTでネイティブチェックをかければ、好感度も業績もアップするに違いない。
それこそ、地方公共団体や金融機関など、公共サービスを担う団体で、日本語だけでなく英語のホームページやパンフレットを展開する際に、これまではネイティブチェックを通さない「日本風の分かりにくい英語」を表示していた場合があると思われる。こうした団体の場合も、これを機会にChatGPTを通して、綺麗な英語表現にすれば、外国人にとって利便性を高めることができるだろう。
⚫︎日本語を生かす言語政策を
3点目は、日本社会としての向き合い方だ。ほぼ実用段階となっている英語と比較すると、時間的には少し先になるかもしれないが、日本語におけるChatGPTなどAIによるデータ蓄積と、対話型のサービスはやがて実用化されるに違いない。そうなれば、日本語による知的活動のかなりの部分が影響を受けることになる。
だが、ChatGPTを展開するOpen AI社も、そしてこれと提携したり同種のサービスを立ち上げようとしているGAFAMなどの勢力も、現時点では全てが欧米勢である。
その他、インバウンド需要に期待する飲食店やサービス業などは、これを機会にメニューやホームページを日英バイリンガルにして、英語の部分については、ChatGPTでネイティブチェックをかければ、好感度も業績もアップするに違いない。
それこそ、地方公共団体や金融機関など、公共サービスを担う団体で、日本語だけでなく英語のホームページやパンフレットを展開する際に、これまではネイティブチェックを通さない「日本風の分かりにくい英語」を表示していた場合があると思われる。こうした団体の場合も、これを機会にChatGPTを通して、綺麗な英語表現にすれば、外国人にとって利便性を高めることができるだろう。
⚫︎日本語を生かす言語政策を
3点目は、日本社会としての向き合い方だ。ほぼ実用段階となっている英語と比較すると、時間的には少し先になるかもしれないが、日本語におけるChatGPTなどAIによるデータ蓄積と、対話型のサービスはやがて実用化されるに違いない。そうなれば、日本語による知的活動のかなりの部分が影響を受けることになる。
だが、ChatGPTを展開するOpen AI社も、そしてこれと提携したり同種のサービスを立ち上げようとしているGAFAMなどの勢力も、現時点では全てが欧米勢である。
もしかしたら中国勢もそこへ参入してくるかもしれない。そうなれば、日本社会の活動の多くの部分が外国勢力によってコントロールされることになってしまう。
慢性的な資金不足に悩む日本経済であるが、こうした問題には歯を食いしばって投資を行い、自国の文明は自国で守るという姿勢を堅持したい。少なくとも、日本語によるAIの高度な実用化には、日本語という言語に相応しいアルゴリズムが必要であり、そのためには日本語という言語を質的、量的に深く解析するプロセスが必要だ。
これは国策として、しっかり進める必要がある。国の言語政策といえば、流行語に対して「正しい日本語」を対置して、変化を認めたり、変化を批判するといった「のんき」な研究が主となっている。
だが、もっと本質的な部分、つまり「よりコミュニケーションの効率を上げ、正確性を上げ、人間関係を円滑にする」日本語のあり方ということを、国民的に議論する必要がある。その上で、日本語のあるべき姿、あるいは否定できない現状を踏まえつつ、データを蓄積してAIに作業のサポートをさせる、そうした言語政策が求められる。
⚫︎求められる付加価値の創造を生む教育
4点目は、教育への影響だ。発達のある年齢まではネットでのサーチも、AIのサポートも禁止して、「オーガニックな」言語能力や知的能力を養うべきという議論がある。こちらについては、低年齢からテクノロジーを使用させたグループと、一定年齢までは禁止したグループの比較研究など、ファクトに基づいた判断が望まれるし、そのファクトに基づいて決定すればいいだろう。
ちなみに、AIに作文を頼むのは「不正」だから、今まで以上に「試験監督のように監視された空間で、何も見ずに手書きで」作文を書かせるなどというような「逆行」をさせて生産性をどんどん劣化させていくのは全く感心しない。
問題は、AI時代における教育観というものをしっかり構築していくことだ。
慢性的な資金不足に悩む日本経済であるが、こうした問題には歯を食いしばって投資を行い、自国の文明は自国で守るという姿勢を堅持したい。少なくとも、日本語によるAIの高度な実用化には、日本語という言語に相応しいアルゴリズムが必要であり、そのためには日本語という言語を質的、量的に深く解析するプロセスが必要だ。
これは国策として、しっかり進める必要がある。国の言語政策といえば、流行語に対して「正しい日本語」を対置して、変化を認めたり、変化を批判するといった「のんき」な研究が主となっている。
だが、もっと本質的な部分、つまり「よりコミュニケーションの効率を上げ、正確性を上げ、人間関係を円滑にする」日本語のあり方ということを、国民的に議論する必要がある。その上で、日本語のあるべき姿、あるいは否定できない現状を踏まえつつ、データを蓄積してAIに作業のサポートをさせる、そうした言語政策が求められる。
⚫︎求められる付加価値の創造を生む教育
4点目は、教育への影響だ。発達のある年齢まではネットでのサーチも、AIのサポートも禁止して、「オーガニックな」言語能力や知的能力を養うべきという議論がある。こちらについては、低年齢からテクノロジーを使用させたグループと、一定年齢までは禁止したグループの比較研究など、ファクトに基づいた判断が望まれるし、そのファクトに基づいて決定すればいいだろう。
