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韓国経済、「暴風警報」企業体感は20年前の通貨危機を下回る

2017-01-20 10:06:46 | 日記

2017-01-18 05:00:00

韓国経済、「暴風警報」企業体感は20年前の通貨危機を下回る

勝又壽良の経済時評

急低下のBSI指標

日本経済模倣の限界



「選りに選ってこの時期に」と言うべきか、韓国経済は過去のツケがすべて一度に回ってきた感じだ。

「漢江の奇跡」という成功体験を持っているだけに、その内に何とかなると思いこんで込んできた。

ついに「奇跡」は起こらなかった。



 「漢江の奇跡」も種明かしをすれば、1965年の日韓基本条約によって、日本からの多額の賠償金や借款など約11億ドルを手にし、インフラ投資を行ったことが出発点である。

さらに、日本企業の技術と資本の支援を受けて、韓国財閥は基盤を固めたのだ。



韓国社会は、この舞台裏を知ろうともしない。

ひたすら、「韓国人の努力の結晶」と自画自賛している。

日本の支援があっての「奇跡」とは思っても見ない民族である。

いわば、「棚ぼた」で急発展したに過ぎないのだ。

今回のように経済環境が急変すると、為す術もないほど打ちひしがれている。

頼みの日本とは「冷戦状態」である。釜山の日本総領事館前に慰安婦の少女像を違法設置して、日韓関係が冷え込んでいるのだ。


急低下のBSI指標

『中央日報』(1月10日付け)は、「韓国企業の体感気温、通貨危機当時より下落」と題して、次のように伝えた。


日本では、「日銀短観調査」が企業の景況感を見る上で注目されている。

韓国では、大韓商工会議所の行う「BSI(企業景気見通し指数)」が、その一つとして関心が持たれている。

BSIとは、ビジネス・サーベ・インデックスの頭文字を取ったもの。企業からの聞き取り調査によって、景況感を探り出す目的で行われている。



前記の韓国BSIによると、企業景況感は極めて悪化している。

20年前である1997年の景況感すら下回るという「惨状」を呈している。

この弱り切った韓国経済が、回復できる具体的な手だては存在しない。

韓国政府が、今回の「釜山日本総領事館前」での少女像設置に対する日本政府の抗議に対して、低姿勢を余儀なくされている理由は、こういう景況感悪化によるものに違いない。



(1)「大韓商工会議所が9日に明らかにしたところによると1~3月期のBSI(企業景気見通し指数)は68で前四半期の86より18ポイント下落した。数値だけ見ればほぼ通貨危機当時を彷彿とさせる。

