ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

世界の若者たちは、何を夢見ているのか――②

2011-01-28 20:08:50 | 社会
21日の『ル・モンド』(電子版)が紹介している政治改革財団(la Fondation pour l’nnovation politique)の行った世界の若者の意識調査、一覧表で明示していない部分もあるようで、『ル・モンド』の記事は文章でまとめています。

自分の現実の生活全般について、83%のフランス人は満足しており、ヨーロッパの平均(78%)より高い数字になっている。項目ごとでは、家族(85%)、健康(83%)、友人(79%)、自由な時間(73%)に関する満足度が高い。また、自分の人生を満足させる要素としては、家族を持つことが47%で最も高くなっており、逆に、お金を稼ぐこと(14%)や自由を実感すること(18%)は低くなっている。

「自分の国に自信」を持っているのは、何と言っても、中国だ。将来自分の国がより重要な役割を果たすだろうと思っている中国の若者は84%に達し(アメリカ人は76%)、自国の富に信頼を寄せるのは57%(アメリカは31%)。「個人的に今後15年で成し遂げたいこと」は、お金を稼ぐことが64%(アメリカは53%)、家を持つことが63%(アメリカは55%)、起業することが40%(アメリカは17%)・・・起業して金持ちになることが夢! そうなんですね、鶏口となるも牛後となるなかれ。中国でも、タイでも、地元のスタッフから言われました、どうして日本人は一生、人に使われる立場で満足できるんだ? 大して給料も上がらないのに、どうしてそんなに一所懸命に働くんだ? 自分の会社を持てば、自分の全てを活かすことができるし、その報酬もより大きくなるのに・・・みんな起業することが夢なんですね。その夢に賭けるか、失敗を恐れて小さな安心で満足するか。ある程度のノウハウを習得すると、別の会社のノウハウを求めて転職する。そして自分なりのビジネス・ノウハウが身に就いたと思うと、起業。そして、サクセス・ストリー。すでに中国には多くの起業して成功した富裕層が登場していますね。

「就職」に関しては、みな楽観している。全体の70%が将来いい職につけると思っている。例外が一カ国。日本だ。いい職につけるだろうと思っている日本の若者は、わずか32%。25カ国平均の半分以下・・・就職氷河期とか言われているわけで、当然と言えば当然の結果なのですが、これじゃ、明るい未来なんか持てないですよね。一に雇用、二に雇用、三に雇用、というスローガンは、どこへ行ってしまったのでしょう。なお、「いい職」かどうかを判断する際には、給料の良し悪しが最も大きなファクターになるそうです。

どんな「集団への帰属」が大切かという質問には、全体では人類(81%)、国籍(70%)、民族(53%)、宗教(43%)という順になっている。そのうち、国・国籍へのこだわりは、モロッコ(87%)、イスラエル(85%)で高く、ヨーロッパ平均(66%)、フランス(63%)、日本(54%)で低くなっている・・・今の日本では、スポーツの国際大会とかの時にしか、祖国愛も高揚しないのかもしれないですね。そう言えば、竹島、尖閣諸島に関しても、そう事を荒だてないで、そんなにほしいならあげれば良いのに、という意見の人も結構いたりしますものね。

「家族」の価値については、高く評価する若者が多い。インドでは98%が家族と過ごす時間が大切だと述べている。最も低い数字は、日本で79%。現実の家族に関しても、高い評価が多い。インド人は90%、アメリカは87%、ヨーロッパ平均で85%が実際の家族に満足している。満足度の最も低いのも日本で、69%だ・・・家族と過ごす時間を大切にする気持ちが少なく、実際の家族関係にも満足していない。気持ちが先か、実体が先か。ニワトリと卵のようですが、少なくとも「家族」がうまく機能していないことは事実なのでしょうね。

現実の社会で、「精神的価値」を大切にすべきかどうか。ヨーロッパの平均は44%にすぎないが、中国では89%、ロシアで88%、モロッコは84%、トルコで81%が精神的価値は大切だと答えている。ただし、ヨーロッパの中での乖離が大きい。フランスとドイツが精神的価値を認める層が最も少なく、わずか31%・・・フランス人は精神文化が好きだと思っていましたが、実際はこんな程度なんですね。一方、人生、お金を稼ぐことだという中国人が、精神的価値を最も大切にしている。一見矛盾しているようですが、精神性を大切にするという伝統的価値観(これに惹かれる日本人が多いですね)と、拝金主義とも言うべき現代の価値観が、きっと一人の中国人の中でうまく同居できているのでしょうね。そして、その中国人に現れる、伝統的価値と現代的価値、どちらを見るかで好き嫌いが決まることも多いのではないかと思います。

政治や政治家への信は大きく揺らいでいるが、「民主主義」への信頼はまだ揺らいでいない。全体で81%の若者が、投票は義務であると認識している。また、「市民としての義務」を果たすべきと考えているインド人は94%に上り、トルコで92%、メキシコで90%と高くなっている。

