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中国が短期間で技術大国へ成長した「驚きの戦略」 2023/09

2023-09-15 00:33:08 | 気になる モノ・コト

中国が短期間で技術大国へ成長した「驚きの戦略」
 東洋経済Online より 沢辺 有司:フリーライター


⚫︎中国式イノベーションの秘密とは
 中国では近年、次々と革新的なイノベーションがおきており、すでにいくつかの分野においては技術大国アメリカをしのぐほどの開発技術を有しています。
 どうしてここまでの急成長を遂げることができたのか。中国式イノベーションの正体と、安全保障との関わりについて、ライターの沢辺有司氏が解説します。
※本稿は『いちばんやさしい地経学の本』から一部抜粋・再構成したものです。

⚫︎特定の技術なら新興国が逆転できる
 中国では、先端技術分野において次々と革新的なイノベーションがおきています。それはAIや第5世代移動通信システム(5G)、量子通信、半導体、バイオテック、グリーンテックといった分野で、これらの分野ではすでに中国がアメリカを超えているものもあるといわれています。

 しかし、数十年前まで新興国とされていた中国が、なぜわずかな期間でアメリカの地位をおびやかすほどに成長できたのでしょうか?
 中国でおきているイノベーション、つまり「中国式イノベーション」の特徴はなにかというと、政府が主導した官民一体型で、重点分野に集中的に技術と資本を投下して攻略するというものです。これによって、「リープフロッグ(かえる跳び)」ともよばれる現象をおこしています。

 リープフロッグ現象とは、社会インフラが未整備の新興国が、社会インフラがすでに整備されている先進国のある特定の技術において追い越してしまうことをいいます。

 典型的なものとして、携帯電話があります。有線電話が整備されている先進国では、それまでの規制がハードルとなって、携帯電話に移行するまでに時間がかかります。
 ところが、有線電話が整備されていない新興国では規制がないので、携帯電話の普及が一気に進み、先進国を逆転します。

 中国政府は、このリープフロッグ現象を意図的におこします。リープフロッグをおこしやすい新しい技術領域を選択し、その特定企業に集中的に技術と資本を投下し、その開発を加速させます。
 つまり,中国政府と民間企業がいわば共犯的な関係でイノベーションをおこしていくのです。

これは消費者のためのイノベーションではありません。中国共産党のためのイノベーションであり、軍事技術のためのイノベーションです。

⚫︎ビッグデータをAI開発に集中投下
 中国の官民一体型のイノベーションには、どのようなメリットがあるでしょうか?
例えば、AIと自動運転の技術があります。AIの自律的な思考・学習を進化させるためには、より多くのデータが必要になります。

 中国政府は、ECサイトを運営するアリババやメッセンジャーアプリ「ウィーチャット」などを展開するテンセントが保有する膨大なデータを吸い上げることができます。
 これらのデータをAI開発のために使います。自動運転システムを開発しているバイドゥなどにこのデータを提供し、リープフロッグを後押しするわけです。

 もちろん中国は軍民融合ですから、自動運転の技術は軍事に応用され、無人戦闘車両や無人戦車がつくられることになります。

 アメリカではこうはいきません。ちなみに、グーグルはAI技術の軍事転用には反発しています。2018年6月、グーグルは「AI運用の7原則」を発表し、軍事への技術提供をしないことを決めました。

 中国式イノベーションには、より明確な目標があります。それが、2015年5月に習近平が発表した産業発展政策「中国製造2025」です。

「中国製造2025」は、2025年までに世界の製造強国入りを果たすことをめざしています。そして、建国100周年(2049年)までに世界の製造強国の先頭グループに入ることをめざしています。
「中国製造2025」のなかで重点分野としてあげられているものは、次世代通信技術(ITや半導体を含む)、ロボット、航空・宇宙設備、省エネ・新エネルギー自動車、バイオ医薬など10分野です。すでに重点分野におけるサポートがはじまっています。

 例えば、半導体は「中国製造2025」のエンジンと位置づけられ、2025年までに自給率70%の達成を目標にかかげています。半導体産業育成のため10兆円規模の国家大基金(CICF)が用意され、中国国内各地で半導体工場の新規建設計画が進んでいます。

⚫︎米中半導体戦争が勃発
 ただし、2021年の中国の半導体自給率は16.7%と伸び悩んでいます。2025年までの自給率70%達成はむずかしそうです。
 半導体は、中国にとっての地経学上のチョーク・ポイントの1つになっています。台湾の半導体ファウンドリTSMCを巻き込むかたちで米中半導体戦争がおきています。

 省エネ・新エネルギー自動車産業について見てみると、中国のEVを中心とする新エネルギー車の輸出は年々増加していて、2022年は約68万台です。
 前年の2.2倍となりました。中国はガソリン車の製造・販売では日米欧メーカーにおくれをとっていましたが、「中国製造2025」の公表前から新エネ車による巻き返しをはかり、その成果があらわれてきています。

 ただし、新エネ車をもっとも多く輸出したメーカーはテスラで、4割をしめています。中国の悲願である新エネ車の成長段階において、ライバルのアメリカのメーカーが大きくかかわっているという構図になっています。

 中国にとってまだまだ課題は多い「中国製造2025」ですが、アメリカはこの政策を大きな脅威ととらえています。
「中国が、革新的技術(AI、5G通信など)が生み出す巨大市場の覇権をアメリカから奪い取ることを宣言した」とみなしています。

 つまりそれは、中国がアメリカ軍とならぶ世界一流の軍をもち、世界覇権に挑むということです。中国は軍民融合政策をとっているので、革新的技術は必ず軍事技術に使われます。

「中国製造2025」は、安全保障にかかわる問題です。ところが日本では、このような危機感はありません。「中国製造2025」は、「中国が産業の世界覇権をめざすもので、日本の経済に打撃をあたえる恐れがある」と、経済的な側面でしか語られません。しかし、問題の核心は経済ではなく、安全保障です。

 トランプ政権時代のアメリカは、強硬的な具体策をとって対応しました。最先端技術や機微技術を中国に流出させないために、もともとあった「輸出管理規則(EAR)」をより強化した「輸出管理改革法(ECRA)」を施行しました。すると中国はこれに対抗し、2020年、輸出規制措置をより強化する「輸出管理法」を成立させました。

⚫︎世界の企業が選択の時を迎えている
 先端技術をもつ世界の企業は、アメリカにつくのか、中国につくのか、態度を明らかにしなければいけない時期にきています。
 このような米中摩擦の高まりから、中国は2018年以降、「中国製造2025」について公に語らなくなりました。

 しかし2021年3月、全国人民代表大会(全人代)で採択・公開された「国民経済・社会発展第14次5か年計画と2035年までの長期目標要綱」には、「中国製造2025」と同じような概念が盛り込まれ、重要技術の国産強化をめざす方針に変わりがないことがわかりました。

 この「第14次5か年計画」では、経済・産業・社会・行政の4つの側面から「数字中国(デジタルチャイナ)」建設を前面に打ち出しています。

 デジタルチャイナ建設のための技術基盤が、AI、ブロックチェーン、クラウド、ビッグデータ、5Gです。これらのデジタル技術の社会実装を都市部だけではなく、これまでおくれをとっていた地方都市や農村(下沈市場)などにも広げていくとしています。




 中国の下沈市場。中国メディアが中国337都市の商業的魅力度で分類したもので、下沈市場は288都市が該当する(出所:『いちばんやさしい地経学の本』)
約10億人をかかえる「下沈市場」は潜在力の高い新興市場です。ここが今後の経済成長の起爆剤となる可能性があります。

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