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地方自治の危機(追記6)… 「調達」における、見えにくいモノの検収

2015-10-12 11:32:51 | 地方自治
 公共事業における購入品(モノ)が直に見られないため、その検収が難しい例として、諏訪市に情報開示を請求した「ゴミの収集量」があることを、本テーマの追記4にて挙げた。請求内容は、「業者が収集した廃棄物の重量を業者の報告のみで検収しているが、検収者は実物を見ていない。この種の取引には不祥事が多いので、支払いの妥当性を示す説明をして欲しい」であった。「検収」とは、「納品された品が注文通りであることを確かめた上で受け取ること」(広辞苑)である。
 普通は余り気に留められないような事かもしれないが、私は現役のときに遭遇した事件の記憶が頭から離れないせいもあって、類似のことが気になってしかたがない。何十年も前、製造会社で設計の仕事をしていた。組み立て図を基に部品図を作成する段階では、設計外注を使う場合が多い。調達の原則である三権分立からすると、起案部門である設計者、発注部門である管理課(購買部)、それに注文書の要求事項を満たしているか検査して検収する部門は独立していなければならない。しかし調達物が図面の場合、効率化のため三権分立を省略する。設計者は日ごろ付き合いのある外注会社の担当者を呼び、直に指示を出す。そして、発注した設計者自身ができあがった図面を検収する。図面の作成単価は決められているが、発注した図面枚数は余り目立たない限り、設計者が決めた枚数を上司は承認する。すなわち、「三権」を設計者が握っている。設計者を全面的に信頼してのシステムである。設計者が検収した後、検収書が管理課に回され支払いが行なわれる。不正は設計者でなく、管理課の支払い手続き者が、図面枚数を水増しして訂正することによって行なわれた。この担当者は外注会社の社長からキックバックを受けていた。図面枚数という、外部からは分かりにくい内容のモノの検収の難しさを認識した。設計者にも図面枚数の操作は可能であるが、設計技術者は予算を管理されているので、支出を増やすことは自分が困ることになる。ちなみに機械の設計では、手を抜くと出来上がったシステムは絶対にうまく動かないので、ごまかすことができない。
 諏訪市の場合、ゴミ収集の業務委託部門は、「三権」を一担当者が兼ねているので、私の経験した会社の図面作成の調達と酷似しており、私が気になって仕方ないことの所為である。ゴミの「収集重量」は、私の記憶にある「図面枚数」よりも恣意的な数値となりうる、外部からは分かりにくいモノの検収である。
 折しも、大町市の大北森林組合による、架空事業の補助金受領が問題となっている。間伐の検収は、外部から調べようと思えば出来そうであるが、広範囲には難しく「外部からは分かりにくいモノ」に当たる。調達の三原則が守られず、間伐の終了を検査・検収する部門が起案や発注と同じ場合、問題が起こりやすい。発注部門は自らが選んだ、顔見知りになった業者に何が何でも仕事を完了させたいため、検収が甘くなる。長野県の体制は知らないが、検収専門部門があれば、何も見ずに検収することは無かったであろう。見ないで検収すれば職場放棄になる。
 このように「外部からは分かりにくいモノの検収」は、「透明性のある説明は難しい」という理由で見逃されやすい。その説明義務について、長野地方裁判所が全く無関心だったのは、実務を知らないためかもしれない。

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