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⚠️ なぜ日本はワクチン承認が遅れたのか…政府の“科学的リテラシー”の欠如「コロナの感染拡大を放置したに等しい」202203

2022-03-24 22:59:00 | なるほど  ふぅ〜ん

なぜ日本はワクチン承認が遅れたのか…がん治療の権威が指摘する政府の“科学的リテラシー”の欠如「コロナの感染拡大を放置したに等しい」
  文春onlain より 220324  中村 祐輔


 ゲノム研究の世界的権威、中村祐輔・東京大学名誉教授が『ゲノムに聞け 最先端のウイルスとワクチンの科学』(文春新書)を出版した。中村博士はがんや遺伝性疾患研究の先駆者であり、今日のDNA鑑定の基礎を築いたことでも知られる研究者で、現在はがん免疫療法の研究を指揮している。

『ゲノムに聞け』は、ウイルス、感染症、変異、ワクチン、PCR検査、感染拡大防止策といった新型コロナウイルス感染症に関するさまざまな事象を、「ゲノム」という視点から分かりやすく解説したウイルスとワクチンの入門書。

 がん治療の権威が新型コロナウイルス感染症に関する入門書を執筆した意図はどこにあるのか。著者の中村博士に語っていただいた。(全3回の1回目/2回目を読む)

◆◆◆

⚫︎「オミクロン株」は何から変異したのか
 3月21日に全国18都道府県でまん延防止措置が解除されました。「社会機能維持」を重視するというのが政府や各自治体の判断のようです。科学的な見地に立って評価しても、今回の解除は妥当だと考えます。

 現在、世界的に流行している「オミクロン株」は重症化率が非常に低いからです。ただし、持病のある高齢者の場合には、注意が必要です。この方たちの医療へのアクセスが十分に確保されるなら、これ以上の行動制限は不要だと思います。

 そもそも、「オミクロン株」は本当に、2020年から大流行した新型コロナウイルスから派生したものなのかどうかさえ判然としません。新型コロナウイルスCOVID-19は、風邪の原因となるコロナウイルスから由来したものです。コロナウイルスの変異は以前から毎年のように確認されています。

 しかし、SARSやMERSコロナウイルスのように感染力や重症化率が高くない場合を除いて、問題視されませんでした。

 ゲノム解析してオミクロン株と元の新型コロナウイルスの遺伝情報を比較すると30カ所程度に変異があるため、COVID-19新型コロナウイルスが変異した変異株と考えるより、別の系統から発生した一般のコロナウイルスの変異株と考えた方が合理的だと思われます。

 今回の感染対策では、数々の混乱や誤判断がありましたが、たとえば、新型コロナを、感染症法上の分類の2類(危険度が大で感染確認者は隔離する)にするか、5類(季節性のインフルエンザ程度)にするかなど不毛の議論を繰り返していたこと自体が日本のコロナ対策の非科学性を象徴しています。
 ウイルスの特性がわかり、2類でも5類でもそぐわないなら、科学的な観点で新しい分類を作るべきなのです。

 ともあれ、重症化率が低いオミクロン株でもロングコビッドと呼ばれる後遺症に苦しむ人が多いようなので、警戒を緩めるわけにはいきません。感染者の誰もが後遺症を患うわけではありませんが、症状は長期に渡り治療法も確立されていないため、運が悪いと、平穏な日常が奪われてしまいかねません。

⚫︎コロナ感染症は災害時並みに亡くなった人が増えた
 新型コロナウイルス感染症は、2020年以降、日本でも感染拡大し、多くの方が亡くなりました。感染症は自然災害だとはいえ、科学的に適切な対応をすることで、犠牲を最小限に抑えることはできたはずです。

 しかし、残念なことに、感染拡大初期から約2年間に渡る政府や自治体の感染拡大防止対策や医療対策の多くは、科学的妥当性に欠けた場当たり的な施策でした。
 その意味で、2021年春に感染のピークを迎え、関西圏の医療崩壊を招いたアルファ株の感染拡大や、首都圏の医療を崩壊させた21年夏のデルタ株の感染拡大は人災の部分も大きかったと言わざるを得ません。

 最新のデータでは、2020年1月から2021年11月までの超過死亡数(例年、ある時期の想定される死亡数よりも増えた死亡者数。たとえば季節性インフルエンザがどれだけ猛威をふるったかの指標になる)は11955~76215人と報告されています。中間の値で考えると約45000人の超過死亡者となります。
 これほど超過死亡者が多くなるのは、災害や戦争時ですが、今回のコロナ感染症は災害時並みに亡くなった人が増えていたことを示しています。

 この中には、コロナ感染症によるもの(正しく診断されないままに亡くなった人を含む)、医療へのアクセスが確保されていれば助けられた可能性のある心筋梗塞・脳卒中患者、交通事故被害者、そして自ら命を絶たれた方も含まれます。医療崩壊が起こっていたことを科学的に検証することが重要です。

