ハーバード・ケネディスクールからのメッセージ

2006年9月より、米国のハーバード大学ケネディスクールに留学中の筆者が、日々の思いや経験を綴っていきます。

最後の直線・・・春学期スタート!!

2008年02月04日 | ケネディスクールの授業

   2年間にわたるマラソン・レースの最後の直線、Spring Semester 2007がはじまりました。これまで1年半のケネディスクール内外での学びの総決算をするとともに、政策のプロフェッショナルとして社会にスムーズに再エントリーするための準備期間でもある大切な4ヶ月。

 先日の記事のとおり、迷走する修士論文(PAE:Policy Analysis Exercise)に追われる日々ですが、ケネディスクールの授業を受けることができるのもこれが最後だと考えると、盛り沢山の興味深い科目にトライしたい気持ちがフツフツと沸いてきます。

 そして、Couse Catalogを縦にしたり横にしたりして悩んだ末決めたのが、以下の4教科。今日はその内容を簡単に紹介していきたいと思います。

   *                    *                      *

Introduction to Negotiation Analysis(入門 交渉術)

 Leadershipと並ぶ、ケネディスクール、否、ハーバードの看板科目のひとつ。Successful Negotiatorになるために必要なスキルとマインド・セットを身につけることを目指します。

 この授業の特徴は、与えられるリーディングと週2回の授業を通じて得た知識を「知恵」に変えていくための実践の機会、つまり「Negotiation Exercise」が週一回用意されているという点。Exerciseで扱う交渉テーマは、石油の価格設定や、車の部品の価格、あるいは経営者と労働組合との間の賃金をめぐる交渉といった一対一のケースから、環境問題や安全保障といった、国境をまたいだ複数のステークホルダーによる交渉など実に幅広いケースが題材となります。

 ちなみに、この授業をケネディスクールで長年にわたり担当するLinda Kaboolian教授はかつては、労働組合や連邦政府の高官として実際に様々な交渉の最前線に立ってきた人物。しかし、物腰や語り口は実に柔らかで、「授業をとっている学生全員とランチにいく」ことをモットーに、学生との間の対話や交流を非常に大切にしている人でもあるのです。

     

 自分の将来のキャリアに引きなおしてこの授業を考えてみると、今後、官と民、営利と非営利という分野の垣根を越え、共通の社会問題解決に向けた協働を生み出しいくためには、

① 立場が違う者同士が共通のテーブルに付くからこそ生まれる“Value Creation(価値の創造)”と、

② 様々な価値観、思いが錯綜する中で、自らが実現したい価値をしっかりと要求し勝ち取っていく“Value Claiming(価値の主張)”

の二つの要素からなるNegotiation Skillの習得が必要不可欠であり、こうした将来にわたって糧となる知恵を、世界中から集まったクラスメートと模擬交渉を通じて培っていきたいと思っています。

 

Marketing for Non-Profits and Government Agencies(非営利法人、政府のためのマーケティング)

 こちらもケネディスクールに入学する前から取りたいと思っていた科目。民間企業で使われているマーケティング・セオリーの基本を最初の1・2回でざっとおさらいした後、それを禁煙やHIV/AIDS防止キャンペーン等のSocial Marketingや政策立案、あるいは非営利法人のFund Raising戦略などの文脈に応用すべく、様々なケースを使いながら理解を深めていく内容。

 ちなみに、担当のMarla Felcher教授は世界的なお菓子メーカーのNABISOC等の大企業やコンサルティング会社のマーケティング担当責任者を長年務めて来た実務家。

 “政策のエンド・ユーザー”のニーズを捉えるとともに、必要なステークホルダー(利害関係者)をしっかりと巻き込みながら企画・立案をし、そしてエンド・ユーザーに確実に届く実施の体制をつくって行く・・・こんな方向性で、既存の政策の作り方を変えるために必要な知識と見識を深めたい、という僕の問題意識にピタリとはまる内容であり、力を入れていきたいと思います。 

 

◆ Asia in the World Economy(世界経済におけるアジア)

 先学期に引き続き、国際経済の視点から日本をグローバルに見つめ直すというテーマで履修を決めたこの科目。タイトルのとおり、GlobalizationとRegionalizationが同時進行する世界経済におけるアジアの相対的なポジションをマクロ的に鳥瞰した後、個別の産業別にアジア企業の競争力やその源泉を分析し、日本を含むアジア経済の今後の可能性とリスクについて考察していく内容。

 担当するDennis Encarnation教授はケネディスクールとハーバード・ビジネス・スクールで25年にわたり教鞭をとってきたほか、インドネシア、中国、そして日本での経験も豊富で軽妙洒脱なトークで有名な名物教授。

 昨年からHarvard松下村塾で取り組んでいる「アジア経済統合に向けた展望」とも相乗効果を発揮しながら学んでいけそうです。

 

◆ The U.S. Congress and Law Making(アメリカ議会と立法過程)

 アメリカ政治における議会の役割を、州と連邦政府、上院と下院、そして大統領と議会とのパワー・バランスの歴史的な変遷と個別議員のモチベーションに焦点を当てながら解きほぐしていくコース。

 コース前半で習得する知識と理論の上にたつ後半は、担当のKing教授の言葉を借りれば「この教室自体がU.S Congressになる」!?

