石橋みちひろのブログ

「つながって、ささえあう社会」の実現をめざす、民主党参議院議員「石橋みちひろ」の公式ブログです。

孫崎亨さんとの対談が掲載されました(秘書報告)

2013-03-21 10:18:51 | 活動レポート

1月28日の本ブログでご報告
「孫崎亨さんと対談」http://blog.goo.ne.jp/i484jp/m/201301
した記事がNTT労組機関誌『あけぼの』に掲載されました。
その一部をご紹介いたします。

機会がありましたら、ぜひ手にとってご覧ください。
以下、抜粋して紹介します。


対談:これからの政治のあり方
今、戦後政治を見つめ直す 孫崎 享さんと

昨年の発売以来、20万部以上を売り上げ、ベストセラーとなっている『戦後史の正体』。今号では、その著者である、元外務省・国際情報局長の孫崎享さんと石橋通宏参議院議員が、戦後の日本政治をあらためて見つめ直し、これからの政治のあり方について語り合う。

■戦後史の正体
【石橋】 孫崎さんの著作は、外務省・国際情報局長であり大使でもあった経験に基づいて、とてもきめ細かな分析・検証がなされたものが多く、私も興味深く拝読しています。特に、昨年出版されてベストセラーになった『戦後史の正体』は、ご自身も書かれているように、日本の戦後史を「米国との関係」を軸に見つめ直したもので、とても刺激的な内容でした。
【孫崎】 『戦後史の正体』は出版社から、高校生でも分かる「冷戦後の日米関係」について書いてもらえないかと要請されて書いたものです。
ただ、冷戦後の日米関係については、二〇〇九年に出版した『日米同盟の正体』の中で、すでに書いていたこともあり、どうせ書くなら第二次世界大戦の終了から現在までの日米関係について整理してみたいと思ったのです。
(略)
【石橋】 とても興味深いのは、日本の政治を「対米追随型」に誘導するシステムが、日本の中に、システムとして組み込まれていると孫崎さんがおっしゃっている点です。
【孫崎】 言ってみれば、「自主路線派」の首相を引きずり下ろすためのシステムです。一つは、検察です。特に、特捜部は、戦後いく度となく政治家を起訴していますよね。特捜部の前身は、GHQの指揮下にあった「隠匿退蔵物資事件捜査部」ですから、つくられた当初から、GHQ、すなわちアメリカと深い関係を続けてきました。
もう一つは、報道・マスコミです。アメリカは、日本のマスコミが果たしている役割の大ききを認識していますし、大手マスコミの中にアメリカと特別な関係を持つ人たちを育ててきました。
また、外務省や防衛省、財務省などの主要官庁、そして大学などのアカデミックな世界にも、そういったアメリカ追隋派の人たちが育てられています。
そうしたシステムを使って、アメリカ追随でない自主派の政治家を追い落としてきたのです。例えば、大手マスコミが、「今度の首相は、なかなかアメリカの大統領と会えない」と報道すれば、それだけで、その政権はもたなくなりますよね。
(略)
■情報通信への影響
【石橋】 『戦後史の正体』の論点の一つに、「米国の意向」による日本の政策・制度への影響があります。
私が長年関わってきた情報通信産業について言えば、一九八五年の電電公社の民営化や、その後の自由化・競争化政策も、相当にアメリカの意向が反映されたものではなかったかと思っています。
特に、民営化以降の情報通信政策は、アメリカからのさまざまな要求や要望にさらされて、規制政策や競争政策が影響を受けてきました。
結果だけ見れば、その時々の日本政府は、国際的な流れの中で、アメリカの要求をある程度、取り入れざるを得なかったのではないかと思います。一方で、『戦後史の正体』では外務官僚の例が登場しますが、総務官僚の中にも日本の国益を第一に考えて行動しようとした人、つまり、米国の要求に抵抗した人もいたのではないかと思います。
(略)
結果としては、民営化以降、外国からの新規参入も含めて、多数の事業者による過酷なまでの市場競争が生み出されたわけですが、それでもアメリカの要求がすべてそのまま通ったわけではなかったと思っています。
ただ、当時世界でも最高水準にあったNTTの研究所等、日本の技術力の高さを考えれば、もし八〇年代以降、違った競争政策が取られていれば、世界の情報通信市場における日本の事業者のプレゼンスも、今とはかなり様相が違ったのではないかと思います。
【孫崎】 以前、ある家電メーカーの人も同じようなことを言っていました。アメリカの要求で、日本の家電メーカーの国際競争力が弱められたと。
【石橋】 そういう意味で、『戦後史の正体』は外交面での話ですが、深く読んでいくと、情報通信産業の経験とも重なり合って、この間の流れがよく分かります。情報通信は、アメリカにとっては戦略的に大変重要な産業ですから、その主導権を日本に取られてはいけないという思惑も働いたのではないでしょうか。
■金融・経済面での圧力
【石橋】 『戦後史の正体』では、金融や経済分野でのアメリカの圧力にもふれておられます。
【孫崎】 一九八五年の「プラザ合意」や一九八八年の「BIS規制」等ですね。
ご存じのように、「プラザ合意」以降、日本経済は低迷してしまいます。この「プラザ合意」によって、急激な円高が進められました。その結果、アメリカへの輸出に歯どめがかけられ、輸出が難しくなった日本企業は海外に進出するようになります。そして、日本経済の空洞化が始まったのです。「BIS規制」は、国際決済銀行による銀行の自己資本比率に関する規制で、総リスク資産に対する自己資本率は八%と決められました。仮に、八%ないと、その銀行は国際業務からの撤退を求められます。ところが、当時の日本の銀行は自己資本率が低く、八%に届かなかったのです。