 非科学的施策の最たる例がPCR検査の対象者の制限でした。

 2020年の最初の感染拡大初期に、政府は新型コロナウイルス感染症を指定感染症(2類相当)に指定しました。指定すると、感染者はたとえ無症状や軽症であっても医療機関に入院させ隔離しなければなりません。
 PCR検査を広く実施すると、感染確認者が増え病床が入院患者で溢れ、医療が崩壊してしまう可能性があります。
 そのため、PCR検査の対象者を、熱などの症状のある人と濃厚接触者に限定したのです。しかし、2年前の時点ですでに無症状感染者が多いとわかっていたのです。
 これでは無症状感染者から感染が拡大することを放置したに等しい政策でした。

 感染者の発見とその隔離は感染拡大防止策のイロハのイです。クラスター対策を重視し、PCR検査を制限した政府の対策は科学を無視したものでした。結果、アルファ株やデルタ株の感染の急拡大を抑え込むことはできませんでした。

 にもかかわらず、政府は欧米に比べ日本では感染者の数が少ないと胸を張っていました。公共の福祉と公衆衛生への理解が深い日本型の感染対策が成功したと言う論者さえいました。
 しかし、ちょっと考えれば誰でも分かることですが、PCR検査をしなければ感染者は確認できません。日本の人口当たりのPCR実施率は世界で142位(2022年1月現在)で、1位のデンマークの75分の1しか実施されていません。

⚫︎科学リテラシーを欠いた政府の対策
 欧米などと比較し、日本を含むアジア諸国や中東諸国で感染者が少ないのは事実で、それには別の要因が絡んでいる可能性が高いのですが、それは別としても、PCR検査をしていないのですから、日本で感染者が少ないのは当然なのです。
 これを見ただけでも、政府の対策がいかに科学を欠いたものであったかがお分かりいただけると思います。

 もう1つ、私が危機感を抱いたのはワクチン承認の遅れです。当初、感染症の専門家と言われる人たちは、ワクチン開発には最低でも1~2年の歳月が必要と指摘し、政府もそれを鵜呑みにしていました。
 が,それはインフルエンザワクチンなどの「不活化ワクチン」と呼ばれるワクチンの話です。

 実際には、みなさんご存知のとおり、アメリカやイギリスで開発されたmRNAワクチンやウイルスベクターワクチンが接種されています。
 欧米ではこのワクチンを早期に承認しワクチン接種を始めました。mRNAワクチンはがん治療のために開発されたワクチンで,その技術を応用すれば、新型コロナウイルスのワクチンもすぐに開発されるであろうことは、その分野の専門家なら誰もが知っていたことでした。

 しかし、政府に近い科学者にはその知識のある人はいませんでした。そして、ウイルスの遺伝情報を体内に送り込むmRNAワクチンを危険視したため,日本では欧米に比べワクチンの承認と接種の開始が3カ月も遅れてしまったのです。

 こうした,政府の対策を見聞し痛感したのは,政府関係者など感染対策に関わる人たちの科学リテラシーの低さでした。繰り返しになりますが,政府の対策には科学がありませんでした。

 私は1980年代の中頃から40年近く、ゲノムの研究に身を投じてきました。ゲノムとは生物やウイルスの設計図です。ゲノムやその一部である遺伝子を調べることで、病気の原因を突き止め、治療法を開発することができます。

 研究は想定通りに進まないことが多いのですが、幸い、いくつかの研究は実を結び、私が発見した遺伝子のマーカー(目印)は、がんを含めた病気の研究を画期的に変えました。
 それまでは不明だった遺伝性の病気やがんの原因が次々と明らかになっていったのです。その発見は医療以外の分野にも応用されています。今日、科学捜査もののドラマや映画ではお馴染みとなったDNA鑑定の基礎は私の研究を応用したものです。このようにゲノムはさまざまなことを教えてくれます。

 新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、私たちの生活は日々情報の洪水にも晒されてきました。テレビやインターネット上のメディアには、コロナ、変異ウイルス、PCR、ゲノム解析、スパイクタンパク質、アミノ酸変異、ワクチン、mRNA、免疫といった専門用語と、さまざまな意見が飛び交いました。科学の基礎的な知識のないふつうの人たちには、禅問答にしか聞こえなかったのではないでしょうか。

 しかし、禅問答にしか聞こえない数々の専門用語は、実はすべて「ゲノム」でつながっています。ウイルス感染症とはウイルスとヒト(生物)の物語であり、ゲノムはウイルスや生物の設計図なのですから、当然のことです。

 ゲノムという視座から新型コロナウイルス感染症に関係するさまざまな事象を見直し、分かりやすく解説するというのが、『ゲノムに聞け』を執筆した意図です。この人類史に類例を見ないパンデミックと闘うすべての人に参考にしていただきたいと願っています。

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