以前のブログでもちらりと紹介しましたが、
アトリエインカーブは障害をもった方のための福祉施設であり、彼らをアーティストとして作品制作を行うアトリエとして運営されているところです。
福祉施設でアートを使った活動をされているところはたくさんあるようですが、ここアトリエインカーブはそんな生易しいところではないようです。主宰されている今中博之さんは以前勤めていた会社の先輩でもあるので、小耳に活動の端緒はお聞きしていましたが、今回この本を読んで、激しい戦いの様子を伺い知ることができました。
熱い内容で一気に読んでしまいましたが、冒頭から私は涙してしまいました。。(読書で泣くのは何年ぶりでしょうか)
障害をもって生まれるということは、本人にしかわからない苦難や葛藤、悲しみがあると思うのですが、今中さんも書かれていましたが、障害なんてこの星(地球)の多数の人たちとちょっと違った心や形をもって生まれただけのことで、それが劣ってるなんて思うから歪んだ福祉になるのだ。。と。みな少しずつ障害はもっているし、日本だって障害をもっている。そのとおり。
でも悲しいかな、教育や制度によって、多数の人はいわゆる障害をもった方をかわいそうになんて上からの目線で見たりするようになってしまうのでしょう。障害をもった方は、その足りない部分を補うかのように、別の部分が発達する(目の見えない人の聴覚が優れているなど)という話をよく聞きますが、アトリエインカーブにいるアーティストも障害はあるが、逆に特別な才能ももっている面ももちあわせているのです。
今中さんは以前の会社でデザイナーとして10年以上のキャリアをもちながら、数々の賞も獲得されていましたが、一方で色や形や流行を追い求める空間デザインという仕事に限界を感じ、もっと大切なデザインの仕事を。。と現在のような活動をはじめられました。
この本でデザインとは、モノやコトの観方を換えることで「観点変更」と呼ぶ。と言われてますが、それも納得。
以前、今中さんから学校の先生にデザインとは「整理整頓すること」と聞いた。という話もよく覚えていますが、それもひとつ。デザインとは決して、色や形を操ることではないことは、明白です。
教員として、授業でも「デザインとは?」と毎年学生たちに問いかけますが、誰も応えられません。。デザインとは物事を深く考え整理整頓し、そこに観方を換える企てをすること。。それが結果として色や形になる場合もあるし、目にみえない制度やシステムの場合もあるし。。
今中さんは福祉とアートをデザインすることに挑戦しておられます。
私も建築を通して、建築そのもの、学校における建築教育、広く一般のまちや建築そのものもデザインしていくことに、もっと挑戦しなければと思いました。今中さん、ありがとうございました。