Johns Hopkins(ジョンス・ホプキンス)大学のCenter for Civil Socitey Studies(市民社会研究所)が2003年4月に公表した民間非営利セクターの国際比較「Global Civil Society Overview」が照らし出したのは、グローバルなレベルで、政府と市場との挟間で確かな存在感を放ちつつ、人々の日常生活・仕事に、そして公の問題解決に大きなインパクトを与えている民間非営利セクターの存在でした。
では、調査対象となった35カ国における民間非営利セクターの状況はどうなっているのか?今日は昨日の記事で紹介したグローバルな民間非営利セクターの鳥瞰図を各国ベスにブレークダウンしていきたいと思います。
まず、対象国の中で労働力人口に占める民間非営利セクターで働く人の割合が最も多かったのは・・・
オランダです(14.4%)。
これにベルギー(10.9%)、アイルランド(10.4%)、アメリカ(9.8%)、イギリス(8.5%)と続き先進国の平均値は7.4%とのこと。
そして日本の状況を見てみると・・・
先進国の平均値を大幅に下回る4.2%、
韓国・イタリアに次ぐ下から3番目、途上国もすべて含めるとちょうど真ん中あたりの16番目に位置します。
次に一年間でボランティア活動に参加した人の割合を見てみると、先進国の平均値は15%。最も参加率が高いのがノルウェーで実に国民の半数以上(52%)がボランティア活動に汗を流しているそうです。これに次いで、イギリス(33%)、スウェーデン(28%)、アメリカ(22%)と続きます。では、我らが日本の状況はと言うと・・・
たったの0.5%。数にすると48万5千人で、先進国ではもちろんダントツのビリです。途上国を入れても下にはパキスタン(0.2%)、メキシコ(0.1%)のみで、下から35カ国中下から三番目という状況です。
では、民間企業や基金、そして個人から民間非営利セクターへの寄付(現金・現物)がGPDに占める割合について見てみるとどうでしょう。上から順に並べて見ようと思います。日本はどの辺りに位置するのでしょうか?
---- Private Philanthoropy Across the World ------------------
Giving(Cash and other property gifts)/GDP
1. United States 1.85%
2. Israel 1.34%
3. Canada 1.17%
4. Argentina 1.09%
5. Spain 0.87%
6. Ireland 0.85%
7. United Kingdom 0.84%
8. Uganda 0.65%
9. Hungary 0.63%
10. Tanzania 0.61%
トップはやはり巨大な基金が存在し、個人からの寄付が盛んなアメリカ。日本は予想通り入っていません。トップ20には入っているでしょうか?
11. Kenya 0.57%
12. Portugal 0.53%
13. Australia 0.51%
14. The Netherlands 0.49%
15. South Africa 0.47%
16. Belgium 0.46%
17. Slovakia 0.41%
18. Sweden 0.40%
19. Finland 0.36%
20. Norway 0.35%
アフリカ諸国をはじめ途上国の名前も出てきました。日本、まだ出てきません・・・
21. France 0.32%
22. Colombia 0.32%
23. Braxzil 0.29%
24. Poland 0.28%
25. Czech Republic 0.27%
26. Peru 0.26%
27. The Philippines 0.23%
28. Pakistan 0.23%
29. Japan 0.22%
30. South Korea 0.18%
31. Austria 0.17%
32. Germany 0.13%
32. Italy 0.11%
33. Romania 0.10%
34. India 0.09%
35. Mexico 0.04%
(Source: Johns Hopkins Comparative Nonprofit Sector Project)
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ご覧のとおり、民間企業、個人からの寄付金がGDP比率で見ても日本は振るいません。こうして見てみると、日本では特定非営利法人(いわゆるNPO法人)、社団・財団法人(民法上の公益法人)、病院、学校、宗教法人など、多様な民間非営利セクターが社会を支えていると言えども、国際的な比較の視点で見てみると、世界第二の経済大国である日本の民間セクターは、政府そして市場(営利企業)という巨大な高層ビルの間に埋もれている小さな一軒家のような存在です。
さらに、多くの社団法人や財団法人がいわゆる「行政委託型」と呼ばれる、関係省庁が自分の政策を実施するために子会社的に作った、さらには天下りの温床となっているとも批判されている政府丸抱え型の存在であることも考慮すると、純粋に民間人の主導による「民間非営利部門」は、さらに発展途上といえるでしょう。
民間非営利部門が全体の労働者数に占める割合、ボランティアへの参加人数、そして寄付のいずれの観点からみても、先進国の中で、あるいは途上国を含めてすら下位に位置する日本。では、その背景はどこにあるのか、次回はこのJohns Hopkinsチームが世に出したこの貴重な調査結果をもとに、僕なりの分析を試みていきたいと思います。
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