goo blog サービス終了のお知らせ 

日本と世界

世界の中の日本

韓国、「大統領府」元学生運動家に牛耳られ突飛な政策連発

2017-08-03 17:39:51 | 日記

勝又壽良の経済時評

日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。

2017-08-03 05:00:00

韓国、「大統領府」元学生運動家に牛耳られ突飛な政策連発

「86世代」が支配の青瓦台

ソウル大学廃校狙う黒い集団

 文在寅(ムン・ジェイン)政権は、「86世代」と言われる学生運動の活動家上がりの人々に囲まれている。

この一群が大統領府に集まって奇策を連発しているのだ。

「86世代」とは、1960年代生まれで80年代に学生生活を送り、民衆蜂起の「光州事件」(1980年)に何らかの関わりがあるという共通条件を持っている。それ故、「反米・親中朝」の意識が強い。

 ここから示唆される点は、「86世代」が反資本主義者であることだ。

反市場主義=反企業主義を鮮明にしている。

企業と聞けば財閥を先頭にして民衆から利益を収奪する「反倫理的集団」と決めつけている。

極めて単純な思考の持ち主である。

 なにやら、毛沢東思想を連想させるが、「86世代」は大統領府に席を占めた以上、これまでの夢を実現したいと願っているはずだ。

光州事件では火炎瓶を投げつけながら、社会改造計画を熱く語り合ったであろう。

あの事件から37年目を迎える。20歳の学生も57歳になった。人生の夢を大統領府で語り合い、実現に向けて結束しているのだ。

 「86世代」が支配の青瓦台

『朝鮮日報』(7月30日付)は、「衝撃的な実験の日々が続く大韓民国」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の主筆である楊相勲(ヤン・サンフン)氏だ。

