ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

DSK離脱。社会党優位も、大接戦へ・・・フランス大統領選挙。

2011-05-20 21:09:53 | 政治
ドミニク・ストロス=カン(Dominique Strauss-Kahn)がIMF専務理事の職を辞しました。その後、保釈金を納めるとともに、居場所を追跡できる電子ブレスレットを着用すること、国連のパスポートも提出すること、ニューヨークの住まいで24時間の監視下に置かれることなどといった条件付きながら保釈を認められました。次回の出廷は6月6日。罪状認否が行われるようです。

DSKの後任には、同じフランス人ですが、女性のクリスチーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)財務相が有力と言われています。DSKが大統領選へ出馬するため、今年のいずれかの時点で辞任するだろうということで、その後釜を目指して以前から根回しが進んでいたようです。欧米がこぞって賛成のようですので、新興国からの抵抗はあるでしょうが、すんなり決まってしまいそうです。

DSKが目指していた大統領の椅子。多くの世論調査がDSKの勝利を予想していました。エリゼ宮(大統領府)にほとんど手が届いていたわけですが、社会党の予備選までに無罪が確定しそうもありませんから、出馬すら出来そうにありません。DSKという絶対的候補者を失って、社会党の戦略に変化が見られるのでしょうか。

そこで、DSKの逮捕直後にいくつかの世論調査が行われました。そのひとつ、調査会社“CSA”がメディア(BFM-TV、RMC、20 Minutes)の依頼で行った調査結果が18日に公表されました。その概略を18日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

DSKが逮捕された後の世論調査、その最初の結果が公になった。社会党の候補がフランソワ・オランド(François Hollande:前第一書記)の場合は、オランドとニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)が決選投票へ、マルチーヌ・オブリー(Martine Aubry:現第一書記)の場合も、彼女とサルコジ大統領による決選投票に。しかし、社会党候補がセゴレーヌ・ロワイヤル(Ségolène Royal:2007年大統領選の社会党候補)の場合は、サルコジ大統領と極右・国民戦線のマリーヌ・ルペン党首(Marine Le Pen)による決選投票になるという調査結果になった。

「もし来週大統領選挙が行われるとしたら、誰に投票するか」という質問。有権者の投票意向は・・・

●フランソワ・オランドが社会党候補の場合
   フランソワ・オランド:23%
   ニコラ・サルコジ:22%
   マリーヌ・ルペン:20%

●マルチーヌ・オブリーの場合
   マルチーヌ・オブリー:23%
   ニコラ・サルコジ:23%
   マリーヌ・ルペン:19%

●セゴレーヌ・ロワイヤルの場合
   ニコラ・サルコジ:23%
   マリーヌ・ルペン:20%
   セゴレーヌ・ロワイヤル:18%

いずれの場合も、他の候補者は一桁の支持率にとどまった。
・ジャン=ルイ・ボルロー(Jean-Louis Borloo:急進党;中道左派:8%)
・フランソワ・バイルー(Francois Bayroo:MoDem;中道:7%)
・ニコラ・ユロ(Nicolas Hulot:環境番組の司会・製作者:6%)
・ジャン=リュック・メランション(Jean-Luc Melenchon:左翼党;仏共産党と提携:5%)
・ドミニク・ドヴィルパン(Dominique de Villepin:共和国連帯:新ドゴール主義:4%)
・ニコラ・デュポン=エニャン(Nicolas Dupont-Aignan:EUDemocrats;主権主義:2%)
・反資本主義新党の候補者(Nouveau Parti anticapitaliste:極左:2%)
・ナタリー・アルノー(Nathalie Arnaud:フランス共産党:1%)

DSKの大統領レースからの離脱にも拘らず、社会党の予備選は有権者の関心を失っていない。回答者の37%が予備選の投票に参加すると答えており、この数字は1月の調査結果を4ポイント上回っている。

また、社会党候補にふさわしいのは誰かという問いには、
・フランソワ・オランド:33%
・マルチーヌ・オブリー:23%
・セゴレーヌ・ロワイヤル:20%
という回答結果となっている。

社会党候補がDSKでなくとも、来年の大統領選挙で社会党が勝利するだろうと予測するフランス人は、54%に達している。社会党は勝てないと予想するのは36%であり、10%が分からないと答えている。

DSKが立候補できないことは誰に有利に働くと思うか、という問いには、
・ニコラ・サルコジ:29%
・フランソワ・オランド:16%
・マリーヌ・ルペン:16%
・マルチーヌ・オブリー:10%
・ジャン=ルイ・ボルロー:2%
という回答になった。

4月26日に調査会社“IFOP”が行った世論調査は、ニコラ・サルコジは第2回投票へ進出はするが、社会党候補が誰であっても、その社会党候補に決選投票で敗れる、という結果になっていた。ただし、DSK以外の3人の場合は僅差の勝利であり、サルコジ大統領との差はわずか。一方、DSKであれば、8ポイントも現職大統領を上回っていた。

・・・ということで、いずれの場合も、サルコジ大統領は決選投票に進出できそうです。DSK事件の前までは、DSKとマリーヌ・ルペンの決選投票を予想する世論調査が多かったのですが、状況は一変。社会党候補者対サルコジ大統領の決選投票という図式になりそうです。しかも、大接戦が予想されています。どう転ぶか分かりません。

選挙は水もの、そして、政治は魑魅魍魎。この先、何が起こるか分かりません。しかし、来春までフランス政治から目が離せないことだけは、確かなようです。
コメント
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