保津川下りの船頭さん

うわさの船頭「はっちん」が保津川下りの最新情報や、京都・亀岡の観光案内など、とっておきの情報をお届けします。

京都大学・生存研ユニットの定例研究会に出席。

2010-09-27 23:59:28 | 京都大学
先週末、滋賀県守山市にある京都大学・生存基盤科学研究ユニット
「守山フィールドステーション」で開かれた「定例研究会」に出席してきました。

この定例研究会は、京都大学東南アジア研究所・実践型地域研究推進室に
設けられた滋賀県守山、朽木、そして京都府亀岡の京滋地域拠点室に
所属する研究者が一同に集まり、現在進めている調査・研究の報告を
行う会で、守山フィールドステーションの研究施設において
月一回のペースで開かれています。

このブログをお読みいただいている皆さんは、少し驚かれるかもしれませんが、
実は保津川遊船の船頭から河原林 洋氏と私の二人が京大・東南アジア研究所の
研究員として勤務しており、地元亀岡・丹波・京都市右京区を主に、地域の課題や
問題点を導き、克服、解決にむけた実践スタイルの地域研究を進めています。

今月は滋賀県朽木フィールドステーションで進められている
「伝統の焼畑農法による山間地の生産力増進研究」の発表で、
今夏実施した焼畑作業の方法及び成果に関し、実践技術の解説と
土壌学の視点から科学的検証の報告も行われました。

それまで生産力が低かった急傾斜地である山肌の実験地を、笹や杉枝を
塗して燃やし、作物が育つ土壌力を生み出すといわれる焼畑農法。
火が消えた後、温かい内に鍬を入れ起耕し、播種をただちに行うことで、
貧困だった土壌が活性化され、ヤマカブラや大根など大量に採取できる農地
に生まれ変わったのです。しかも、肥すらいらない。
この研究が今後、進んでいけば、これまで、農地として生産性の低い地と
考えられてきた山間地が生まれ変わり、過疎化による放置林や耕作放棄地
が増えている日本の山間地に人の関心を呼び込み、後継者となる若い世代を
呼び戻すことで再生をはかることもけして夢ではないでしょう。


近年の地球環境問題は近代科学文明による成長の限界を予感させ、
今後、人類の生存基盤を確保するために、地方と都市をつなぐ
循環型社会の再生を真剣に模索必要がある時代に入っているとも
いえなくもないです。

そんな時代に、各地域で長い時間をかけて蓄積された、生存するために
必要であった知恵や技術、営みを調査研究し、実践による再生を試みる
ことは、過去を未来へつなげる作業でもあると考えます。

大学では、既成の学問的な枠にとらわれず、自由な発想をもとに、
従来の個別学問を基にする普遍化した地域研究から、地域オリジナルの
個性や先人、現住民が培う問題克服力や解決力に重点を置いた新しい
地域研究の道筋を確立していくことを、この生存基盤科学研究ユニット
には期待しているのです。

私も船頭と研究員という全く異なる二つの仕事をこなしていく訳ですが、
好奇心と向上心を忘れることなく、先人の船頭が舟の曳き上げ作業の時に
綱道を歩くに必要であった‘二束のわらじ’をしっかり履き切って
歩いていきたいと思っています。

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