ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

国旗に手をかけるとは、なんと不届きな!

2010-12-26 21:28:30 | 社会
国旗と言えば、すぐ思い浮かぶのが、オリンピック。会場にも掲げられていますが、何と言っても、表彰式。スルスルっと上がっていく国旗の映像にオーバーラップして、メダルを胸に笑顔いっぱいの選手、あるいはうれし涙にくれる選手の顔が映し出される・・・感動的なシーンですね。

国を表すから国旗なわけですが、日章旗(日の丸)が法律上、正式に国旗に制定されたのは、ご存知のように1999年の国旗国歌法によって。ずいぶん遅い制定ですが、一方、フランスの三色旗(トリコロール)はずっと早く、フランス革命の最中、第一共和政の下、1794年に制定されています。

青が自由、白が平等、赤が友愛を現すという説は、実は俗説。実際には、白がフランス王家(ブルボン朝の象徴である白百合)、赤と青がパリ市(フランス革命の際に革命軍がつけていた帽章)で、その三色を並べることで王家とパリ市の和解を表しているそうです。

この三色旗に手荒な態度を取ったとして罰金刑に処せられた男がいる・・・22日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

男の名は、サイディ(Abderramane Saïdi)。フランス南東部、イタリアと国境を接するアルプ・マルティーム県(Alpes-Maritimes:県庁所在地はニース)に住む26歳のアルジェリア人。県庁のホールにあるフランス国旗をつかみ取り、旗竿をまっ二つにへし折った。その折れた旗竿を窓口で業務に当たっていた職員に投げつけた!(これだけでも事件ですが)さらに駆けつけた警官二人に殴りかかったが、ついに取り押さえられた。

どうして暴れたかというと、サイディの弁護士曰くは、県庁職員のぐずぐずした仕事ぶり、遅々として進まぬ事務処理に数か月来悩まされていたが、ついに堪忍袋の緒が切れて、思わず暴れてしまった。県庁は、ストレス、遅滞、衝突に満ち満ちている・・・(TF1のニュース番組によると、滞在許可証の件で何度も県庁に来ていたそうですが、きっと、なかなか埒が明かず、うんざりしていたのでしょうね。お役所に限らず、フランスの窓口という窓口のいい加減さ・・・実感した人も多いことでしょう。悪夢です。)

怒りを国旗にぶつけてしまった・・・県庁サイドは、公共財の破壊、国家シンボルの破損、国旗への侮辱だ! と、サイディを告訴。その結果、怒りにまかせて暴れたつけが、執行猶予付きの750ユーロ(約82,000円)の罰金刑!(しかし、この程度の事件が新聞やテレビで取り上げられるとは、クリスマス休暇前で、フランスはよほどニュース枯れだったのかと思いきや、実は・・)

国旗に対する侮蔑的な行いに対しては、最高1,500ユーロまでの罰金刑に処すことができる、という法律に基づいてサイディは処罰されたわけだが、この法律は今年の7月に制定されたばかりで、今回の事件が適用された初めてのケースだった。(なるほど、そのせいでこの程度の事件が全国ニュースになったわけですね。)

サイディを訴えたのは県庁だけではなく、取り押さえようとしてもみ合った警官、当たらなかったものの折れた旗竿を投げつけられた職員も告訴。ニースの軽罪裁判所は、750ユーロとは別に、反抗罪で執行猶予付きの禁固4カ月と市民研修を受けることを命じた・・・

というのが事の顛末。イタリア、ルーマニア、メキシコなどの国旗にも影響を与えたというほど国旗の制定は早かったフランス。しかし、その国旗を守る法律はやっと成立したばかりなのですね。愛国心の強いフランス人のこと、三色旗に怒りをぶつけるような人はいなかったのかもしれません。それが最近制定されたのは、移民や外国人住民が増えたせいでしょうか、あるいは右翼票を狙って現政権が昨年来喚起していたアイデンティティ論争の影響なのでしょうか。

国旗をめぐる問題、いろいろな国に、いろいろな形であるようです。

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