首都に集中、釜山は衰退 若者流出・産業低迷 政治へ期待薄く
2021年4月6日 06時00分
<政権審判 4月7日 ソウル・釜山市長選㊦>
幅1メートルもない路地が入り組んだ山の斜面に、段々畑のように平屋が立ち並ぶ。
所々に「空き家 出入り禁止」の張り紙が張られ、崩れそうな廃屋も目立つ。
朝鮮戦争時、避難民が住み始めてできた釜山プサン市東区の安昌アンチャン村。
再開発からも取り残され、出ていく住民が後を絶たない。
空き家や廃屋が目立つ釜山市東区の安昌村=3月29日撮影
◆「老人ばかりだ」
2000年代には、建物に壁画を描いて観光客を呼び込み、村の再生を目指したが、頓挫。「近所の3分の2は出ていった。
4人の子どももみんな村を離れ、若い人はほとんどいない。老人ばかりだ」。40年以上、村で暮らしている女性(73)は嘆く。
韓国第2の都市、釜山。
1995年に388万人だった人口は、20年には339万人まで減少した。
安昌村がある東区のように半減した地区もあり、数年後には仁川インチョン市に抜かれる可能性がある。
人口減とともに経済も沈滞。
繁華街の西面ソミョンや南浦洞ナムポドンでは近年、空き店舗が目立つようになった。
西面の不動産業者は「新型コロナウイルスの影響もあるが、それだけではない。若い世代がどんどん釜山を出ていってしまっている」と話す。
空き家が目立つ釜山最大の繁華街・西面
韓国は5000万人の人口の約半分が首都圏に暮らし、地方の若者も大企業に入るため、こぞってソウルの名門大を目指す。
過度の一極集中は地方都市の衰退を招き、釜山では造船などの産業も低迷。20年の統計では、労働者の平均賃金は、8つの主要都市の中で最低の250万ウォン(約24万円)で、ソウルより45万ウォン低い。
◆冷めた市民
市長選に入り、革新系与党「共に民主党」候補の金栄春キムヨンチュンは30年までに新空港を建設し国費7兆5000億ウォンを投入すると表明。
保守系野党「国民の力」候補の朴亨埈パクヒョンジュンも新空港に賛成しつつ、新空港と市内を結ぶ高速鉄道の整備も公約に掲げる。
雇用や教育の充実も訴えるが、互いに大規模事業を前面に押し出し、過去の言動や政策を批判し合う選挙戦を、市民は冷めた目で見る。
「大金をつぎ込んで空港をつくって何になるのか。もっとやらないといけないことがあるのではないか」。安昌村で自治会長をしている女性(67)は、ため息をつく。
元々、保守が地盤とする地域だが、釜山近郊の巨済島コジェドで生まれ、小学校から高校まで釜山で過ごした文在寅ムンジェイン大統領には期待も大きかった。
経済政策は成果がなく、政権の不祥事も相次ぐ。
「最初の期待は、すべて消えてしまった」。
前回の大統領選、釜山市長選ともに革新系の候補に投票したという金吉成キムキルソン(42)は、言う。
勤める自動車会社は早期退職を募って人員を減らしている。
「未来が見えない。今の政権を見れば、与党に入れる気にはならないし、保守も嫌だ。投票しないことも考えている」
(敬称略、釜山で、中村彰宏、写真も)=おわり
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