 朝鮮日報主筆とは、論説の最高責任者である。韓国言論界の時局認識を示しているであろう。

その意味で、このコラムは文在寅政権への「評価」の一つと言える。

 国家の基本に関わる重大事項の決定が、大統領府(青瓦台)の「86世代」だけで決められていることは異常と言うほかない。

日本であれば、しかるべき専門家を集めた審議会で議論されるのが普通だ。

文政権では、それが完全に省かれている。一握りの「元学生運動家上がり」が、適当に話合って「布告」する独裁である。

後で取り上げる原発建設中止は、たった20分の閣議で決められたという。

まさに、「衝撃の事実」だ。これでは、国会も官庁スタッフも不必要である。

文在寅政権に、朴槿恵(パク・クネ)前政権の独断ぶりを批判する資格はない。

(1)「一度の大統領選挙を終え、これだけさまざまな大規模実験を短期間にされるのは初めてではないか。

『非正社員ゼロ』は公共機関から始まり、民間企業へと圧力が広まっている。

非正社員が存在せざるを得ない原因は放置したままで、その結果だけをなくせという政策理論はない。

持ちこたえられない企業が数カ月で耐えられるようになるだろうか。

非正社員を子会社の正社員にするというが、その子会社はどうやってその負担に耐えるというのか」

 時給の最低賃金は、2000年までに1万ウォン(約1000円)に引き上げるという。

その時点で日本の時給と逆転する。

ちなみに、日本の今年の平均最賃は848円(3%アップ=25円)である。

韓国政府は来年から最賃を16.4%引き上げ750円にする。

韓国の零細企業には、それを支払える能力がないのだ。そこで、財政から3000億円を補給して、時給引き上げを後押しする。

 問題は、財政支援の最低賃金引き上げが、あたかも「善政」という意識で行なわれていることだ。

恵まれない人々の低賃金を政府の暖かい支援で引き上げる。

この「善政」の影で、経営的に行き詰まる零細企業が続出する懸念もある。こうなると、「善政」は「悪政」へと成り下がるのだ。

 これまで、低賃金であった裏には、そうさせた理由があるはずだ。

生産性の低さ、製品納入先の買い叩きなどの要因がある。

そこを改善しないで、財政資金をつぎ込んでも無駄になろう。

政府のやるべきことは制度改革の優先である。「大衆迎合政治」の文政権は、即効性による「ウケ」を狙っている。スタンドプレーが強すぎる政権だ。

(2)「最低賃金を一気に時給1万ウォンに上げることも過去にはない実験だ。

これでは数多くの自営業者、限界企業は持ちこたえられないはずだ。

新政権は国民の税金で民間企業の従業員の月給を支払うから賃金を上げろという。

そんな発想ができるというのは驚きだ。弱い企業から廃業したり、国を離れたりするだろう。

今は経済政策の基本的枠組みを覆さなければならないのだという。

経済成長で所得を増やすのではなく、税金で所得を増やし、経済を成長させるのだという。

一部の階層に税金を分配し、富の分配を改善するというのは聞いたことがある。

しかし、それで経済成長まで図るというのだからまるでマジシャンだ。成功すれば文在寅(ムン・ジェイン)政権は団体でノーベル経済学賞を受賞するだろう」

経済成長の基本は、企業活動を活発化させて生産性を引き上げ、それが賃上げに結びつくものだ。

文政権は、前段部分は「企業性悪論」で否定している。

よって、賃上げをすれば家計所得が増えて個人消費も上昇するという面だけを取り上げている。

中国の最賃引上が何をもたらしたか。生産性を上回る賃上げが、企業収益を悪化させて設備投資意欲を阻害している。

「反米・親中朝」は、経済政策面に現れている。

反米=反市場主義、親中朝=賃金先行引き上げという、妙な符節を合わせているのだ。「86世代」の「反米・親中朝」は、韓国の経済や安保の政策に深い傷を残すと見られる。

 (3)「数年前、国際労働機関(ILO)に所属する左派の学者が『賃金主導の成長』を主張した。

それを韓国で翻訳して紹介した人物が現在、大統領府(青瓦台)の経済担当首席秘書官だ。

文大統領がその虜になり、セミナーも開いたという。

彼らは自分たちが信奉する理論を全国民に対して実験する機会を得た。

米国、日本、欧州でも部分的にこうした実験的アイデアを政策化した例はあるという。

しかし、全面的、全方位的に適用するのは韓国が世界で初めてだ。

とはいえ、韓国よりも経験豊富で優れた先進国がこれだけ容易で人気がある『所得主導の成長』をなぜ全面的に導入しないのかという常識的な疑問が残る。

今後も教育実験、税金実験、安全保障実験などが続くはずだ」

文在寅氏は、性格的に鳩山由紀夫氏と似ていると思う。

簡単に他人の意見に影響される軽いタイプと見られるからだ。

鳩山氏が沖縄基地問題で混乱したのは、一人の反米安保主義者の意見に引きずられたことだ。

文氏は、「賃金主導成長論」を翻訳した韓国人学者の意見に心酔しているという。

その学説が、実際に導入されて成功した国はあるのか。そういう例も調べずにOKを出す。韓国経済を実験の舞台に乗せるリスクに気づかないのだ。

 文氏は、多くの学者を側近に採用している。

多分、若いときに学者志望であったが経済的な理由で叶わなかった。

その満たされなかった夢が、「学者内閣」を組織させている理由でなかろうか。

とすると、この「学者病」は簡単には直らないであろう。5年間の大統領任期中、学者の夢に引きずられ何らの成果も上げずに終わるであろう。

(4)「世界で最も模範的に運用している原子力発電所を突然怪物扱いし、『止める』という実験も「まさか」と思ったが、本当に実行してしまった。

『原発事故の確率はゼロではない』というが、そんなことを言っていれば、人は家の外に出られないはずだ。

判断基準となるべき合理的なラインというものがある。

韓国は、地震などで福島のような原発事故が起きる可能性が『ゼロ』でないから、原発は廃止しなければならないと言うのなら、世界中の原発は全てなくさなければならない。

原発を気に掛ける人はどうしてもいるわけだが、そうした人を説得するのが政府の仕事なのに、むしろ政府が先頭に立っている。前例がない実験的状況だ」

 韓国の原発問題は、簡単に結論を出せる話でない。

現に、福島原発の事故後に補強工事も行なって安全性に一段の注意を払ってきたからだ。

それを、たった20分の閣議で建設工事中止とは、「86世代」の奢りとしか言えない。

今後は、市民審判団という技術的に素人を集めて議論=決定するという。

政府は一切、関わりを持たずに決めさせるとは、余りにも無責任な行政である。

国策である原発の存否を民間の素人集団の決定にゆだねる。

明らかに、将来起こる問題の責任を回避しようとする遠謀だ。

これが、学生運動上がりの集団が行なう理念先行行政の実態である。最終責任を取らない。ただ破壊だけが目的の「火焔瓶型」政治手法であろう。

 (5)「太陽光、風力発電など再生可能エネルギーが、原発の代わりになるというのは実験以前の問題だ。

実験とは『そうなる』という蓋然性を前提として行われるものだ。

韓国の自然条件が太陽光や風を大規模なエネルギー源として使う上で適さないという点は不幸なことに現実であり事実だ。

1%にもならない再生可能エネルギーの割合を少しずつ高めていく必要はある。

しかし、国の電力の30%を担う原発に代えることはできない。韓国が再生可能エネルギーを研究しなければならないのは、原発の代わりではなく、(原発が)自然条件が適した国に輸出するためだ」

 原発を中止した後のエネルギー政策はどうなるのか。

文政権は自然エネルギーで補うとしている。

だが、韓国では地勢上、大規模な太陽光や風力の発電に向かないとされている。

このことは、すでに周知のこととされていた。文政権は、こうした根本的な欠陥を抱える自然エネルギー供給問題を最初から無視してきた。

ただ、大衆受けだけを狙って、「脱原発」ありきで進んでいる。

仮に、この「脱原発」が上手くいけば、その成果は文政権がとる。

失敗すれば、原発廃止を決めた民間審判団に転嫁させるであろう。極めて狡いことをやろうとしているのだ。

 「86世代」は、以上に見てきたように老獪そのものの振る舞いをしている。では、その具体的なメンバーを紹介したい。

 ソウル大学廃校狙う黒い集団

『朝鮮日報』(7月31日付)は、「学生運動主導者が牛耳る韓国大統領府」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙論説委員の李河遠(イハウォン)しである。

 このコラムを読むと、寒気がするほどのショックを受けるだろう。

大統領府が学生運動活動家に「占拠」された形であるからだ。

この人事を承認したのは、むろん文在寅氏だ。

これだけ、昔の学生運動家上がりを集めたところに、儒教社会特有の「群れる」習性がいかに強いかを物語っている。

 もう一つの注目点は、彼らの最終学歴である。

エリート大学とされる、ソウル大・高麗大学・延世大の出身者がいないことだ。

文在寅氏もソウル大学を受験して失敗、1年浪人後、慶熙大に入学した。私は、彼らの出身大学について品定めしようという目的ではない。

なぜ、こういう話をするかと言えば、大統領府では後述の通り、ソウル大学を廃校させるという仰天するような話を進めているからだ。

仮に、大統領府の実力者にソウル大卒業生がいれば、絶対に表面化しないであろう。

それが公然と出ている。ソウル大へのジェラシーが原因と思われるのだ。

この「86世代」は、多分に感情論で政策を議論している気配が濃厚だ。

学生時代に入学できなかったソウル大学への妬みが今、廃校という形で噴出させている。これほど隠微な話があるだろうか。

 (6)「大統領府が主導する争点のキーワードは、米国と反核だ。

この二つの措置は、一体どんな背景から出てきたものなのか。

両者の間に関連性はないのだろうか。

この状況を理解するのに一助となる運動圏(左翼系の学生運動グループ)の歌が『反戦反核歌』だ。

1980年代に学生運動の主軸である全国大学生代表者協議会(全大協)で何度なく歌われた歌だ。

集会の主導者が『反戦、反核、ヤンキー・ゴー・ホーム』と叫び、これに呼応するかのように『大合唱』した光景が、今でも目に焼き付いている。

米国は、南北統一を妨げる侵略者と見立て、戦術核兵器を追い出そうといった趣旨の歌だ。その頃でさえも話にならないといった主張は多かった」

 大統領府に陣取る「86世代」は、「反戦、反核、ヤンキー・ゴー・ホーム」と集会後にシュプレヒコールで叫んでいたという。

「反米・親中朝」マインドは、学生時代かから培われた強烈なものである。

 (7)「『共に民主党』が大統領選挙で勝利して以降、80年代の集会でこの歌を先唱した全大協の幹部たちが一人、また一人と大統領府に採用されていった。

この事実こそ注目する必要がある。

秘書官クラス以上の大統領府秘書室の要職に、全大協所属の総学生会長、総女子学生会長として活躍した運動圏の10人が任命された。

全大協で昔議長を務めたイム・ジョンソク秘書室長以外に、文大統領が毎日顔を合わせる3人の側近といえば、国政状況室長、第1、第2付属秘書官だ。

これらの人物は、国民大、釜山大、梨花女子大の総学生会長としてイム室長と同じ時期に全大協で活動したメンバーだ。

政務企画、政務秘書官も、全北大、円光大の『総学生会長』経験者だ。

春秋館長は国民大の総学生会長を、市民社会秘書官は全北大の総女子学生会長をそれぞれ務めた。全大協連帯事業局長、文化局長を務めた人物は、それぞれ民政秘書官と演説秘書官を担当することになった」

