ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

子どもたちの学力が心配だ、特に数学が!

2010-11-26 20:05:18 | 社会
小学生や中学生の学力低下が心配されているのは日本だけではなく、フランスも同じ課題を抱えているようです。鏡に映る国同士のように、相異なることの多い日仏両国ですが、子供の学力については、同じ悩みを抱えている! それも、特に数学について! 24日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

文部省の2008年の調査によると、中学校(le collège)卒業時に、数学の基礎をきちんと身につけている生徒は、56%にすぎない。残りの44%は、義務教育卒業時に必要とされる知識と技能に相当する基本的な質問ですら、しばしば間違えてしまう。

このことが今、特に心配されているのは、義務教育を修了するにあたって必ず身につけておかなければならない基本的能力が、2011年からは終了証をもらうための必須条件になっているからだ。その基本能力があることを証明できなければ義務教育修了の資格を得られなくなってしまう・・・フランスは階級社会で、階級を規定する物差しの一つが学歴ですから、コレージュの卒業の資格がもらえないとなると、その後の人生、かなり暗くなってしまいますね。

44%の子どもたちは簡単な問題しか解くことができず、時間、距離、体積といった概念を操って問いに答えることができない。特にひどい15%の生徒たちは、コレージュでの授業をほとんど理解していない。簡単な加算乗除や幾何学的な形の特徴といった直感的に答えられる質問にしか正解を出せない。しかもそうした答えがどのように導き出せるのかといったことについては、まったく理解できていない。

しかも、大きさの順位づけとか円の面積といった問いが、中学卒業を迎えようとしている生徒たちにとって、程度の差こそあれ、難問になっている。コレージュを卒業する生徒すべてが理解できているべき問題に正解を出せないでいるのが現状だ・・・日本でも、大学の教養課程で、高校とかあるいは中学で学んだ筈のことを復習させざるを得ない現状が、時々メディアによって紹介されていましたが、義務教育卒業時の学力、日仏ともに心配な状況なのですね。

数学でもう一つ懸念されているのが、暗算。電卓に取って代わられてしまったせいか、暗算力の衰えている生徒が増えている・・・これまた、日本でも同じ状況ですね。レジスターがないと釣り銭がいくらになるか分からないレジ係もいるのではないでしょうか。でも、電卓があるから安心? いやいや、電卓があっても、簡単には解決しません。仮に、1個650円のケーキを4個買って5,000円札で客が支払ったとしましょう。お釣りはいくらになるのでしょうか。電卓があっても、“5,000-650X4”ができない! そんなバイト学生に2度出くわしたことがあります。こうした数式が頭の中でできないのか、この数式を電卓で計算できないのか、いずれにせよ電卓も宝の持ち腐れ。まして、暗算など、期待する方が間違い・・・

一方、中学生の20%から30%は学校以外で週に1時間から3時間、数学の勉強を手伝ってもらっている・・・日本で言えば、学習塾や家庭教師になるのでしょうか。子どもたちの学力低下、その責任はすべて子供たちにあるとは言い切れないと思います。カリキュラムの問題もあるでしょうし、家庭での学習環境、学校の授業の進め方などにも改善の余地があるのだと思います。予備校の講師を招いて、教え方セミナーを開いた学校があると、随分前にテレビで見た記憶があります。授業料を払って通って来る子供たちにきちんと成果が現れるように教えないと、アンケートなどを通して評価が下がり、給与も下がる。解雇される恐れもある。こうした厳しい環境にある予備校の教師たちは、教え方に工夫を凝らす。そうした工夫が学校では足りない。そんな内容だったと思いますが、こうした学校で教える側の課題、これまた日仏共通なのかもしれません。

いろいろな要素、さまざまな原因があっての学力低下なのでしょうが、現実は現実。子どもたちの学力が、少なくとも相対的には低下しているる、それが日仏両国の現状です。例えば、“PISA”(Program for International Student Assessment:OECD生徒の学習到達度調査)
によると、2000年、2003年、2006年における中学生の数学リテラシー、その順位は・・・

2000年:①日本 ②韓国 ③ニュージーランド (10)フランス
2003年:①香港 ②フィンランド ③韓国 (6)日本 (16)フランス
2006年:①台湾 ②フィンランド ③香港 (10)日本 (23)フランス

わずか6年で、日仏両国とも、順位を大きく下げています。数学リテラシーが衰退している。PISAは「義務教育修了段階で身につけた知識や技能が実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを評価」(Wikipedia)しているわけですから、数学リテラシーが低いということは、実生活で数学的素養が必要になった場合、対応できないということになります。暗算はもちろん、電卓すら使えない販売員・・・これはもう立派な社会的損失だと思えてきます。

数学苦手の典型的文系人間である私が言うのもおこがましいのですが、将来の日本社会のためにも、子どもたちの数学力、改善しないといけないのではないでしょうか。フィンランドやニュージーランド、そして近隣の台湾・香港・韓国がPISAで良い結果を残しています。学ぶべきは学んで、ぜひ改善していってほしいものです。学ぶことに積極的で、また学ぶことがうまい国民性を日本は持っているのですから。変な自尊心は捨てて、謙虚に、ぜひ。

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