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「ブルックリンの少女」  ルイーズはそれらページのあいだに生きていた

2019年04月01日 | もう一冊読んでみた
ブルックリンの少女/ギヨーム・ミュッソ  2019.4.1

 「アンナ、真剣な話だが、ぼくは嘘を抱えながら生きていけないと思う」
 「ちょうど良かった、わたしも同じ考え。でもね、嘘をつかずに生きることは、秘密を持たないことといっしょではないでしょう」


ギヨーム・ミュッソの 『ブルックリンの少女』 を読みました。
ミュッソの作品を読むのは、初めて。
彼は、「今、フランスでもっとも人気のある小説家のひとりである」、とのことですが、「ブルックリンの少女」を読んで納得。
テンポの速い展開。読みやすさ。教養の豊かさや場の臨場感など、読んでいて本当に楽しい。

読み終わって、すぐに思ったことは......> 誰しも思うことは同じ。

 結末とその後を読者に委ねるというのは珍しいスタイルではないが、本書の最終章に納められた断片のいくつかは、ギヨーム・ミュッソならではの胸を衝く美しさに溢れ、そのままいつまでも浸っていたい気持ちにさせる。 (訳者あとがき)

子供は、愛情豊かに育てなければならないと言うけれど......>

 地獄に落ちてみると、幸せな思い出の蓄えがあることの大事さが分かる。わたしはそれをいつも頭のなかに思いうかべる。寒さと怖さを和らげるために。


 ルイーズはそれらページのあいだに生きていた。

ぼくにも、娘がひとりいます。
マルク・カラデックの絶望感、悲しみ、いたたまれなさが分かります。 涙が出ます。

 父親になることを熱望したのもそれが理由だった。子供を持つことは、面倒なノスタルジーとひからびた新鮮さに対する解毒剤である。子供を持つことは、重すぎる過去を切りすて、己を明日に向かわせるためにあるひとつの方便かもしれない。子供を持てば、過去より未来がより重要になるということだ。子供を持つのは、もはや過去が未来に打ち勝つなどありえないと確信することでもある。

そんなマルク>

 今、マルクは目がかすむのを感じた。ああいうのは人生で一時期しかありえないが、当人がその時点でその価値に気づくことは滅多にない。人生の難しさのひとつだ。

 「助けが要るのはおれも同じさ。鬱症状に幻覚、不安発作、対人恐怖症、要するに極限の苦しみ、おれもそれを体験してきた」

 男女は『いっしょにいてと言われたら逃げる。近寄るなと言われると追いかける』という関係だとよく言うだろう。それがずばりおれたちだった。

 「そんなことはない。ただし、ひとつだけ頭に叩きこんでおくべきことがある。警察というものは、『タンタンの冒険』のハドック船長の絆創膏と同じで、一度くっついたら絶対に離れない。

ぼくが教養豊かと思う場面は......>

 「ゴースト、つまり幽霊。戯曲論の教授たちが用いる言葉で、転換をもたらす出来事、登場人物に現在もとりついて離れない、過去に根ざした精神の動揺を指しているんだ」
 「当人の弱点、アキレス腱というわけだな」
 「ある意味でそうだ。登場人物の歴史におけるひとつの衝撃、抑圧、そのパーソナリティーの主要因となる秘密、精神状態、内面性、さらに多くの行動も含まれる」


 どんなことにも覚悟ができている思っていた。すべて想定済みのはずだった。けれども、あれは想定外だった。

ぼくが、この作品でもっとも興味深く、感動した人物、それはマルク・カラデックでした。
みなさん、彼の人生をのぞいてみて下さい。

また、登場人物達には、それぞれどのような人生が待ち受けていたのか......

        『 ブルックリンの少女/ギヨーム・ミュッソ/吉田恒雄訳/集英社文庫 』



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