1997年10~12月期に93だったBSIは通貨危機の衝撃で翌年1~3月期に75と18ポイント落ちた。

むしろ絶対数値は今回が通貨危機当時よりさらに低い。

全国2400社余りの製造業者に質問形式で調査するBSIは100を基準として景気に対する見通しが良い、悪いと判断する」。



韓国BSIでは、100を基準にしている。これを上回れば景況は好転。

下回れば悪化と判断する。

今年1~3月期は68で、前期の86より18ポイントも下落した。

1998年1~3月期は75で前期よりも18ポイントの急落となった。

このデータから見ると、今回見られたBSIのレベルは、20年前を下回っており、深刻な状況に追い込まれていることが分かる。



(2)「企業の体感景気が悪化した理由は、内外の環境がすべて悪いからだ。企業は今回の調査で

対外要因としては、

「中国の成長率鈍化」(42.4%)、

「世界の保護貿易主義拡散」(32.3%)、

「米国の金利引き上げにともなう金融環境悪化」(28.4%)を挙げた。



韓国国内の悪材としては

「国内政治対立にともなう社会混乱」(40.0%)、

「資金調達困難」(39.2%)、

「企業関連規制」(31.6%)が多く挙げられた」。



景況感悪化の要因を対外要因と国内要因に分けると、次のような特徴が浮かび上がっている。

対外要因の1位では、中国の成長率鈍化が42%にも達している。

国内要因では1位が政治不安の40%である。

次期政権が革新政党になると、企業に厳しい線が予想されるからだ。

法人税率引き上げという逆行的な政策

が飛び出す懸念もある。



前記のような内外要因の1位を考えると、設備投資も控えめになるのは致し方ない。

景気のエンジン役の設備投資が低調予想では、韓国経済が底ばい状態を続けざるを得ない。

韓国経済は、対中国の輸出依存度が高いのだ。

トランプ次期米大統領の対中国政策が、どのようなものになるか。それによって大きく左右される。



トランプ氏が、大統領選挙中に発言していたように、対中国への関税引き上げ策が実行されると、韓国経済への影響は甚大である。

対中国輸出が、全体の25%も占めるためだ。

IMF(国際通貨基金)の予測では、中国のGDPが1%ポイント低下すると、韓国のGDPは0.5%ポイントの低下が見込まれる。

韓国経済は、中国経済の道連れにされるリスクを背負っている。



(3)「暗鬱な見通しにより、企業の新年の経営方針は概ね保守的だ。現状維持を目標にした企業が65.1%で最も多く、採用は減らすか昨年水準(49.6%)と答えた。

質問で企業は、今年最も緊急な政策課題に「消費心理回復」(55.7%)を挙げた。

実際に韓国銀行が調査した消費者心理指数(CCSI)は昨年10~12月に3カ月連続で下落した。12月基準で94.2となり7年9カ月来の最低水準だ」。



企業は、消費心理回復を期待している。

韓国では、消費心理が大統領支持率と密接な関係を持つという特異な状態にある。

憲法裁判所の大統領弾劾審査の結果は、年央まではかかりそうである。

その後、選挙があるとすれば、8~9月まではモヤモヤ状態が続くであろう。消費心理の回復は、なかなか進まないであろう。



(4)「流通業界ではすでに『消費氷河期』を実感している。

昨年11月基準で流通業者売り上げは前年同期より6.5%増加したが、オンライン流通業者だけ成長した。

オンラインを除いた百貨店(マイナス2.8%)、大型マート(マイナス6.1%)などオフライン業者は売り上げが減少し苦戦した。

高高度防衛ミサイル(THAAD)配備にともなう中国の報復性措置により免税店の来客数が減り、昨年11月基準で免税店利用客は前月比17.7%減少した。こうした傾向は今年も続く見通しだ」。