ちなみに、AIに作文を頼むのは「不正」だから、今まで以上に「試験監督のように監視された空間で、何も見ずに手書きで」作文を書かせるなどというような「逆行」をさせて生産性をどんどん劣化させていくのは全く感心しない。
問題は、AI時代における教育観というものをしっかり構築していくことだ。
小中学生の「読書感想文」教育は、AIによる「不正」を招きやすいのは確かだが、それは、「内容を批判せず、穏健な個人的体験などを参照しながら、テキストを称賛する。
また年齢相応の表現からの逸脱はさせない」という「読書感想文教育」が、簡単にAIに取って変わられるような「低付加価値」であることが問題なのだ。
どういうことかというと,「典型的な模範答案」があり,それを期待するという教育を続けていては,人間はAIに負けてしまうのである。
どういうことかというと,「典型的な模範答案」があり,それを期待するという教育を続けていては,人間はAIに負けてしまうのである。
ならば,AI時代に相応しい教育とは,個々人の個性的な創造力を育成すると同時に,答えのない「オープンな問い」に若い時期から取り組ませるという「根本的な改革」が求められる。
日本は、1980年代には一億総中流を誇っていたが、裏返すと一億総実務、一億総事務員、という人材育成が主となっていた。そのために、ビジネスの枠組みの変革、より高度な付加価値の追求ができずに、先進国の経済から滑り落ちそうになっている。
AIの実用化は、更にそうした「反復可能な中付加価値の創造」しかできない日本人を、世界の労働力市場から脱落させかねない。AIが日本の教育に突きつけている問題は、実は根深く深刻なのだ。
⚫︎適切なルール作りを
5点目は、セキュリティと法的な対策だ。AIのベースとなっているのは、巨大な言語データベースだ。この点に関しては、インターネットを巡回して得られるデータには、それぞれに著作権があるので現在のAIによるデータ収集には問題があるという議論がある。
だが、これは些末な問題であり、やがて何らかの基準による妥協点を見出すことになろう。問題は、AIというのが、どこまでいっても「統計的事実」を吐き出すだけであって、理論上エラーをゼロに出来ないということだ。
日本は、1980年代には一億総中流を誇っていたが、裏返すと一億総実務、一億総事務員、という人材育成が主となっていた。そのために、ビジネスの枠組みの変革、より高度な付加価値の追求ができずに、先進国の経済から滑り落ちそうになっている。
AIの実用化は、更にそうした「反復可能な中付加価値の創造」しかできない日本人を、世界の労働力市場から脱落させかねない。AIが日本の教育に突きつけている問題は、実は根深く深刻なのだ。
⚫︎適切なルール作りを
5点目は、セキュリティと法的な対策だ。AIのベースとなっているのは、巨大な言語データベースだ。この点に関しては、インターネットを巡回して得られるデータには、それぞれに著作権があるので現在のAIによるデータ収集には問題があるという議論がある。
だが、これは些末な問題であり、やがて何らかの基準による妥協点を見出すことになろう。問題は、AIというのが、どこまでいっても「統計的事実」を吐き出すだけであって、理論上エラーをゼロに出来ないということだ。
人間の場合は、エラーの原因を追及して過失の有無など責任の評価をするための社会的合意がある。
AIが返してきた結果に誤りがあって、そのために損害が出た場合の責任については、これから法律など制度上の枠組みを作り、その上で保険業界が基準を作って行かねばならない。
AIが返してきた結果に誤りがあって、そのために損害が出た場合の責任については、これから法律など制度上の枠組みを作り、その上で保険業界が基準を作って行かねばならない。
そうした議論、つまりゲームのルール作りには、日本はしっかり参加して自国が不利にならないようにすべきだ。
更に問題なのは、AIの判断基準となるデータの改竄や、判断を歪めるようなアルゴリズムの歪曲である。AIが進めば進むほど、そして人間がAIに依存すればするほど、こうした悪意による社会的被害は大きくなる。
AIが実用化され、社会がAIに依存するようになれば、データベースに不正にアクセスして、データの改竄を行えば、多くの社会活動が妨害されてしまう。これを防止し、取り締まり、万が一の場合には厳罰に処するような捜査と法律の枠組みも必要となろう。
いずれにしても、猛烈なスピードで走り出したAIの実用化の流れに、日本社会は取り残されてはならないと考える。
更に問題なのは、AIの判断基準となるデータの改竄や、判断を歪めるようなアルゴリズムの歪曲である。AIが進めば進むほど、そして人間がAIに依存すればするほど、こうした悪意による社会的被害は大きくなる。
AIが実用化され、社会がAIに依存するようになれば、データベースに不正にアクセスして、データの改竄を行えば、多くの社会活動が妨害されてしまう。これを防止し、取り締まり、万が一の場合には厳罰に処するような捜査と法律の枠組みも必要となろう。
いずれにしても、猛烈なスピードで走り出したAIの実用化の流れに、日本社会は取り残されてはならないと考える。
こちらは蒸気機関車のスピードを追求し、アルファベット語は新幹線の性能を上げるようなもので、原理的に太刀打ちできません。
日本語から例えば英語にいちいち翻訳させて覚えさせても、ひと手間多いことに変わりはないです。
AIの進化に立ち遅れないのを目指す、ということは、私たちが日本語を第二日常語にすることを迫られる事態をも示唆しているように思います。
言語の問題は文化でもあるだけに…
これからどう展開してゆくのか?
中共でも漢字から表音文字系への変更の動きもあるとか…
AIの進化次第では…を期待