 1980年代、学生運動の主軸である全国大学生代表者協議会(全大協)の幹部達が、大統領府で採用されているという。

秘書官クラス以上の大統領府秘書室の要職に、全大協所属の総学生会長、総女子学生会長として活躍した学生運動上がりの10人が任命されている。

これを見ただけで、今後の韓国政治が向かう方向がはっきりしている。反企業=反市場=反米国であろう。私は、この路線は必ず行き詰まると見る。

 彼らの出身大学は、国民大、釜山大、梨花女子大、全北大、円光大等である。

前記のエリート大学ではない。

それだけにソウル大への「敵意」は相当なものであろう。

社会へ出てからも差別をうけたに違いない。

その恨みが、「ソウル大廃止論」という歪んだ形で出ているのだろう。

 (8)「イム室長が指揮する26人の秘書官のうち実に9人(34%)が全大協で活動した経験を持つ人物なのだ。

これら以外にも大統領府の至る所で全大協上がりの人物たちが行政官として布陣し、政策を指揮している。

『全大協は文在寅政権のキッチンキャビネット(非公式の実勢グループ)ではないか』『大統領府は全大協に乗っ取られたようだ』などという言葉が決して大げさではないことがよく分かる」

 イム・ジョンソク秘書室長が指揮する26人の秘書官のうち、実に9人(34%)が全大協で活動した経験を持つ人物だという。

これでは、毎日が同窓会気分であろう。緊張感のある行政が行なわれるか疑問である。

馴れ合いが多発しても不思議はない。

 (9)「民主労働党のチュ・デファン元政策委員会議長は、大統領選挙の前から、文大統領が80年代の論理のとりことなっている運動圏の勢力にまんまと丸め込まれている、と批判してきた。

事実上重要な政策決定は運動圏上がりが下し、文大統領は単なる『顔だけの人』というわけだ。

こうした脈絡から、大統領府がTTHAAD配置の延期を決断した背景には、過去『米国のやつら』と口走ってきた反米運動圏グループが見え隠れする」

 文在寅大統領は、「86世代」に取り囲まれている。

口八丁手八丁の学生運動家上がりに囲まれて、単なる「イエスマン」になる危険性はないだろうか。

大統領府の布陣を見ると、絶望的な気持ちになる。

 最後に、「ソウル大廃止論」の根拠を取り上げたい。

 『韓国経済新聞』(7月28日付)は、「『ソウル大学廃止論』は生きている」と題するコラムを掲載した。

筆者は、同紙のアン・ヒョンシル/論説・専門委員である。

(10)「2004年に盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府で初めてソウル大学廃止論が出てきた時と今とは異なる。

盧武鉉元大統領はソウル大学廃止論に反対した〔金秉準(キム・ビョンジュン)当時青瓦台(チョンワデ、大統領府)政策室長の伝言〕だが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領もそうする保障はない。

大統領選挙の公約から外れたと安心するには早い。

金相坤(キム・サンゴン)副首相兼教育部長官の就任の辞はこの政府が「序列化」「競争」「不平等」を同じ仲間と認識していることを見せている。

学費半額、ブラインド面接、国立大学統合論などの流れが結局『大学平準化』に合流するというシグナルだ」

 ソウル大は、戦前の日本が創立した京城帝国大学(1924年)である。

大阪帝国大学(1931年)や名古屋帝国大学(1939年)よりも創立が古い。

この歴史から言えば、韓国では文句なしの最高峰であろう。

それ故に、韓国特有の学歴社会の歪みを生む「元凶」とされる理由も分かる。

だが、一国の文化のバロメーターは、創立が古く実績のある大学や研究所をもっていることにある。まさに、文化遺産であるのだ。

 そのソウル大学を、こともあろうに「大学平準化」という流行の公平論で潰してしまえという議論は、余りにも乱暴で「嫉妬」の塊に見えるのだ。

韓国社会特有の現象であろう。問題は、ソウル大学の研究実績を上げるように支援することだろう。4

もしも、ソウル大学を潰すことがあれば、韓国の文化・研究・教育もこれで終わりというシグナルになる。 

(2017年8月3日)

 


薄日が差し始めた韓国経済 くすぶる「5つのリスク」とは?

2017-08-02 17:51:47 | 日記
韓国経済に薄日も、楽観視できない「5大リスク」の中身


ダイヤモンド・オンライン


更新: 2017年07月06日 17時46分 JST

薄日が差し始めた韓国経済 くすぶる「5つのリスク」とは?


――2010年代に入って急減速した韓国経済ですが、足もとでは景気の底打ち観測が出始めました。韓国は今、どんな状況なのでしょうか。


2016年から2017年初にかけては、韓国にとって波乱の時期でした。

経済的には韓進(ハンジン)海運の破綻、サムスン「Galaxy Note 7」の出荷停止などが、政治的には朴槿恵(パク・クネ)大統領弾劾に至った大スキャンダルが生じるなど、悪材料が重なりました。

そのため、年初まで強い先行き不透明感がありましたが、今年に入り明るさが広がり始めています。それは成長の加速です。


2016年の韓国の実質GDP成長率は前年比2.8%と、2000年代平均の4.4%を下回る低成長になりました。

しかし、今年1-3月期のGDPは前期比1.1%(年率換算で4.6%台)と、昨年10-12月の同0.5%を大幅に上回りました。

輸出の回復が進展するとともに、建設投資の増勢が再び強まったためです。ただ、市場の予想を上回る結果になったとはいえ、先行きはまだ楽観視できません。

――楽観視できない要因とは何ですか。

主に2つの国外リスク要因と3つの国内リスク要因があります。今後の韓国経済を展望する上で注意が必要です。


――グローバル化で成長してきた韓国にとって、海外情勢はとりわけ重要です。まず、2つの国外リスク要因とは何ですか。

1つは、米国のトランプ政権が「米国第一主義」を強めるリスクです。

米国の通商政策の全体像はまだ見えませんが、米国にとって7番目の貿易赤字相手国である韓国に対して、不均衡是正圧力をかけてくるのは間違いない。

自国の貿易赤字に不満を持つトランプ氏は、選挙期間中から米韓FTAを「米国の雇用を殺す協定だ」と強く批判してきました。また、NAFTAが見直されれば、ポスコや起亜自動車など韓国企業のメキシコ事業が打撃を受けます。

