ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

取れるところから、取れ・・・外国人への増税。

2010-09-15 18:06:37 | 社会
ロマの国外追放で、さまざまな批判にさらされているフランスですが、追放しているのはロマの人々だけではなく、多くの不法滞在外国人も国外に追放しています。追放者の目標数まで決められていて、目標を見事にクリアした部署のトップには昇進の可能性も。まるで、民間企業の営業部門のよう・・・

外国人として異国に暮らすのは、何かと心細いものです。正式にビザを取っての滞在でも、滞在許可証への書き換え、その延長、所得申告、納税、社会保障・・・何か不備があれば、滞在許可も取り消され、国外退去に。どうしても、当局に対して弱腰になってしまいます。そんな外国人の気持ちに付け込むかのような増税がフランスで行われました。

伝えているのは、ル・モンド(2日・電子版)。「正規滞在の外国人が支払う税が大幅アップ」(Forte augmentation des taxes dues par les étrangers en situation régulière)。

まったくと言っていいほど一般フランス人の耳目に触れることはなかったが、6月24日の政令で、正規に滞在する外国人(EU加盟国出身者を除く)が滞在許可証に関して支払うべき税金が大幅に引き上げられた。

滞在許可証を初めて発行してもらう際に支払う税金が、300ユーロから340ユーロ(約37,000円)へ13%の値上げ。滞在許可証の更新時は70ユーロから110ユーロ(約12,000円)へ57%ものアップ。

10年ビザは管轄する知事の判断に委ねられており、結果として毎年更新する一時的ビザで滞在する外国人が多くなっている。従って、毎年110ユーロ支払わざるを得ない外国人が多くなっている。

どれくらいの人数がいるかと言うと、2008年には、81,000の滞在許可証が新たに発行され、更新された滞在許可証はおよそ50万部。従って、滞在許可証関係で2,100万ユーロ(約23億円)ほど多く国庫に入る勘定になる、ということだそうです。

移民に関する支援や情報提供を行っている“le Gisti”(Groupe d’information et de soutien des immigrés)は、経済危機により一層きびしい生活苦に直面している外国人からさらに税金を徴収しようとしているのはけしからん、とこの政令を強く非難しています。

因みに、フランス人が身分証明書を発行してもらうのは無料ですし、10年有効のパスポートは86から89ユーロ(約9,700円)で発行してもらえるそうです。フランスはフランス人のためにある。フランス人に対してより優しい施策を行うのは当たり前だ、ということでしょうか。その分、外国人には厳しい・・・

もうひとつ、因みに、ですが、フランスに1年以上滞在する場合に必要な一時滞在許可証。どのような種類があるかというと・・・

●一時滞在許可証(carte de séjour temporaire)
・就労ビザ(salaire / détaché / travailleur temporaire)
・ビジタービザ(visiteur)
・アーティストビザ(artiste sous contrat)
・自由業ビザ(profession libre ou indépendante)

フランスに暮らし始めてすぐに取得しなければならない滞在許可証。西も東も分からないうちですから、ものすごく大変ですね。しかも、毎年の更新。要求される書類も多く、面倒ですが、怠ると、国外退去。外国に暮らすのは、何かと大変です。そこへ、外国人だけを狙った増税。

長年の移民受け入れの経験から滞在外国人に対して何かと厳しいのか、サルコジ大統領の保守票欲しさの一時的な措置なのか。でも、一般のフランス人にはほとんど知られていない増税ということは、ロマの追放とは異なり、有権者向けの選挙対策ではないようです。取れるところから取ってしまえ、ということなのでしょうね。それに、フランスに住みたいという外国人は多いですから、嫌なら出て行け、ということなのでしょう。

一方、我らが日本のなんと優しいことか・・・子供手当や生活保護をはじめ、長期滞在外国人にやさしい措置がいろいろありますね。何らかの戦略に基づく措置なのか、制度上の不備が結果として外国人にやさしい施策となっているのか。滞在外国人を増やし、社会の活性化、経済成長の原動力の一つにしたいといった戦略が明確にあるのならいいのですが。単なる不備なら、政治・行政にもっとしっかりしてもらわないと困りますね。

長期滞在外国人とどう付き合うのか・・・隣り近所付き合いだけではなく、さまざまな面から検討することが必要なようですね。

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