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⚠️ JR西日本が「不採算17路線の収支」を初発表した本当の理由とは 202204

2022-04-19 01:59:00 | 気になる モノ・コト

JR西日本が「不採算17路線の収支」を初発表した本当の理由とは
 ダイヤモンド onlain より 220419  枝久保達也


 JR西日本は4月11日、「ローカル線に関する課題認識と情報開示について」として、輸送密度(1キロあたりの1日平均旅客輸送人員)が2000人未満の17路線30線区の収支を公表した。
 公表された収支状況を見てみると惨憺たる数字が並んでおり、不採算路線からの撤退の議論が高まりつつある。だが、JR西日本が公表した真意は別のところにある。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

⚫︎100円の収入のために2万5416円を要する路線も
 JR西日本の長谷川一明社長は2月16日の会見で、これら線区は「大量輸送機関として鉄道の特性」が発揮できず「このままの形で維持していくことは非常に難しい」として、JR西日本の経営努力だけで維持するのは困難になっているとの見解を示していた。

 今後、さらなる人口減少などの環境変化が見込まれる中で、線区の特性や移動ニーズを踏まえ、地域のまちづくりにあわせた持続可能な地域交通体系を構築するため、課題を共有した上で議論と検討に入りたいとしている。

 公表された収支状況を見てみると惨憺たる数字が並んでいる。


 対象30線区のうち、2019年度の輸送密度(1キロあたりの1日平均輸送人員)は芸備線東条~備後落合間の11が最少。100円を稼ぐために費用がいくら必要かを示す営業係数(2017~2019年度の平均)は25416、つまり100円の収入に2万5416円を要する計算になる。表現を変えれば必要な費用の0.4%しか収入で賄えていない状態だ。しかもこの計算における「費用」には本社・支社にかかる管理費は含まれていない。

 同区間を含め、輸送密度が200を下回るのは7線区、200以上500未満は10線区、500以上1000未満は8線区、1000以上は5線区だ。営業係数が500未満は3線区、500以上1000未満は13線区、1000以上2000未満は8線区、2000以上は6線区だ。

 これは異常な数値だ。例えば経営再建中のJR北海道は、輸送密度200未満の路線は鉄道よりも他の交通手段が適しているとしてバス転換による廃止、200以上2000未満は単独では維持が困難であるとして、地域や利用者に負担を求める方向で協議が必要な路線としている。

 その一環として2020年5月に廃止された札沼線北海道医療大学~新十津川間の2019年度の輸送密度は71、管理費を除いた営業係数は1099。次に輸送密度が小さい根室線富良野~新得間は82、営業係数は2205だった。同じく経営再建中のJR四国を見ても、2019年度に輸送密度が最少だったのは予土線北宇和島~若井間の186で、営業係数は1133だ。

⚫︎17路線30線区の営業損失は248億円
 1980年に成立した国鉄再建法は、輸送密度4000以下の路線を「特定地方交通線」と定め、バスによる輸送の方が効率的であるとして順次、廃止を進めていった。

 このうち最初にバス転換に合意し、廃止されたのは北海道の白糠線だったが、同線の1982年度の輸送密度は94、営業係数は3000超だった。他に廃止対象となった路線も2000から多くても4000程度で、芸備線の5けたの営業係数は前代未聞である。

 ではこれらの区間はどれほどの赤字を出しているのだろうか。今回、同社は営業係数に加えて各線区の3カ年平均(2017~2019年度)の運輸収入と営業費用、営業損失を公表しているが、これによると30線区の営業損失の合計は約248億円だ。

 JR西日本の2019年度単体決算は営業収益約9619億円、営業利益は約1197億円だった。営業収益の9割が鉄道事業の運輸収入だから、少なく見積もっても鉄道事業で1000億円の利益を計上していたことになる。

 1000億円の利益に対して約248億円の営業損失は小さい数字ではない。ただ17路線30線区には近畿圏を走り輸送密度が1000を超える紀勢線、関西線や、山陰地方を横断する幹線・山陰線などが含まれており、現時点ではこれら線区のバス転換や経営分離を地元が受け入れるとは思えない。またJR西日本もそこまで事を急ぐつもりはないだろう。

 JR北海道と同様に輸送密度200以下の7線区に限るとどうだろうか。こちらは合計約26億円の営業損失で、これも決して小さい数字ではないが、この区間を「見直し」しなければ経営が揺らぐほどの数字とまでは言えない。