もう1つは、THAADミサイル(終末高高度防衛ミサイル)配備決定に対する中国の経済報復リスク。

これはすでに顕在化しています。

昨年から、中国国内での韓国ドラマ、映画、コンサートの上映・開催中止、化粧品・食品などの通関不許可、ビザ取得のハードル引き上げなどが行われました。

さらに今春以降は、ロッテマートの営業停止、韓国への団体旅行商品の販売禁止、韓国製品に対するボイコットキャンペーンも始まるなど、報復措置がエスカレート。

中国から韓国への訪問者数が前年比で3月▲40.0%、4月▲66.6%、現代自動車グループの自動車販売台数が半減するなどの影響が出ています。

ただし、韓国の対中輸出は中間財が7割を占め、この分野の影響はほとんど出ていません。

また韓国は、ビザの発給緩和などで東南アジアや中東からの観光客を積極的に誘致しており、中国観光客の落ち込みをある程度カバーしています。


韓国を低成長に陥れたチャイナショックの正体

――そもそも2000年代に「最強」と言われた韓国経済が失速し、ここ数年低成長が続いた大きな原因は、「チャイナショック」だと言われています。

そこに足もとでは、ミサイル配備への経済報復という新たな中国リスクも出てきたと。

改めて、以前のチャイナショックとは何だったのか。またその影響は今も続いているのでしょうか。

向山英彦(むこうやま・ひでひこ)/日本総合研究所上席主任研究員。中央大学法学研究課博士後期過程中退、ニューヨーク大学で修士号取得。 証券系経済研究所を経て、1992年さくら総合研究所に入社し、現在日本総合研究所調査部上席主任研究員。中央大学経済学部兼任講師。専門は韓国を中心にしたアジア経済の分析

2000年代に入って、韓国企業は輸出と海外生産を拡大させるなど、グローバル化を加速させました。

国内市場が小さい(GDPは日本の約5分の1)こともあり、成長が期待できる新興国市場を積極的に開拓したのです。

現地ニーズを反映した製品投入、通貨危機後のリストラとウォン安による輸出競争力上昇などが、シェア拡大に寄与しました。

こうした企業のグローバル化を背景に、韓国では輸出と投資の拡大が生じ、比較的高い成長につながりました。

その一方、グローバル化の過程で対中輸出依存度が上昇し、ピークの2013年には26.1%に達しました。

これにより、韓国経済は中国経済の影響を受けやすくなった。そこにチャイナショックが生じたのです。

チャイナショックとして、3つの影響が指摘できます。

第一に、中国政府が新常態を目指すことにより、中国の経済成長率が低下した影響です。

資源需要の減少と価格急落で資源国を中心に世界経済が減速した上、海運不況が生じたことにより、海運と造船業界がダメージを受けました。

第二に、中国における過剰生産の影響。安価な中国製鉄鋼製品が海外市場へ流入した結果、市況が悪化しました。

そして第三に、中国企業の台頭です。技術面での急速なキャッチアップと国産化政策などを通じて、韓国企業の製品が中国市場で苦戦するようになりました。

韓国の中間財の輸出が鈍化し、韓国製スマートフォンのシェアが低下しました。

ただ、中国向け輸出は3年連続で前年割れが続きましたが、昨年末から回復傾向にあります。

特に韓国の主力輸出製品である半導体は好調です。

――チャイナショック以降、韓国政府はどんな対策をとってきたのでしょうか。

輸出不振が続いたため、内需の拡大を目的に、補正予算の編成、住宅融資規制の一部緩和による住宅投資の推進、消費刺激策(自動車の特別消費税率引き下げなど)を実施しました。

韓国銀行も政府に歩調を合わせ、2014年~16年に6回利下げを行ない、現在の政策金利は過去最低の1.25%になっています。

この2年間を見ると、内需が成長を支えているため、景気対策は一定の効果があったと言える。ただし、その副作用が現れ、国内リスクの1つになっています。

住宅ブームで累積する家計債務 金利上昇なら国民負担増の懸念


――では、3つの国内リスク要因とはどんなものでしょうか。

家計債務の増加リスク、企業・産業の構造調整リスク、そして文在寅(ムン・ジェイン)新政権の政策リスクです。

――1つめの家計債務の増加リスクとは?

住宅融資規制の緩和と金利の低下で住宅投資が増加した一方、家計債務が積み上がりました。

債務額の増加も問題ですが、注意すべきは質の悪化。

中小企業・低中所得層において、ノンバンクからの借り入れが急増しています。

生活苦に陥った国民が、生活費のために借り入れを行う動きが見られます。

今後の懸念は国内の金利上昇です。米国の利上げにより、米韓の金利差が縮小しています。

米国の利上げが今後も続けば、逆転します。
そうなると市場金利が上昇するほか、中央銀行が資金流出を抑制する目的で利上げする可能性もあります。

金利が上昇すれば債務の返済負担が増加し、消費にマイナスとなる。このため、債務の適切な管理が課題になっており、政府も住宅投資を抑制しています。

――2つめの構造調整リスクとは何ですか。

前述した輸出の低迷や受注の減少で、韓国企業の業績が悪化しました。

象徴的なケースが、昨年経営破綻した韓進海運。

2000年代前半から半ばにかけては、資源取引の増加で海運需要が右肩上がりだったため、同社は自社保有の船舶を増やし、借り賃が高騰する船舶の長期賃貸契約を結びました。

これが裏目に出たのです。

リーマンショックとその後の中国の成長減速で海運需要が激減し、同社は事業を続けるほど赤字が膨らむ状態に陥りました。

さらに趙秀鎬会長の死後、夫人の崔恩瑛氏がトップを務めた同族経営のせいで、経営の建て直しを遅らせてしまいました。

同社に限らず、韓国では近年多くの企業が構造調整を迫られました。

構造調整に伴うレイオフや企業債務の増加に今後も注意していく必要はありますが、コスト削減への取り組みと最近の輸出回復により、総じて企業業績は改善に向かっています。

造船業界の受注が再び世界トップに返り咲く、サムスン電子の営業利益が増加するなど、明るい話題も出ています。

また、大企業の構造調整も進みました。

市況の悪化と過大投資が重なり財務基盤が悪化したポスコグループは、鉄鋼を中核事業として基礎素材・クリーンエネルギーを成長エンジンとして育成する一方、非中核事業の売却を進めました。