 学生たちがそれぞれ自分の興味分野やこれまでのキャリアを元に、上院議員、下院議員、ロビースト、マスコミ、議員スタッフとなって、各委員会に登録され、Capitol Hill(アメリカの国会議事堂)で実際に起こっているダイナミズムを体感しながら、自分や自分の選挙区が必要と考える法律を通していく(あるいは阻止する)シュミレーションをしていくとのことで、Negotiationと並び、ケネディスクールのモットーである「理論と実践」の真骨頂を味わうことのできるクラス

 また、この授業を担当するDavid King教授は、大統領選挙で盛り上がる政治系のテレビ番組やニュースに解説者やパネリストして頻繁に登場する人物。田原総一郎と明石屋さんまを足して2で割ったような、鋭く、しかしひょうきんなコメントの連発に教室が爆笑の渦に包まれることもしばしば。

   

 大統領選挙で異様な盛り上がりを見せる「マサチューセッツ州民主党支部」とも言えるケネディスクールで学びながら、これまで一度もアメリカ政治に関する授業をとって来なかったため、最終学期に評価の高いクラスでアメリカ政治の制度面、実態面についての理解を深めたいと思いでとった授業です。

 議員内閣制をとる日本とは異なり、議員とそのスタッフが主導的な役割を果たしつつ、ワシントンDCに居を構えるロビーストたちや様々なシンクタンクとのダイナミックなやり取りを通じて法律が作られていくアメリカ政治の実態を学び、日本の政策決定過程に活かす事のできるエッセンス(あるいはマネをしてはならない失敗)を掴みたいと思っています。

   *                    *                      *

 以上の4科目と修士論文(PAE)、そしてHarvard松下村塾での研究に加え、いよいよ準備が加速してきたKora-Japan Trip2008の企画、さらに3月8日・9日に開催予定のAsia Business ConferenceにおけるCSRに関するPanel Discussion Managerとしての仕事と、これまで以上に超盛り沢山の4ヶ月。

 負荷は恐ろしく高いですが、やりたい事は妥協せずに全力でトライして、そして6月には最高のCommencement Day(出発の日)、卒業式を迎えるべく、この4ヶ月を走り切りたいと思っています。 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『人気Blogランキング』に参加しています。皆さんの応援のお陰で、留学関連の278ブログ中、ランキング1位継続中です!

 「ケネディスクールからのメッセージ」をこれからも読みたい、と感じられた方は、引き続き応援の1クリックをお願いします。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Majorについて (Steve)
2008-02-23 21:53:56
どうも、Steveですm(__)m
お久しぶりです、といっても何ヶ月も前にikeikeさんの高校生時代について質問させていただいたきりなので覚えていないかもしれませんね。

僕は今カナダの大学にapply中で4月頃来るであろうadmissionを緊張しながら待っているところです。

今回は大学関係で質問させていただきたいのですが、僕は最近Investment Bankerになりたいな、と”なんとなく”思っています。というのも、Labに閉じこもっていたりする研究職は嫌ですし、ビジネスをやるにしても欧米の人たちに勝つには金融のほうが適してるのではないかと思って最近はInvestment Bankerに興味が湧いたのですが、ikeikeさんが勉強している範囲で、又は将来働くであろうfieldsで金融知識を備えたエキスパートを必要とするような仕事はあるんですか?

要するに何かおもしろい、やりがいのある仕事はないかな、と思った次第です。あまりにも早くInvestment Bankerに気をとられてそのうちまた他のことをやろうと思ったらもう手遅れになっちゃうのではないか、とか思っているので、今のこの盲目的にInvestment Bankerはお金稼げるんだから良い仕事だ!みたいな状況から抜け出したいんです。。

ikeikeさんが勉強されていることにはとても興味を惹かれるので何かfuture careerについてアドヴァイスを頂けませんでしょうか?

長文失礼しましたm(__)m
返信する
>Steveさん (ikeike)
2008-03-13 17:18:45
こんにちは。コメント有難うございます。修士論文等で忙殺されていてブログの更新もお返事もできずにいました。大変失礼しました。
以前、頂いたコメントも含めてもちろんSteveさんのことは覚えていますよ。とても志と意識の高い高校生だなーと印象付けられていました。
頂いた質問についてですが、金融の知識はビジネスだけでなく、僕が書いているNPOや政府、国際機関においても変化を起こすためにとても重要なスキルだと思います。
ただ重要なのは、金融(お金を必要な場所に必要なタイミング・条件で動かすこと)はそれ自体が目的ではなく、社会のため、他のビジネスのために必要な手段であるということです。
Steveさんがこれから大学に入られることも考えると、今の段階ではInvestment Bankに視点を絞るだけでなく、Investment Bankerがそのビジネスを通じて向き合っている様々な業種や社会の問題に幅広く触れることだと思います。Investment bankに限らず、業態を絞った就職活動の準備は大学3年生の夏以降からで十分間に合うと思います。
最後に、カナダからの合格通知、届くといいですね!Steveさんの更なる活躍を楽しみにしています。また、コメントくださいね!
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。