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🌏 成長前提の社会保障はもう持たない―マルサス型世界の到来に備えよ 本当の持続可能経済とは何か  202107

2021-07-28 20:46:00 | 気になる モノ・コト

成長前提の社会保障はもう持たない―マルサス型世界の到来に備えよ 本当の持続可能経済とは何か
   現代ビジネス より 210728   大原 浩


「デフレバブル」崩壊! 目先の浮利に走った人々はどうなる?

⚫︎経済成長が普遍的になるのは産業革命以降
 現在我々は、日本や米国などのGDP成長率が○○%という言葉をよくつかう。そして、パンデミックの影響で成長率がマイナスになれば危機だと感じる。
 要するに「経済は成長してあたり前だ」というのが「社会通念」になっているのだ。しかしこの「社会通念」がほんとに正しいのかどうかは大いに検討の余地があると考える。

[米国企業が「デフレ」に強く、日本企業が「インフレ」に強い、納得の理由]

 例えば、米国の格付け会社S&Pは「2021年の中国の実質国内総生産(GDP)の成長率は、8.3%」と予想している。この数字を丸めて8%ちょうどで計算してみると(小数点以下切り捨て)

1年目100% 2年目108% 3年目116%
……
8年目171% 9年目185% 10年目199%
となる。

 つまり、8%成長を10年続ければ経済規模はほぼ倍になるのである。そしてその後の10年も8%成長を続けると、「2倍」がさらに2倍になるのだから4倍である。さらにもう10年(全部で30年)8%成長を続けると、「4倍」の2倍だから8倍にもなる。

 中国経済が米国経済を規模で追い抜くという予測の根拠はこのような単純計算によるものだが、30年後の中国経済が現在の8倍になっていると考える読者はいないであろう。3月29日公開の「『金の卵を産むガチョウ』を絞め殺す習近平政権に未来は無い」など一連の記事で述べた状況も考えあわせれば、現在の中国にとって「8%成長」は持続不可能だといえると思う。

 それでは先進国の間で一般的な3%成長の場合はどうであろうか?同様に計算すると10年でおおよそ1.3倍になる。
 こちらはたいしたことがないようにも思えるが、10年で1.3倍のペースで成長を続けると100年でおおよそ14倍になる計算だ。

 投資の神様バフエットが、このような「複利効果」利用して大成功したことは有名であり、拙著「勝ち組投資家は5年単位でマネーを動かす」の第6章「毎日コツコツでも、5年ごとの複利効果で驚くほどの資産に!」で複利効果について解説している。
 バフエット流の資産運用において複利効果によって資産が膨れ上がることは好ましい。だが、一国の経済がたとえ3%であっても、長期にわたって「成長を持続」することが可能かどうかは大いに疑問である。

 そもそも「経済成長」なる概念が一般的になったのは1800年頃の産業革命以降のことと言ってよい。
 それまでは、たとえ「経済成長」があったとしても、我々がほとんど体感できない「カメの歩み」のようなものであったのだ。

⚫︎江戸時代は持続可能社会であった
 明治維新以降現在に至るまで「江戸幕府を打倒した政権」の系譜が続いているので、江戸時代は不当に低く評価されているような気がする。要するに「歴史は勝者によって書かれる」ということだ。

 だから、日本における「成長志向」の発火点ともいえる明治維新以前の江戸時代を「持続可能社会」のモデルとしてもう一度見直してみることは大いに価値があるように思われる。
 もちろん、江戸時代にまったく経済成長が無かったわけではない。新田開発は奨励されたし、商品・貨幣経済が大いに発達したからこそ、幕府だけではなく各藩の財政が窮乏し、幕藩体制崩壊の遠因ともなった。
 しかし、鎖国によって海外との交易がほとんどなくなったことにより、「国内にあるもので 賄うしかない」という「閉鎖系」経済であったことが、「循環型=持続可能経済」を誕生させたといえる。

 2004年にアフリカ人女性として史上初のノーベル平和賞を受賞した、ケニアのワンガリ・マータイ氏が提唱した「MOTTAINAI(キャンペーン)」は、要するに日本語の「もったいない」である。一時期日本でも話題になったのでご存じの読者も多いと思う。
 「ものが無ければあるものを工夫して使わなければならない」というのは当たり前のことだが、産業革命以降の「大量生産・大量消費が美徳」の社会で、この当たり前のことが忘れ去られていたのは仕方がないかもしれない。

 特にここしばらく続いたデフレ経済が「新しくて良いものがすぐ手に入る」状況を作り出し「無駄遣い」を加速させたのは否定できない事実だと思う。
 そのデフレが終わりインフレがやってくる可能性が高いことは、4月30日公開の「いよいよ『大転換』の時代に突入…『インフレ』と『金利上昇』はすぐそこまで来ている!?」など一連の記事で詳しく述べたが、「経済の持続可能性」を真剣に考えるべき時が来たのではないだろうか。

⚫︎年金と健康保険は持続可能か?
 私が、「持続可能」の対極にある「持続不可能」である代表例であると考えているのが、年金や健康保険である。
 年金については、2019年7月22日公開の「年金は巨大な『国営ねずみ講』だから、負の所得税に一本化すべきワケ」で述べたが、サブタイトルのように「最後は踏み倒される」のではないかと恐れている。