またサムスングループは、石油化学、国防、プリンタ事業を売却する一方、バイオ、電装事業に力を入れています。

海外事業では、中国事業を再編成するとともに、スマホ・携帯電話の主力生産拠点をベトナムへシフトしました。


公共部門での大幅雇用創出も 見えない財源確保の道筋


――なるほど。家計債務の増加リスク、企業・産業の構造調整リスクの遠因は、チャイナショックにあると言えますね。では、3つめの新政権の政策リスクとは何でしょう。韓国では文在寅政権に対する期待が高まっていますが、先行きに関しては課題が多いと考えます。

今回、文氏が大統領に当選した勝因は3つありました。

1つ目は「ロウソク革命」を通じて「反保守」の流れができたこと。

2つ目は民主化運動に関わっていた氏に対する公正な社会の実現への期待。3

つ目は若年層の就職難が続くなか、公共部門を中心にした雇用創出を公約のトップに掲げたことです。

ただ、文氏の得票率は41%に過ぎず、一方で旧政権与党の得票率は3割に上りました。

国会でも野党の協力が必要です。

また、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の流れを汲む人たちに支持されている文政権は、今後、現実路線と左派路線の間で揺れ動く可能性がある。

大統領としての調整能力が問われますが、文氏のリーダーシップを疑問視する声も聞かれます。

とりわけ政策面で気がかりなのは、経済政策と外交・安全保障政策でしょう。

――文政権の経済政策面での不安は何ですか。

韓国は対GDP比で政府債務残高が約4割と、OECD諸国の中で健全な水準にあります。

これは韓国が均衡財政主義をとってきたためですが、福祉関連の支出増加、景気対策の補正予算などで、近年債務残高は増加基調にあります。

最大の懸念は、文大統領が公約として、

公共部門を中心にした81万人の雇用創出、

格差是正のための非正規職の正規職への転換と最低賃金の引き上げ、

高齢者向けの基礎年金の増額、育児手当、若年層向け住宅供給などを掲げたことです。

こうした一方で、財源をどのように確保するかは見えて来ない。ここが気がかりです。韓国の財政学者の多くは「公約の実現は不可能に近い」と言っています。

そもそも公共部門での雇用増を掲げた理由は、これまでの保守政権は雇用創出の役割を民間部門に委ねたにもかかわらず、十分な成果を上げられなかったこと、OECD諸国のなかで、韓国は雇用者に占める公共部門の割合が少なく、「ここは伸ばせる」と踏んだことです。

しかし注意したいのは、税収の対GDP比では韓国はOECDの中で非常に低い部類に入っていること。公共部門を拡大すれば、国民負担も増やさざるを得ません。

増税ということなら、富裕層を中心にした所得税、相続税の引き上げが実施される可能性があります。

一部で、李政権時に引き下げた法人税率を元に戻す案も出ていますが、世界的に法人税率引き下げの動きが広がっているなかでは難しいでしょう。

増税が叶わなければ、国債発行に依存することになり、財政の健全性を損なう恐れが出てきます。

公約を通じて国民の期待値を高めたため、現実的な対処をどうするのかが残された課題です。

ポピュリズム的な色彩の文政権 財閥改革と経済活性化の行方は?

――お話を聞いていると、文政権にはポピュリズム(大衆迎合)的な色彩が濃い印象を受けます。

大きな関心が寄せられる財閥改革はどういう動きになるでしょうか。文大統領は民主化のためにも、財閥改革が必要だと認識しているようですが。

財閥改革の動きは、これまで玉虫色でした。

通貨危機後に金大中(キム・デジュン)政権下で経営の透明性の増大、債務比率の圧縮、経営資源の選択と集中などが進められました。

その後も改革は続けられましたが、時々の経済状況によって規制が強化されたり、緩和されたりしました。政経癒着をなくすためにも、財閥改革は必要です。

文氏の財閥改革に対する強い意欲は、「財閥狙撃手」の異名を持つ金商祚(キム・サンジョ)漢城大教授を、公正取引委員会委員長に指名したことに示されます。

金商祚氏は指名後の会見で、

「財閥改革には経済力の集中を防ぐことと、ガバナンス構造を改革することの2つの目的がある」

「財閥改革は4大財閥を中心に推進していく」

「循環出資の解消は必ずしも最優先課題ではない」

「財閥改革は綿密な計画に基いて、一貫した方法で予測可能な形で推進していく」と述べています。

6月23日に行われた4大財閥との懇談会では、経済における財閥の役割を評価する一方、財閥改革は政府が押し付けるものではなく、財閥と協力しながら進めていくものとの認識を示し、財閥自ら改革を推進していくことを求めています。

予想に反して、金商祚氏が柔軟な考えを示している背景には、急激な改革を実施すれば、経済全体へのマイナスが大きいこと、財閥改革を企業経営の革新につなげようとしている考えがあるのではないかと思います。

こうして見ると、今後の改革は比較的取り組みやすいところから始められる可能性が大きい。

たとえば、少数株主の権利拡大、監査委員の分離選出、不公正取引に対する処罰強化、創業者一族の支配力抑制などです。


対北朝鮮政策は非常に難しい 日韓関係は「日本の出方」に不安


――では、文政権の外交・安全保障政策面のリスクとは? 喫緊の課題は核実験やミサイル発射を繰り返している北朝鮮への対応です。

文大統領は今後難しい対応を迫られるでしょう。

実際、新政権発足後も続くミサイル発射で対北朝鮮融和路線の難しさが浮き彫りになったほか、

対北朝鮮政策をめぐる韓国と米国との認識のズレが表面化しており、

今後米国との安定した関係を維持できるのかが課題となります。

当面は米韓首脳会談が注目されます。

今後、文政権がどこに軸足を置くかで、各国との関係に影響が出て来そうです。

仮に韓国が北との対話を重視すると、米国との関係がぎくしゃくします。

中国の要求を受け入れてTHAAD配備を中止しても、対米関係が悪化します。

他方、対米関係を重視してTHAAD配備を継続すると、中国は言うまでもなく、国内でも党や支持者から反発を買う可能性がある。

つまり韓国の対北朝鮮政策は、関係諸国との利害調整の面で非常に難しいものになります。

――日本にとっては、対日政策も不安です。文氏は対日強硬派と言われていますが、李明博(イ・ミョンバク)政権時のように日韓関係が悪化すると、両国の経済にも悪影響が出かねません。

文大統領はもともと「日本との植民地問題については、曖昧な形ではなく法的な責任や謝罪を求める」という考えを持っており、今後、日本に対して原則的な立場をとる可能性があります。

