ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

レ・ブルー、確かな一歩。監督、確かな手腕。

2010-10-11 20:19:09 | スポーツ
先のワールドカップ南アフリカ大会では、散々な結果に終わったサッカー・フランス代表“Les Bleus”(レ・ブルー:ユニフォームの色に由来)。大会後、監督を交代し、新たなチーム作りに着手しました。その結果は・・・

クラブの監督が“entarîneurs”(訓練者)と呼ばれるのに対し、代表チームの監督は“sélectionneurs”(選択者)。この違いが明確にしているように、選手をしっかり鍛えるのは各クラブ。代表チームでは選手が集まって練習する時間が限られていますから、監督の戦術にあった選手、調子のいい選手を選んで戦うことになります。従って、新監督の選手選び、戦術の徹底には少し時間がかかります。その期間は、ファンも辛抱が必要なのですが、分かっていてもなかなか難しい。ブーイングのひとつも、浴びせたくなってしまうのがファン心理。

新たにレ・ブルーの監督になったロラン・ブラン(Laurent Blanc)にとっても、出だしはいわば五里霧中。選手起用もまだ手探り状態でした。練習試合に負け、ユーロ2012(欧州選手権)予選の初戦、対ベラルーシ戦でも黒星。しかも、ホーム、スタッド・ド・フランス(Stade de France)での敗戦。ファンからはブーイングを浴び、ドメネク前監督時代からの流れで、スタッド・ド・フランスではレ・ブルーは勝てないというジンクスがささやかれ始めました。

しかし、ここからブラン監督の手腕が発揮されだします。現役時代は、1998年ワールドカップ優勝、2000年ユーロ優勝という輝かしい実績を持つ代表チームの中心選手の一人。ディフェンスの選手でしたが、もともと中盤の選手だったため、攻撃参加にも積極的で、得点もディフェンダーとしては多くあげています。所属チームも、モンペリエ、マルセイユといった国内チームだけではなく、ナポリ、インテル、バルセロナ、マンチェスター・ユナイテッドという各国の名門チームで活躍。さまざまなサッカー・スタイル、戦術を身をもって学んだのでしょう。引退後、ボルドーの監督になるや、いきなりチームを国内リーグで2位に導き、2年目にはついに優勝。チャンピオンズ・リーグでもベスト8に。名将の誉れ高い監督になり、チームを3年率いた後、レ・ブルーの監督に。

ユーロ予選・初戦の黒星から4日後、アウェーでのボスニア・ヘルツェゴビナ戦を2―0で勝利。そして、1カ月後の今月9日、3戦目は、スタッド・ド・フランスでのルーマニア戦。ホームでは勝てないというジンクスを打ち破れるか・・・見事2―0で勝利。6カ国がホーム&アウェーで戦う予選、3試合終了時点で、グループの首位に。その試合後のブラン監督のインタビューが、10日の『ル・モンド』(電子版)で紹介されています。

「今週の練習と今日の結果、そして選んだ23人の選手には満足している。レ・ブルーで何かが生まれようとしている。今のチーム・スピリットを大切にしたい。今後も困難な時期を迎えるかもしれないが、今は勝利の余韻に浸りたい。」

代表に選んだ選手は23人。そのうち試合当日ベンチに入れるのは、18人。そして先発は11人。途中交代が3人まで。選手たちについては、「誰もが今週の練習に真剣に取り組んだ。そのプレーのクオリティを見れば、誰が先発してもおかしくはなかった。従って、ベンチ入りから外す5人を決めるのは非常に難しかった。また、試合は14人で行うものだ。途中交代で退場した選手もよくやったし、そのプレーは交代で入った選手にもいい影響を与えた。」

確かに、2得点は、後半途中で交代出場したレミー(Rémy)、グルキュフ(Gourcuff)の2選手が最後の10分に決めたもの。しかも、グルキュフの得点をアシストしたのも、途中交代で入ったパイエット(Payet)。選手交代が見事に的中。試合は14人でやるんだということ、そしてなにより、ローラン・ブランの監督としての手腕を見事に立証しました。

キャプテンを務めたディアラ(Alou Diarra)は、「みんなが長い間この勝利を待っていた。ようやくクオリティを発揮し始めたところだ。だが、まだ何も成し遂げてはいない。今日のような規律と真摯さをこれからも維持していかなければならない。世界の強豪に再び加わるには、そうすることが必要だ。勝利を積み重ねていくことが大切で、過去の栄光に胡坐をかいていてはいけない。予選2試合を連勝したことで、モラルも順位も上がった。チーム精神のお蔭だ」と言っています。

新聞各紙も、これでようやく最近のごたごたに背を向けて、レ・ブルーが新たな一歩を踏み出した。これもローラン・ブランの監督としての手腕のなせるところだ。勝利の方程式を手に入れたようなもので、これからの活躍が楽しみだ、とこぞって絶賛。過去数年のふがいない成績やチーム状態を忘れ、ようやく溜飲を下げたようです。

次の試合は、12日のルクセンブルク戦。この試合で勝ち点3をあげれば、予選の次の試合は、来年3月26日。それまでの長い間、グループ首位の座に間違いなく座り続けられる。サッカー・ファンは熱い心で、この冬を過ごすことができる・・・

そして、我らが日本代表も確かな一歩を踏み出しましたね。ザック・ジャパン。久々にサッカーらしいサッカーを見せてくれました。サッカーは点を多く取ったチームが勝つスポーツ、横パスやバックパスをどれだけ繋いでも、点が入らなければ勝てない、ということを改めて証明してくれました。12日の韓国戦でも、ぜひ攻撃的なサッカーを見せてほしいものです。そして、サッカーでは監督の手腕がいかに大きな影響力をもつか、ということをフランス代表、日本代表が改めて物語ってくれているようです。