個人消費が、景気回復にとって唯一の要因となっている。

だが、オンライン流通は成長しているものの、実店舗売りが不振を極めている。

オンライン流通では低・中級品が売れても、高級品の荷動きが止まったままである。

これは、昨年10月から実施した「接待規制法」が大きな影響を及ぼしている。

韓国の「接待文化」が汚職の温床になっているので、これを是正しようという狙いからだ。



以上の通り、韓国経済には突破口が見つからない「八方塞がり」状況にある。

ここで、「トランプ旋風」が吹いて米中貿易戦争でも始まれば、その余波でウォン相場の急落が考えられる。

現在すでに、危機ラインとされる1ドル=1200ウォン台を出没している。これが1300ウォンに向けて動き出すと、「3度目の通貨危機」になりかねないのだ。



韓国経済研究院の権泰信(クォン・テシン)院長は1月8日、

米シカゴで開かれた米韓経済学会主催の朝食会で、「消費、投資、輸出という3本の成長の柱が崩壊する『パーフェクト・ストーム』が到来している」と指摘した。

パーフェクト・ストームとは、穏やかな表現ではない。

大嵐とでも表現できるが、確かに韓国経済の消費、投資、輸出という3つのエンジンが停止状態に追い込まれている。「パーフェクト・ストーム」が止む気配はないのだ。



日本経済模倣の限界

韓国経済が、こういう状態に追い込まれた理由は、すべて日本経済をひな形にしてきた結果であろう。

朝鮮戦争後の韓国経済復興は、輸出に依存するほかなかった。

日本経済が、戦後復興の足がかりを対米輸出に求めた事情と似かよっている。

日本の場合、太平洋戦争前に商圏としていたアジア地域は、敗戦によってすべて失い、対米輸出しか道はなかった。

日本外交は、「対米追随」などという批判が今も聞かれる。

これは、戦後日本が主力輸出市場として米国を開拓したことと無縁でない。

旧ソ連や中国の市場では、米国市場の代役にならなかったのだ。



一方、韓国は恵まれていたのだ。

先述の通り、日本企業支援の資本と技術によって復興し、日本企業の製品を真似してつくり、日本企業が開拓した市場へ、「小判鮫商法」で入り込んできたのである。

韓国企業は、ここから一歩も出なかった。

日本を真似して、重厚長大という産業構造になったものの、新たな技術開発をせずに時間を空費していたのだ。



日本企業は、1980年台後半からの恒常的な円高に見舞われながら、必死で技術開発に励み新製品を送り出してきた。

その成果の多くは、円高によって帳消しにされた。

韓国は、「円高=ウォン安」のお陰で、次々と日本企業の開拓した市場へ「小判鮫商法」で入り込めたのだ。

こうして韓国企業は労することなく、「円高=ウォン安」に救われて成果を上げてきた。



2012年末の安倍第二次政権の発足で事態は急変した。

円安=ウォン高へと風向きは変わったのだ。

日本企業は、過去の技術開発による成果が一挙に花開くことになった。また、超円高の中で、海外需要地や

その近辺に工場進出する自衛策を固めた。これが、現在の日本企業に大きな財産となっている。



韓国企業は、過去の日本企業が身を削る思いで実行してきた企業努力と無縁であった。

円高=ウォン安に馴れきっていたのだ。

だから、真剣な合理化努力を怠ってきた。

日本が超円高で「フラフラ」状態になればなるほど、ウォン安で稼げるという構図である。

この現象を誤解して、「日本経済弱し」と見たのだ。

猛烈な「反日」は、弱い日本を叩きつぶせるチャンスと踏んだ、韓国の理不尽な逆襲でもある。



折しも、2000年台後半から日本政治は混迷した。

「1年交替の首相」という政治の惨状である。

事実、毎年のように首相が交代した。

韓国が逆襲できると見たのも理由があるのだ。韓国も油断したのであろう。

だから、政治も経済も一切の合

理化努力を放棄したのだ。韓国の反日は、日本への自信の表れでもあったに違いない。



韓国は今、これまで一切の努力を怠ってきた咎めが噴出している。

政治は「国会先進法」によって、重要法案が5分の3の賛成がなければ議決できなくなった。

単純多数決ではない。これでは、与党の法案など滅多に成立しないのだ。

こうして与党の掲げる法案は棚晒しになっている。

単純多数決でなければ、与党として政策を成立させるチャンスはない。

韓国の経済制度が、改革されずに過去の経済システムを抱えている事情は、この「国会先進法」にある。

これを廃止するにも、国会の5分の3規定に引っかかって不可能に違いない。



アジア開発銀行(ADB)は、1月初めに「アジアの労働人口不足への対処案」と題する報告書を発表した。