最近の発言はこれを裏づけるものです。その一方、原則的立場をとることで、日韓関係が悪化し、経済や安全保障などで協力関係が崩れる事態を避けたいという意向も示している。

言わば「ツートラック」です。

問題は、現在の日本政府がツートラックを受け入れようとしていないこと。

日本政府としては、一昨年末の慰安婦に関する合意を韓国側が履行することを求めているので、日韓関係はしばらく難しい状況が続きそうです。

ただ、経済への影響はさほど心配する必要はありません。日韓の経済関係は、大企業同士のサプライチェーンが中心で、政治問題に左右されにくいためです。

――これまで韓国の現状やリスク要因を詳しく聞いてきましたが、近い将来、韓国はこれらの課題を克服し、本格的な成長路線へ戻れるでしょうか。

結論から言えば、難しいと思います。

中国経済の変化や世界的な保護主義の高まりなどを考えると、かつてのように輸出が成長を牽引する姿に戻ることは不可能です。

むしろ、韓国は新産業やベンチャー企業の育成、既存企業の経営革新を進めて、内外需のバランスがとれた質の高い成長を目指していくべきです。

文政権は公共部門を中心とした雇用増→所得増→消費増→投資増の好循環を想定していますが、財政面の制約に直面する可能性が高いです。

なので早期に政策を見直し、民間経済の革新により力を入れることが必要だと考えます。

(ダイヤモンド・オンライン編集部)

韓国、「呆れた!」長期延滞80万人以上の借金棒引き策が登場

2017-08-01 16:42:08 | 日記
勝又壽良の経済時評

日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。


2017-08-01

韓国、「呆れた!」長期延滞80万人以上の借金棒引き策が登場

繰り返される「徳政令」

選挙中示した「文構想」

韓国人も中国人と同じである。

口では大変に立派なことを言うものの、借りた金を返さないという「契約精神」が欠如している。

儒教社会特有の現象だ。先進国のような市民社会の経験がないから、「契約概念」を知らない民族である。

一方では、学歴重視の社会ゆえ、口だけは達者で辟易する。言うこととやることが真逆である。

韓国政府は国家予算を使って、長期延滞中で返済能力がない約80万人の負債を全額減免することにしたと報じられた。

負債の一部でない。債務全額を減免する政策が出てきたのは今回が初めて。

長期延滞者が正常な経済活動ができるよう支援するためだと韓国政府は言っている。

繰り返される「徳政令」

『中央日報』(7月27日付)は、「長期延滞80万人に政府予算投入、負債減免を推進」と題して、次のように伝えた。

韓国では、これまで2回借金棒引きという「徳政令」が行なわれてきた。今回は3回目になる。

借金する側は、政権が変われば人気取りで「徳政令」をやるものと見込んでいる。だから、借金返済をしないで延滞しておくのだ。

こういうモラルハザードが常態化している。日韓慰安婦合意見直しの動きもこの類いの一環である。

韓国新政府は、15年12月の日韓政府間の合意を無視した行動に出ている。

すなわち、「日本政府提供の資金受領のほかに、日本政府へ個人賠償請求の道が残されている」と平然と発言している。

元慰安婦に対して、日本から貰えるカネなら何でも貰えという浅ましい姿勢を見せているのだ。

このように、韓国政府自身がモラルハザードに陥っている。ここまで来ると、ルーズな金銭感覚は、韓国の民族特性である。

(1)「崔鍾球(チェ・ジョング)金融委員長は7月26日、就任後初めて記者懇談会を開き、『長期少額延滞者のうち償還が難しい階層に対しては積極的に債務整理を支援する』とし、『具体的な案は8月初めに出す』と述べた。

