ハーバード・ケネディスクールからのメッセージ

2006年9月より、米国のハーバード大学ケネディスクールに留学中の筆者が、日々の思いや経験を綴っていきます。

さまよえるPAE。。。

2008年02月01日 | ケネディスクールの授業

 ほぼ毎週のようにやってきたクライアントに対するプレゼンテーションに追われたPAE(修士論文)と、1月7日から18日まで2週間にわたり朝から晩まで大学に缶詰になって取り組んだLeadershipの冬季集中講座のお陰で殆ど休んだ気がしなかった冬休みが終わり、水曜日から雪崩れ込むように春学期に突入してしまいました。

 「アメリカ・イギリス・アイルランド・インド・日本の5か国における民間非営利セクターと、CSR(企業の社会的責任)の取組みの特徴とトレンド、及びそれらを取り巻く制度的・政策的・文化的な背景についての調査」

というテーマの下、3月末の提出期限に向けて冬の間懸命に取り組んだPAEは、正直やや発散気味というか、“迷える子羊”になりかけていて、修士論文の指導教官で、先学期力を入れたPublic Private Partnership(官民協働)でお世話になったAlan Trager教授に先日進捗状況を報告しに行ったところ、

 「ふーん、広範にリサーチしていて非常に興味深いんだが・・・

 So What? (で?)

 って感じだな。君も知ってのとおり、PAEは単なるリサーチ・ペーパーじゃないんだぞ。具体的かつ、クライアントの役に立つ提言(Recommendation)ペーパーであるべきなんだ。今のままだと、方向性がよく見えんな・・・」

と厳しく、しかし至極もっともなご指摘を頂く始末。はぁ、、、僕もそれは悩んでいるところなんですよね・・・と素直に教えを請うと、

 「例えば、Common Impactの主なCorporate Parnte一社、例えばFidelity Investmentにフォーカスしてみてはどうだろうか?

 彼らがCommon Impactを触媒としてアメリカで取り組んでいる「従業員をボランティアとして地元NPOに派遣することで、社会問題の解決に貢献すると同時に、従業員のスキルとモラルを向上させる」というCSR戦略は、君が調査対象国にしているイギリス・アイルランド・インド、そして日本でもアメリカと同じようにワークするものなのだろうか?

 Fidelity Investmentがその4カ国で同様のCSR戦略に取り組もうとした時、どのような可能性とリスクがあるのか、当地の競合他社はどのような取り組みをしているのか。それらと差別化できる望ましい戦略は何か、この当たりを提言していくのはどうだろう?

 君の提言が役に立つモノかどうかを判断するCommon Impactの判断基準は、彼らの顧客であるCorporate Partnerから来るものなのだから。」

という非常に有益な示唆を頂けました。

 「よっしゃ、道が開けてきた!」ということで、この方向性で進めるべくCommon ImpactのVice Presidentにメールを打つと、何やらいつになく長文のメールが返ってきた・・・

 5ミリ程に細まったスクロールバーの横を埋め尽くす濃厚なメッセージは要するに、

 「それじゃダメ

ということ。。。

 曰く、

 「言うまでもなくCSR戦略は、業界ごと企業ごとに様々であるため、今のCorporate Partner一社に絞って提言を行うのは、あなたのこれまでのリサーチの価値を減じることになる。そんなペーパーをもらってもあまり役に立つとは思えない。Fidelityは確かに大切なパートナーだが、彼らのためだけに仕事をしている訳ではないし、彼らが実際に当該4カ国でCSR戦略を拡張して行くかどうかも未知数なんだから。むしろあなたに期待しているのは、今後我々が顧客ベースを広げていく際に活用できる情報リソースの提供とマーケットリサーチなのだ。

 教授はそう言うかもしれないが、今君がやってくれているリサーチは我々にとって十分“役に立っている”。その調子で時間のゆする範囲でドンドンと広げ、そして深めていってもらいたい。うちのCEOもその方向性を望んでいる。

 ・・・

 しかし、それではSo What?の疑問に答えられない単なるリサーチ・ペーパーに終ってしまう。何らかRecommendationを出さないとお話にならんのですけれど・・・と恐る恐る返すと、今度は一言、

 「電話してきなさい。

 という訳で、夜中の10:30から1時間近くVice Presidentと電話で話し合い、ようやく対象となる産業を金融とITに絞って、Trager教授の示した方向性で提言を探っていくことに。

 以上のやり取りは、正にPAEの難しさを象徴しているように思います。

 つまり、修士論文として、大学から、あるいは指導教官から求められる要素と、クライアントが求める要素、そして自分自身の興味・強みや進めたい方向性という3つを上手く合致させる必要があるということ。これが上手くいかないとドツボにはまって、身動きが取れなくなる危険性が極めて高い。

 幸い何とか3つの条件を満たす方向性が見つかりつつありますが、それにしてもCommon ImpactのVice Presidentの即レスぶりにはいつも驚かされます。深夜だろうと土日だろうと即レス。一体いつ休んでいるのだろうか??

 このパワーがEntrepreneurship(起業家精神)のコアなのでしょう。こちらも負けずに頑張らんといけません。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『人気Blogランキング』に参加しています。皆さんの応援のお陰で、現在、留学関連の278ブログ中、ランキング1位となっています!

 「ケネディスクールからのメッセージ」をこれからも読みたい、と感じられた方は、引き続き応援の1クリックをお願いします。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
真剣勝負のトライアングル (kinkin)
2008-02-14 00:01:54
> 3つを上手く合致させる必要があるということ

三者三様ですが、それぞれが真剣勝負なんですネ。
それを一つの方向性にまとめる、なんて不可能なようですが、こうした調整というのもおもしろい知的な作業であろうと思います。
当事者としてのikeike様は大変でしょうが、読んでいるこちらはワクワクします。(^^;;
返信する
kinkinさん (ikeike)
2008-02-17 04:21:31
こんにちは。いつもコメント・激励有難うございます。確かに時間の制約を除けばPAEプロジェクトは非常に学ぶところが多く、エキサイティングなものであり、こういう機会を与えてもらっていることを感謝しなければならないと思っています。
締め切りまで残り1ヶ月と少しとなり、今までの調査内容をまとめるという厳しい段階になりますが、引き続き頑張ります。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。