その中で、日韓などは生産年齢人口(15~64歳)が急速に減少するので、定年を69歳に延長することを提案した。

日本の定年制はすでに65歳。韓国は昨年から60歳に延長されたばかりである。



韓国の場合、60歳への定年延長に伴い、年功序列賃金体系の是正をしなかった。

これは、大変なミスである。

定年延長下の年功序列賃金体系では、企業の支払賃金総額は膨張する一方である。

ここで韓国企業は昨年、「名誉退職」という名の「希望退職」を強行した。

労働者に定年延長のメリットが与えられず、「希望退職=強制退職」という逆の苦痛を与えたのだ。



ことほど左様に、韓国政治は調子外れのところが目立つのだ。

年功賃金体系是正は大企業労組をバックとする労働組合連合によって阻止されたまま。

これを革新政党が支持するから、「労働改革法」は国会で棚晒しになっている。

年功賃金体系の是正は、先進国共通のテーマである。


産業構造の変動が激しい現在、年功序列賃金を維持していける企業など存在しないのだ。

雇用の流動化によって転職を自由にすることは、働く側のメリットであり、一国経済の成長率も高まる効果が立証されている。

韓国の政治も企業も、こういう労働力流動化に無頓着過ぎる。

その弱点が現在、韓国経済を襲っているのだ。ただ、保守的な韓国の政治状況(革新政党も従来の主張を変えない点で保守的である)を考えると、真の革新(イノベーション)は不可能であろう。

こうやって、互いに自己主張をぶつけ合っているうちに、韓国経済は自滅の道を辿るに違いない。

儒教社会とは、こういう退廃的な側面を抱えているのだ。



先に引用した韓国経済研究院の権泰信院長は次のように述べている。



(5)「権院長は、『経済政策不確実性指数』を引用し、

韓国の同指数はアジア通貨危機当時150だったが、大統領の弾劾審判中である現在は3倍近い水準(約420)にあるとし、

『大統領選による不確実性も高まっており、投資も回復が期待しにくい』と述べた。

輸出競争力も低下している。権院長は、『15年に世界の商品・サービス需要は3%増加したが、韓国の輸出は0.8%の伸びにとどまった。

韓国の輸出伸び率が世界需要より2~3倍高かった通貨危機当時よりも輸出活力が劣る』と指摘した」(『朝鮮日報』1月10日付け)。



韓国には、「経済政策不確実性指数」が存在するという。

私は寡聞にして聞かないが、日本にはそのような指数はないと思う。

通常は、消費者物価上昇率+失業率」を経済不安指数などと呼ぶことはある。

韓国の場合、財閥が政府と密接な関係にあるので、保守党と財閥の「相性」はよいが、野党と財閥の「相性」は良くない程度のことは分かっている。

「経済政策不確実性指数」とは、いかなる指標を組み合わせているものか。後学のために知りたいものだ。



「経済政策不確実性指数」が高まっていることは、設備投資にブレーキを掛けるであろう。

普通、設備投資は実質金利(名目金利-物価上昇率)の高低が目安になっている。

韓国では、今年の米国金利が3回(0.75%分)引き上げ予想のため、

米韓金利差の拡大を避けるべく、韓国も追随利上げを迫られる。

となると、設備投資に影響する実質金利は上昇の一方である。

よって、韓国の設備投資は停滞するはずだ。



権院長は、次のように指摘している。

世界の商品・サービス需要は、15年に3%増加した。韓国の輸出は0.8%の伸びにとどまった。

韓国の輸出伸び率が世界需要より2~3倍高かった通貨危機当時よりも輸出活力が劣ると。

この理由について説明はないが、次のような解釈が可能であろう。



韓国の主力輸出品である素材や部材は、発展途上国で内製化が進んでいることだ。

典型例は中国である。輸入に依存してきた素材や部材の内製化を進めた結果、輸入依存度が低下している。

こうして、世界の貿易量の伸び率は、GDP成長率を下回ってきた。

これは、「スロー・トレード」と呼ばれる現象で、韓国だけ特有なことではない。


1997年のアジア通貨危機後、日本円は「危機回避通貨」として買われたから、「円高=ウォン安」となり、韓国の輸出は増えたはずである。

現在は、「スロー・トレード」時代である。

また、円安相場の進行もあって、韓国輸出だけが急増する環境にはない。

ほかに、前述の通り途上国での部材・中間財の生産比率が上がっている。

こうした諸要因によって、韓国の輸出は伸びにくい状況となっているのだ。



(2017年1月18日)


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