一方で「軍隊」を容認する層も多い。一カ国を除いて、各国40%以上の若者が軍隊への信を表明している。その例外は日本で、36%と低い数字。他に低いのは、ロシアで41%、ドイツが43%だ。逆に高い数字は、インド(93%)、中国(84%)、イスラエル(80%)などで、ヨーロッパではフィンランドとイギリスが67%で最も高くなっている・・・現実を直視すれば、武力は必要なのでしょうか。日本が平和ボケをしているのでしょうか。そう言えば、徒手空拳でキャンキャン騒ぐよりも、武器を片手に、低い声で静かに一言言う方が、外交上効果があると、確かあるアメリカ人が言っていたと思います。武器を持たぬ平和外交は可能なのでしょうか。日本独自の平和外交を編み出してほしいものだと思うのですが、はたして・・・

「移民」受け入れについては、移民といえども自らの伝統・文化を大切にすべきだという意見が最も強いのは中国で85%。次いで、メキシコとブラジルの75%、ポーランド71%、インド68%などとなっている。一方、ヨーロッパの多くの国では、受け入れ先に同化すべきだという声が強い・・・どこへ移民してもチャイナ・タウンを作り、中国の伝統を大切にしている中国人。上記の数字はその反映なのでしょうが、欧米では逆の意見が強い。移民する側と受け入れる側、その間にある同化問題。簡単には解決しそうもありませんね。将来、社会の活性化のために移民受け入れが避けられないと言われる日本は、どう考えるのでしょうか・・・

「イスラム」に対しては、否定的な意見がヨーロッパで増えている。スペインの42%を筆頭に、ドイツとフランスの37%、スウェーデンでは35%、イギリスの32%がイスラム教徒に対してネガティブな意見を持っている。しかし、9・11にもかかわらず、アメリカの若者では24%、コーカサス地方での問題を抱えているにもかかわらず、ロシアでは19%と、反イスラム的意見は多くない。

「年金」問題について。今の高齢者のために自分たち若者が年金を支払うことに反対かどうか。最も反対意見が多いのはギリシャで52%、次いで日本の50%。先進国では高い数字になっているが、一方、新興国では支払うべきだという容認派が多い。インドでは83%、中国77%、モロッコ76%、ロシア73%が支払うべきと答えている・・・先進国と言われるようになるにつれ、個人主義となり、長幼の序などどこかへ行ってしまうようです。

「経済政策」については、アングロ=サクソンの国々がリベラルな考えになっている。少ない税金を取るか、手厚い社会保障を取るか。アメリカの72%、カナダの62%、オーストラリアの52%が、社会保障よりも少ない税を選ぶと答えている。フランスではわずか38%にすぎない・・・エマニュエル・トッドの言うように、アングロ=サクソンは徹底した自由の追求者で、個人主義。一方、イギリスを除く西欧では自由と共に連帯に重きを置いています。その差が出るのでしょうね。日本はいずれへ向かっているのでしょうか。

「男女平等」に関しては、西洋の国々では、男女平等は理想的な社会の姿として当然あるべきものという意識が強い。アメリカとフランスでは94%、カナダとスペインで93%、ドイツ、フィンランド、オーストラリア、イギリスで91%が男女平等の大切さを認識している。一方、男女平等は理想の社会に必要なものだという意識の低い国は、モロッコ(大切だ、が50%)、日本(70%)、イスラエル(76%)、トルコ(80%)となっている・・・日本女性の皆さん、ごめんなさい、と言うしかないですね。

「美」について。美人であること、イケメンであることは大切だという割合は、16~29歳では83%に達しており、30~50歳の77%より高い。流行を追う層も多く、16~29歳では49%、30~50歳では42%となっている。特にインドの若者たちは、自分の美しさへの関心が高く、94%が美人・イケメンであることが大切だと述べ、80%が流行を追うことが大切だと言っている。

そのインドの若者、27%が有名になりたいと思っている。しかし25カ国平均では6%に過ぎない・・・インド映画を見ていると、有名になりたインド人、というイメージも容易に理解できますね。

戦争で死ぬことへの反対が、ヨーロッパでは強い。特に、スペイン(反対が75%)、イタリア(72%)、ドイツ(65%)でその傾向が強い。逆に、戦争で死ぬことを受け入れる人が多いのは、インド(許容するが76%)、トルコ(71%)、中国(71%)だ。

トルコのEU加盟について、トルコの若者の62%が悲観的に思っている。

・・・その国、その国で、歴史・伝統・価値観が異なれば、直面している問題も異なります。従って、若者たちが大切にしたいこと、夢として持っていることも異なりますね。しかし、どれが良いとか悪いとかではなく、異なっているということ。そのことを受け入れるべきなのでしょうね。順位付けをするのではなく、どこがどう違うのかを理解したうえで付き合うことが大切なのではないかと思います。世界は広い。いろいろな国があります。いろいろな人々がいます。だから、面白い。そして、だから、容易じゃない。

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