これは文在寅(ムン・ジェイン)大統領が公約した国民幸福基金の長期少額延滞債権(10年以上、1000万ウォン以下)消却案を民間に拡大したものだ。

貸付業者が保有する長期延滞債権を政府予算で買い取った後に消却する方式だ」

「 国民幸福基金」は、朴槿恵・前大統領時代につくられた制度だ。

消費者金融の高い利子に苦しむ庶民や、連帯保証人になったため負債を肩代わりせざるを得なくなった庶民を助ける目的であった。

政府が、個人の債務返済額を最大半額に減額するとともに、低利で融資し最長10年かけて返済できるようにするもの。

長期延滞で苦しむ人の自活意欲を高め、経済の好循環を生み出すのが目標とされた。

この「国民幸福基金」の崇高な目標は、庶民のルーズな金銭感覚によって踏みにじられた。

民間金融機関でも、新たなモラルハザードだけを生んでいる。

長期少額延滞債権(10年以上、1000万ウォン=約100万円以下)消却案を提案せざるを得なくさせたのだ。

(2)「崔委員長は、『予算の確保によって変わるだろうが、少なくとも民間部門で(債権消却対象が)40万人以上になるだろう』と説明した。

従来の国民幸福基金保有債権のうち消却対象の長期少額延滞者は40万人。

したがって全体の『負債減免』対象者数は80万人を超えると予想される。

ただ、償還能力がない人に限り減免する。崔委員長は「モラルハザードの可能性を考慮し、償還能力を徹底的に審査する」と説明した。

法定最高金利も引き下げる。崔委員長は『施行令を改正して貸付業法の最高金利を24%に引き下げ、来年1月から施行する考え』と述べた」


どの程度の人数が「文徳政令」で救済されるのか。

① 民間部門で(債権消却対象が)40万人以上

② 従来の「国民幸福基金」保有債権のうち消却対象の長期少額延滞者は40万人。

以上の80万人以上が「文徳政令」の救済対象になるという。

このほか、貸金業法の改正で最高金利を24%に引き下げる方針という。

韓国貸付金融協会が16年1年間、司法当局と消費者から依頼された計310件の不法消費者金融取引の内訳を分析した結果、平均利子率は2279%にも達していた。

この目もくらむ暴利を許しておくこと自体が政府の怠慢である。これでは借金返済は不可能だ。


国民幸福基金に申請した人は2013年10月末までに24万人。このうち21万人が対象となった。

国民幸福基金のほかにも似たような制度が7つあり、合わせて66万人の返済額が減額されたという。

66万人が、「債務返済額を最大半額に減額するとともに、低利で融資し最長10年かけて返済できるようにする」という恩恵を受けた。

日本では「サラ金」の貸出金利の上限引き下げを行い、過去の金利過剰支払いは業者に返済させる措置を講じた。

この措置では、業者に経営のしわ寄せが行ったものの、借り入れ側は救済されて、「モラルハザード」は起こらなかった。

韓国では、政府自らが財政資金を投じて、借り入れ者の救済をするというもの。

韓国の徳政令は3度目である。

不心得者は、「次もあるのでないか」と期待するのは当然だ。

現に、今回の「文徳政令」を招いている。

日本の室町幕府8代将軍足利義政が、徳政令を13回もやっている。

まさに、「モラルハザード」の最適例であろう。

韓国経済の将来を考えると、こうした徳政令の繰り返しが大きな禍根を残すはずだ。5年後の2022年には、さらに大がかりな徳政令を打ち出すに違いない。

ここで、文在寅氏が大統領選挙中にどのような「徳政令」構想を持っていたかを振り返っておきたい。

選挙中示した「文構想」

『朝鮮日報』(3月17日付)は、「韓国大統領選、文氏、貸出金利上限20%、家計債務制限構想」と題して、次のように報じた。

韓国政治を見て気づくことは、何ごとも後追いである。

問題が起こってから、「さあ、どうしよう」というタイプである。

いわゆる高金利のヤミ金融問題は、韓国で深刻化していたが、規制を加えるわけでもなかった。

日本が上限金利を20%と決めており、それ以上の金利を禁止したのと比べ、借入側の法的保護が疎かになっていた。


(3)「韓国大統領選で野党共に民主党の有力候補である文在寅(ムン・ジェイン)氏は、『韓国の家計債務は昨年末現在で1344兆ウォン(約135兆円)に達し、不良債権化のリスクが非常に高い。

モラルハザードが発生する可能性がある部分への補完策が見えない』と述べた。

文氏はまず、『家計債務総量規制』を導入し、可処分所得に占める家計債務の割合を150%に抑制するとの目標を設定した上で、それに沿って家計債務が無限に膨らまないような政策を取ると表明した。

特に庶民層の金利負担を軽減するため、現在最高27.9%となっている貸金業者の金利をまず一般銀行の貸出金利上限である25%まで引き下げ、任期中に銀行とそれ以外の金融機関の貸出金利上限を20%にそろえる構想を明らかにした」

文氏は、「家計債務総量規制」を導入し、可処分所得に占める家計債務の割合を150%に抑制すると言う。

確かに、一定の貸出枠を設けることは必要としても、現在最高27.9%となっている貸金業者の金利をまず一般銀行の貸出金利上限である25%まで引き下げることだ。

それにしても、法制化が遅すぎた。

実は2年前、家計債務が急増し始めたころ、銀行貸出から締め出された人々が、高い金利の貸金業者へ殺到していた

。私のブログでもこの問題を取り上げたほどである。

ただ、日本の貸金業者が、かなり韓国へ進出している。日本で儲からなくなったので韓国へ進出した事情もあるのだろう。

こうなると、日本の金融業者もかなり荒稼ぎしていたことになる。


(4)「(共に民主党の)非常経済対策団の李庸燮(イ・ヨンソプ)団長は、本紙の電話取材に対し、『貸金業者が受ける衝撃もあるため、任期中に段階的に引き下げるという意味だ』とした上で、『日本は既に金利上限を20%に設定している』と指摘した。

これに先立ち、庶民金融振興院による既存の10%中金利庶民融資を活性化させるとした。生計費、起業費用など用途別に融資を細分化し、庶民による貸金業者の利用を抑える狙いだ」


韓国政治には、「泥棒を捕まえて縄を綯う」という無計画な側面が多い。

過去、「徳政令」を出してきた国であるだけに、庶民金融には格別の注意を払うべきなのだ。

日本がサラ金対策をしている事情を見ながら、これまで何らの対策を打たなかった。

こういう韓国政治の怠慢を厳しく問わなければならない。

身近な経済問題には無関心でも、「反日」となると生き生きと目を輝かせる。まさに、「感情8割、理性2割」の国民を証明している。

(5)「文氏は22兆6000億ウォン(約2兆3000億円)規模の不良債権を整理する方針も示した。

回収可能性がないのに、債務者の正常な経済活動を妨げていることが理由だ。

文氏サイドは203万人が恩恵を受けると試算している。

ただ、誠実に債務を返済する人との間で不公平が生じる『モラルハザード』の問題も生じる。


それについて、文氏は『債務減免は年齢、所得、財産、支出情報を細かく審査して実施するものとし、債務減免後に未申告の財産や所得が見つかった場合には、債務減免を無効とし、直ちに債権を回収する』と説明した」

すでに、回収不能な家計不良債権が、22兆6000億ウォン(約2兆3000億円)もあるというのだ。

約203万人が債務支払不能者である。

1人当たりでは113万円になる。

低所得層に対して、これだけの貸付をした金融業者の責任も追及されるべきだろう。借りる側も貸す側も、ともに無責任極まりない。返済できる範囲内で、借入や貸付のルールを設けることは不可欠である。

(6)「政府(国民幸福基金)が保有する債権のうち103万人、11兆6000億ウォン(約1兆2000億円)規模の『回収不能債権』を償却するとした。

李団長は『金融機関で回収不能と判断した債権を引き継いだものであり、償却費用がかかるわけではない』としながらも『モラルハザードを防ぐため、国税庁、保健福祉部(省に相当)、法務部などの政府機関を動員し、所得・支出動向を調べた上で、正常な経済現場に復帰させるようにする』と条件を付けた」

徳政令を出す場合、ただ債務棒引きで済む話ではない。

地方自治体と協力して、今後の生活が成り立つような支援こそ必要であろう。

債務を払えなかった理由が、病気か失業かを見極めて、それに応じた対策をとることだ。

ここまできめの細かい対策をとらないと、また徳政令発動の事態を招くであろう。


2003年も「クレジットカード」で救済措置を講じている。

この問題の経緯を見ると、韓国政府の安直な消費刺激策が浮かび上がってくるのだ。

韓国政府は民間消費を刺激するため2001年、クレジットカードの利用促進方策を導入した。

クレジットカード使用金額が、年間給与所得の10%を超える場合、超過額の10%が課税所得から控除(上限は30万円)されることになった。

これに伴い、カード発行競争の過熱からくる違法勧誘、個人の返済遅滞および破産の増加。

それに関連した犯罪の発生など、カード利用促進策の歪みが表面化した。

この問題解決策として、返済遅延者に対する金利の減免や、返済期間の延長など「個人ワークアウト制度」が導入された。

以上で見てきた通り、韓国経済の問題点の一つは、ルーズな家計債務の処理にある。

家計債務が秩序だって返済されず、最後は「延滞債権」として国家経済を揺るがす問題に発展している。

その繰り返しである。一度も抜本的な解決策がとられず、「徳政令」という対症療法に終わって、根本的な問題を先送りしてきた。

この民族が優秀であるとは言いがたい。

同じ失敗を二度、三度も繰り返す。その恥を知るべきなのだ。


(2017年8月1日)