なぜ、そのような決定がなされたのか。詳しくは、『戦後史の正体』に書きましたが、要するに、当時の高騰した日本の土地を担保にした日本の銀行の貸付能力に不安を感じたアメリカによる対抗手段だったのです。これらアメリカの圧力で、日本経済は弱体化を余儀なくされました。
■雇用・労働慣行の転換
【石橋】 労働・雇用分野でも、アメリカの影響による変化は大変大きかったと思っています。この二〇年間で、日本の雇用・労働慣行は、どんどん切り崩されてきました。私は、終身雇用制や年功賃金は、戦後日本の成長に寄与してきたと思っています。
それを一番変えたのが、橋本行革から始まり、小泉・竹中路線に受け継がれた新自由主義的な構造改革路線ですよね。それも、アメリカの影響によるところが大きかったのではないか─。最も大きいのは、日本の産業力の源泉であった雇用の安定と、労働者の能力形成の仕組みが壊されたことではなかったでしょうか。
(略)
また、非正規労働者の拡大や、これは労組自身の責任もあると思いますが、労働組合の組織率の低下も、この流れの中にあります。
【孫崎】 実は、『戦後史の正体』では、今、石橋さんがおっしゃった一九八五年以降の雇用・労働問題や労働運動について、もう少し踏み込んでみたかったのです。
例えば、今、憲法改正を声高に主張する勢力が拡大しています。当然のことながら、このこともアメリカと無関係ではありませんよね。
以前であれば、健全な反対勢力があって、何から何までアメリカの主張を受け入れることはなかった。その一つの基盤が、総評を代表とする労働組合でした。
総評は、企業利益ではなくて、もっと広い観点から日本のあり方を考えていましたし、国民運動を引っ張っていたイメージはありますね。
一九八五年からの日本の変化の一つとして、リベラル勢力が縮小されていった。これが、今日の政治に大きくつながっていると思っているんです。
【石橋】 ぜひ、孫崎さんには、その部分を研究して『戦後史の正体』の第二弾を出していただきたいですね。
(略)
■普天間問題を考える
(略)
【石橋】 これだけ普天間基地の問題が大きく取り上げられているのに、なかなかそれが国民的な議論になっていかないところには私もジレンマを感じています。
NTT労働組合は、長年にわたって沖縄の痛みを共有し、負担軽減へとつなげるために、平和運動の大きな柱として、組織的な取り組みを行なっています。それがもっと大きなうねりになって、国民全体でこの問題を真摯に考えるようにならなければいけないと思うのです。そうなってこそ、解決の道が見えてくるのではないでしょうか。
【孫崎】 一方で、私たちにとってプラスの材料がないわけではありません。
その一つは、アメリカ国内で、日本の右傾化・軍事力強化は由々しき状況になりつつあるとの考え方が広がっているのです。アメリカは、これまで軍産複合で日本を動かしてきました。しかし、経済などの米中関係を見た場合、これからは、そうではないと。こういった一連の流れが、安倍さん自身は米国で歓迎されていると思っているのに、実際には、歓迎されていないという現象にもつながっているのではないでしょうか。
ちなみに、現在のヘーゲル国務長官はアイゼンハワーを見習えという主義だそうです。
【石橋】 『戦後史の正体』で、アイゼンハワーは、軍産複合を問題視していたと指摘していますね。
【孫崎】 まさにヘーゲル国務長官が今、そう言っていると。実際に、彼が沖縄問題でどう動くかは不確かですが、軍産複合を問題視する勢力が出てきているのは事実でしょうね。
【石橋】 私たちも、そういう米国の動きも見極めながら、今後の対応を考えていかなければなりませんね。
本当は、このほかにも、孫崎さんにお聞きしたいことがたくさんありました。
特に、尖閣諸島や竹島の問題、さらには、今後日本が進むべき外交スタンスなどです。沖縄の問題についても、まだまだ議論が足りない部分がありますし、第二弾が実現するよう、編集部に要請します。その時は、ご了解ください。
【孫崎】 喜んで出席したいと思います。
【石橋】 本日は、お忙しい中、ありがとうございました。

【孫崎享さん略歴】
1943年旧満州(中国東北部)生まれ。1966年、東京大学法学部中退、外務省入省。英国、ソ連(ロシア)、米国、イラク、カナダ勤務を経て、駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使。国際情報局長時代は、各国情報機関と積極的に交流。2002年から防衛大学校教授。この間、公共政策学科長、人文社会学群長を歴任。2009年3月に退官。1993年に上梓した『日本外交 現場からの証言 握手と微
笑とイエスでいいか』(中央新書)で山本七平賞を受賞。2012年に発行した『戦後史の正体1945-2012(「戦後再発見」双書1)』(創元社)(写真)は、20万部のベストセラーに。この他、『日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土』
(ちくま新書、2011年)、『不愉快な現実 中国の大国化、米国の戦略転換』(講談社現代新書、2012年)など著書多数。


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