 拠出制である現在の国民年金は、1961年から保険料の徴収が開始され国民皆年金制度が確立された。その後、1985年の年金制度改正により、基礎年金制度が導入され、現在の年金制度の骨格ができた。
 厚生年金は公務員・私学教職員対象の共済年金と併存してきたが、2015年にこれらを統合し、厚生年金に一本化されている。
 つまり、年金制度というのは、歴史的に見ればつい最近できた極めて新しい制度なのだ。しかも1960年代初頭というのは、1964年開催の東京オリンピックに向かう「オリンピック景気」の真っただ中である。
 また、1980年代と言えば「バブル景気」の時代である。そのような時代を背景として成立した年金制度が「日本の大いなる経済成長」を見込んだ「甘い見通し」の上に設計されたことは想像に難くない。

⚫︎すでに破綻が見えている?
「拠出型」と言いながら、「現役世代が高齢者世代を支える」という政府の説明そのものがすでに破綻をきたしている。拠出型であれば、「(運用益も含めて)自分が保険料として支払ったものに対する対価」しか年金として受け取れないはずである。それだけでは足りないからと言って、人口が減少傾向にある現役世代に「支援金」の負担を押し付けるのはどのように考えてもおかしい。

 国民健康保険も、多額の医療費が必要な高齢者世代を、ほとんど医療費がかからない若者をはじめとする現役世代が支える構図だ。しかも、現役世代が利用するときには3割負担なのに、(一定以下の所得の場合)後期高齢者の負担はたったの1割だ。

 その結果、現役世代の保険料負担がどんどん大きくなる。つまり、現役世代の「手取り収入」が大幅に減少するわけで、それにより消費が停滞する。さらには、彼らが「将来に備えて資金を貯める」ことも難しくなる。現役世代が「自分たちがもらえるかどうかわからない年金のために搾り取られている」と感じても不思議ではない。

 私自身は昨年4月14日公開の「コロナ危機で、じつは日本が『世界で一人勝ち』する時代がきそうなワケ」で述べたように日本の将来を信じている。しかし、高度成長時代のような爆速の経済発展があると思っているわけではない。たとえ3%成長であっても、経済規模が長年の間に驚くほど拡大することはすでに述べたとおりだ。

 ちなみに、民間人を対象とした強制加入の年金制度は、1889年に世界で初めてドイツ帝国初代首相オットー・フォン・ビスマルクが始めたとされるから、世界レベルで考えても、年金制度は産業革命以降の「経済成長が当たり前」の時代に設計されたといえる。
「年金や保険は実は『持続不可能』なシステム」であることが、私が生きている間に実証されることがないように祈っている……

⚫︎マルサスの人口論の世界が再びやってくる?
 マルサスの「人口論」をきわめて簡略に説明すれば、「人口は制限されなければ幾何級数的に増加するが生活資源は算術級数的にしか増加しないので、生活資源は必ず不足する」というものである。

 世界人口は現在約80億人である。1950年の数字は25億人(推計)であるから3倍以上になった勘定だ。その延長上で考えれば、70年後の世界人口は240億人になる計算だが、日本をはじめ多くの国々で人口増加が鈍化あるいは減少に向かっていることを考えれば、実際にはそのようなことは起こらないであろう。

 戦後の「人口爆発」が吸収され人口が頭打ちにならなかったのは、「緑の革命」(1940年代から1960年代にかけて、高収量品種の導入や化学肥料の大量投入などにより穀物の生産性が飛躍的に向上した)と呼ばれる食糧生産技術の飛躍的発展などによって食糧の供給が維持できたこと。また、化石燃料の有効活用によって生活に必要なエネルギーや製品が供給されたことが大きな理由だ。

 しかし,化石燃料に限りがあるのは否定できない事実である。また,今はやりの再生可能エネルギーでは現在の経済規模や生活水準を維持できないのは火を見るよりも明らかである。

 自然環境は大事だが、それは社会の「持続可能性」を構成する一部にしか過ぎない。

 世界人口の増加が頭打ちになり始めているのは、単なる偶然ではなく自然の摂理にも思える。成長と衰退は繰り返す。現在の世界的人口減少は、自然の法則によるものなのかもしれない。

 これまで世界の人口増加・経済成長を支えてきた農業生産は、「水」などの限られた資源の不足による停滞が見え始めている。また、化石燃料については、愚かにも化石燃料などより効率が悪い電気という形へ変換して使用することが、各国政府によって推進されている。

 さらには、年金・健康保険は、先進国共通の大きな重荷だ。持続できない「ねずみ講」を維持しようとすることが、現在の世界的問題の一つであろう。

⚫︎マルサスの人口論が語るもの
 現代の多くの問題は、社会システムが経済成長を前提につくられているため、無理に経済を成長させようとすることが原因だと考えられる。
 もちろん、産業革命以降発展した資本主義は経済成長が必須だが、冒頭の数字を見ればそれがどれほど難しいかがよくわかる。

 共産主義・資本主義のような唯物論では「経済成長」の問題を解決できないのかもしれない。

「精神を豊かにする新たな理論」=「精神成長型経済」の登場が大きな変革をもたらすのであろうか?





💋マルクスが全盛期、成長の限界と人口論と一般言語学講義に感ず

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