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サヘル・ローズ、体験つづった新著で「結婚しない私、心配しないで」

2022-02-14 15:58:21 | 日記

サヘル・ローズ、体験つづった新著で「結婚しない私、心配しないで」

イラン出身で、俳優として活躍するサヘル・ローズさん(36)が1月、書籍「言葉の花束 困難を乗り切るための“自分育て”」(講談社)を出版しました。
 
差別や貧困などを経験してきたローズさんに、コロナ禍で不安や生きづらさを感じている人への思い、30代の同世代に届けたいメッセージを聞きました。

――本を通して伝えたいことは?

「困難を経験してきた自分だからこそ、伝えられること、力になれることがあるのではないか」と思い、本を書きました。

生い立ちに触れ、自分の経験や失敗談をつづりながら、母や、私を助けてくれた人たちの言葉を詰め込みました。

貧困、いじめ、困難を救ってくれたつながり

――これまでにどんな経験をされたのですか?

イランの児童養護施設で暮らし、養子縁組した養母と8歳のときに、来日しました。

外国人母子家庭で、差別も貧困もいじめも経験し、一時は絶望し、ギリギリ自死から逃れたこともあります。

日本語を教えてくれたのは、通っていた小学校の校長先生です。

日本の文化も習慣も知らず、言葉もわからない。

戸惑う私に、「お昼休み以外は教室にいかなくていいから、校長室においで」と言ってくれました。

一時、住むところに困り、公園で生活していたときに、小学校の給食調理員のおばちゃんが、「大丈夫?」と声をかけてくれ、ごはんを食べさせ、自宅に泊めてくれました。

母は働き詰めで家にいない時間が長く、中学時代はいじめにもあって学校でも居場所がなくなりました。

すごくしんどくなって死を考えたことがあります。

母に打ち明けると、死ぬことを止めなかった。

「いいよ。サヘルのやりたいようにやって」と言ってくれました。

「自分も生きる意味がなくなるから、ついていくね」と。

それらの言葉をもらったとき、母の深い愛を感じ、死んではいけないと思いました。

その出来事があって、「お母さんにちゃんとしたご飯を食べさせたい。お母さんを幸せにしたい」と生きる目標が見つけられました。

母はもちろんですが、給食のおばちゃん、校長先生など、いい人がまわりにいてくださり、誰一人血がつながっていなくても、つながりあい、支えられ、救われてきました。

さまざまな困難を切り抜けてきたからこそ、今、弱っている人々に、同じ気持ちで寄り添えるのではないかと思いました。

本を通して、少しでも温かい気持ちになってもらえたらいいな、と思っています。

サヘル・ローズさん(読売新聞写真部 青木瞭撮影)

――現在の活動について教えてください。

自分の経験もあって、日本の児童養護施設の子どもを支援したり、海外では難民キャンプや学校に行けない子どもの支援をしたりしています。

なんでも急には変わりませんが、地道にやっていくと花開くことがある。

もっと社会を変えていきたい、メッセージを訴えたいとも思いますが、自分のキャパシティーを超えすぎないように、こつこつと活動していきたいです。

仕事でも、支援でも自分が苦しかったり、家族を置き去りにしたりして行うものではない。

この十数年の間に、幾度もキャパシティーオーバーを起こし、失敗をしてきたからこそ、そう思います。

疲れた時は立ち止まっていい

――同世代の女性に伝えたいことは?

20代はいろんな冒険や挑戦をしてきたけれど、30代になって、ふと不安に駆られたり、迷いが生じたり、という女性は多いのではないでしょうか。

私も30代となり、

「結婚しないの?」とか、

「そろそろ子どもは?」などと言われる機会が増えましたが、

「私は今のままで幸せ。まじめなのも、繊細なのも、結婚しないのも、これが私の生き方。だから安心して」と伝えたいです。

社会は何かと私たちを年齢の枠にはめようとします。女性も子どもを産まずに養子を考えてもいい。

家庭ではなく、やりたいことがあるなら、それを追いかけてもいい。

この先の人生で、やっておけばよかったと後悔しないよう、自分らしく生きてほしいし、自分もそうありたいですね。

もちろん疲れたときは立ち止まっていいし、やめたかったらやめてもいい。

エッセー集「言葉の花束」について語る俳優のサヘル・ローズさん 大手小町 読売新聞 青木瞭撮影
サヘル・ローズさん(読売新聞写真部 青木瞭撮影)

これまでの人生について話すと、深刻に受け止められ、かわいそうに思われがちなのですが、自分としてはずっと前を向いて歩いています。

人間ってどんどん更新されていくものだと思うから、今の私をみてもらいたい。私の出会ってきた言葉が、多くの方に届けばと願います。

(聞き手・読売新聞メディア局 谷本陽子)


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