 2019年度の山陽新幹線と近畿圏在来線の運輸収入は計約7487億円。仮に営業係数を80とすれば約1500億円の営業利益となり、ローカル線の赤字を十分に穴埋めできる利益があると見ることもできる。

 このように都心部の黒字路線が赤字ローカル路線を支える構図を「内部補助」と呼ぶ。どの程度まで内部補助すべきか議論は分かれるところだが、少なくとも全ての路線が黒字でなければならないというのは現実的ではない。

⚫︎路線別の収支を把握していないという 西日本の主張は本当か
 もっともこれはコロナ以前の数字であり、実態は異なる。2020年度決算では約2338億円の営業損失を計上。2021年度は約815~1165億円の営業損失を見込んでおり、今後は利用の回復とともに一定程度の改善は見込まれているが、行動変容により利用は元通りにはならないと見られている。もはや内部補助をするだけの黒字は期待できないのだろうか。

 ところがJR西日本は輸送密度2000以上の路線の収支を公表せず、今後もする予定はないというので実態が分からない。同社は、今回は30線区について収入と費用を配分して「一定の前提をおいた算出のもと」収支を公表したもので、それ以外の線区については計算をしていないと説明する。

 なるほど、今回は手持ちの数字がない。それは分かった。そうであれば追って公表すればいいだけの話だ。そもそも国鉄時代は毎年、路線別の営業係数を公表していた。それが民営化された途端に全く行われなくなったのだろうか。予算を策定する上で、あるいは経営判断をする上で、路線別の収支を全く把握していないということはあり得るだろうか。

 筆者の疑問に対して担当者は「鉄道はネットワークとして考えるのが前提で路線別の数字を算出する文化はなかった」と説明するが、内部補助を前提とした全体の収支を重視するのであれば、なおさら30線区以外の収支が重要になる。

 推測するに全路線の収支を公表すると、ローカル線以上に赤字を生み出している幹線が目立ってしまうのを嫌ったのではないか。営業係数は収入と費用の割合を示した数字なので、運輸収入5000万円で営業係数1000の路線より、運輸収入500億円で営業係数110の路線の方が10倍以上、赤字額は大きくなる。こちらよりあちらが問題ではないかと泥仕合になりかねない。

⚫︎議論すべきは撤退か否かではなく 地域交通の再生のあり方
 もちろん赤字線区が多くなれば無視できない数字になる。国鉄再建法が制定される前年、1979年度の国鉄の運輸収入は幹線約2兆7000億円に対して、地方交通線は約1700億円と全体の6%にすぎなかったが、営業損失は幹線約5500億円、地方交通線約2300億円と全体の3割近くを占めていた。

 JR西日本も国鉄と同様に内部補助が成り立たなくなっているのであれば、各路線各区間の収支をつまびらかに公開せずとも、せめて山陽新幹線、近畿エリア在来線(アーバンネットワーク)、広島や岡山などの地方都市圏などのくくりでよいから数値を示すべきだった。

 今回の発表を素直に読むと、30線区の深刻な赤字を改善するためにJR西日本は見直しを進めたいのだと思うはずだ。しかし、ややこしいのは、同社は赤字は理由ではないのだと主張するのである。3月に行ったJR西日本のインタビューでも、担当者は次のように語っている。

「コロナで赤字だから(ローカル線の見直しを)やるんだろうと言われますが、コロナ前からご利用いただけていません。中期経営計画に掲げて地域と取り組みを進めているように、何とかしないといけないという課題認識はコロナ前からありました。

(JR西日本は)二期連続赤字で大変な状況でもあり、結果としてコスト削減や損失改善につながるのかもしれませんが、ますますローカル線が鉄道として役に立てない状況が進んでいくため、なるべく早く議論を始めましょうということです」

 インタビューでは、結果的に収支改善につながることは否定しないものの、「赤字」だから「廃線」したいのではなく、現状では選ばれていない鉄道を地域の実情にあった、利用しやすい交通機関に転換する前向きな議論なのだと何度も強調していた。だが、今回の発表で論点は収支と赤字、つまりJR西日本が「不採算路線」から「撤退」するか否かに絞り込まれてしまった。

 もちろん路線別の収支を伏せたまま自治体と議論はできず、公表しないという選択はあり得なかったが、問題は赤字額ではなく地域交通を利用しやすい形に再生することが第一義だと訴える方が分かりやすかったように思える。

 先述のインタビューで筆者は、JR西日本の「真意」を聞いていたが、今回の発表でそれが世間や沿線自治体に伝わったようには思えない。これから始まる地域との「議論」は一波乱、二波乱ありそうだ。

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