韓国で「徳政令」、公共金融機関の消滅時効債権帳消し

2017-08-01 16:31:25 | 日記
2017/08/01 06:58

韓国で「徳政令」、公共金融機関の消滅時効債権帳消し

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

 金融委員会は31日、国民幸福基金と信用保証基金など公共金融機関が保有する消滅時効成立債権21兆7000億ウォン(約2兆1300億円)を償却することを決めたと発表した。

123万1000人が対象となる。

 今回の措置は、債務返済能力がない人や信用不良状態に置かれた人が借金の泥沼から脱却できるようにする狙いだが、故意に借金を返さない悪質な債務者も含まれる可能性があり、モラルハザードを招きかねないとして論議を呼んでいる。


 消滅時効成立債権とは、長期間元利を返済できない状態となった借金について、債権者が返済を受ける権利を喪失したものを指す。

金融負債の消滅時効は5年だ。例えば、会社員Aさんがクレジットカードローンを利用し、返済途中に失業や病気で借金を返せなくなった場合、それから5年でクレジットカード会社は債権を回収する権利を失う。

 しかし、借金を返済する義務は消えるが、借金そのものが帳消しになるわけではない。

このため、金融業者は訴訟、督促などで消滅時効成立債権を有効な債権へと復活させることができる。

継続的な督促で一部でも返済を受ければ、借金全額を返済しなければならない義務を10年延長させることができる。

 そうした点を考慮し、政府は公共金融機関が保有する消滅時効成立債権を全て帳消しにすることにした。

帳簿上、対象となる融資は「消滅時効成立」ではなく、「債務なし」と表示されることになる。


 銀行、クレジットカード会社などが保有する消滅時効成立債権は4兆ウォン規模で、対象者は91万2000人だ。

政府は民間金融機関にも自発的な債務免除を求めていく方針だ。



韓国の「戦略なき対北朝鮮外交」に、不安しか感じられない

2017-08-01 16:00:49 | 日記
韓国の「戦略なき対北朝鮮外交」に、不安しか感じられない

一体誰の為に、なんの為に…


真壁 昭夫

信州大学経済学部教授

2017年7月24日


対話の意志がない相手に秋波

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の対北朝鮮政策を見ると、今後の朝鮮半島情勢への不安を感じる。

最大の懸念は、核開発やICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射など、軍事的挑発を続ける北朝鮮への対応だ。

文大統領は一貫して、北朝鮮との対話を重視している。

文政権は、経済面を中心に中国との関係を強化したい。そのためにも北朝鮮との融和政策が重要なのだろう。

しかし、そもそも北朝鮮には対話の意思がない。

また、文政権内には、米国のミサイル防衛システムの配備は撤回しないとの主張もある。

文政権の政策の矛盾が続く間、北朝鮮の軍事的挑発を続け国際社会に制裁の解除などを求め続けるだろう。

当面、朝鮮半島を巡る不安定な状況が続きそうだ。

韓国・文政権が暴走を助長する

革新系の政治家として、従来の政治との決別を主張してきた文大統領の政策には矛盾がある。

それは、対話の意思を持たない北朝鮮に対して、対話を呼びかけていることだ。

ある韓国のエコノミストは、「北朝鮮が対話に関心を示さない中で、融和政策に効果があるとは思わない。

むしろ、北朝鮮の暴走を助長するのではないか」との懸念を述べていた。

北朝鮮に対して冬季オリンピックの共同開催や、軍当局者会談を提案するなど、対話政策は強化されている。

だが、これまでの展開を振り返ると、どれだけ韓国が対話を呼びかけても、北朝鮮が態度を軟化させるとは考えづらい。

北朝鮮が重視していることは、ICBMや核兵器という軍事的な脅威を米国に突きつけ、制裁解除などの有利な条件を引き出すことだ。

言い換えれば、北朝鮮にとって韓国の要請にこたえる優先度は低い。

韓国には中国との関係を重視したいとの考えもある。

特に、韓国が米国のミサイル防衛システムの配備を認めた結果、中国は韓国に対して報復措置を発動した。

その結果、現代自動車の売り上げが減少するなど、財閥企業の経営にもマイナスの影響が出ている。

米国が自由貿易協定(FTA)の再交渉を求める中、中国は文政権の拠り所としての存在感を強めている。

中国は、北朝鮮に圧力をかけ続けた結果、金独裁政権が更なる暴走に向かうことを避けたい。

その場合には、中朝国境に難民が押し寄せ、共産党の支配体制が揺らぐ恐れがある。

そのため、表向きは北朝鮮への圧力をかけつつも、中国は北朝鮮を追い込みすぎないようにしている。

米国はこの対応を手ぬるいと考え、中国企業への制裁を行っている。

日本を利用しようとする韓国への対策

同時に、韓国は国際社会を通した北朝鮮への圧力行使のチャネルも確保しておきたい。

文政権がわが国とのシャトル外交を再開した背景には、いざとなれば日本を通して北朝鮮に圧力をかければよいとの思惑があるのだろう。

それは、中国への配慮という点でも重要だ。

見方を変えると、わが国が韓国の意に従わない場合、韓国は慰安婦問題などの再交渉を持ち出し、反日姿勢を強めるだろう。

政策に矛盾を抱える韓国に対して、日本は冷静に対応すればよいだろう。

2015年12月に日韓両国が確認した慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決に関する合意の遵守のみを求めればよい。

それが守られないのであれば、要請には応じない。

感情的になって韓国を批判するのではなく、冷静に、政府間の合意に沿った行動を行うだけでよいはずだ。

むしろ、日本はアジア各国との関係強化に力を入れるべきだ。

経済連携に関する議論を進め、わが国の主張に賛同する国にはインフラ投資などで応える。

これによって、親日国を増やすことができるだろう。

それは、国際社会における日本の発言力を高めるためにも欠かせない。

それが、中長期的な国力の引き上げと、アジア太平洋地域の安定にもつながると考える。

米国のトランプ政権は内向き志向を強め、自国第一の政治を重視している。

一方、中国は覇権強化を目指している。

この状況の中でアジア各国などとの関係強化を進めることができないと、日本がアジア地域の中で孤立するリスクが高まる。

それを避けるためにも、わが国は世界経済の成長の源泉であるアジア新興国との関係を強化し、国際社会の連携を呼び掛けられるだけの発言力をつけるべきだ