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[FT]巨額の相続税負担にあえぐ韓国財閥

2020-06-03 17:35:54 | 日記
[FT]巨額の相続税負担にあえぐ韓国財閥

2020/1/15 17:53日本経済新聞 電子版

Financial Times

韓国の有力な企業グループは、戦後の荒廃から同国を世界有数の経済国へと発展させる中で富と権力を築き上げた。


サムスン電子の李在鎔副会長は父親の李健熙会長から経営の実権を引き継いだ=AP

だが、その多くは現在、高齢化した重鎮たちが健康を害する中、世界最高水準の相続税を課す国において一族の資産を売却せざるを得なくなっている。

ある企業グループの中年の最高経営責任者(CEO)は、「私の親たちが会社を立ち上げた20年前に比べ、当社の株価は大きく上昇しており、規則を曲げずに多額の相続税を支払う手立てはない」と語った。

「実際、税金を払うために会社を売却しなければならないかもしれない」という。

■国内上位25社で2兆円超とのデータ

調査会社CEOスコアのデータによると、相続税率が50%(相続人が同族会社の筆頭株主になる場合は65%)に上るため、国内上位25社の後継者が直面する納税額は合わせて210億ドル(約2兆3100億円)に達する。

電子機器を製造するLGグループの経営を2018年に引き継いだ具光謨(ク・グァンモ)会長(41)は、これまでで最大の税負担に見舞われている。

チェボル(財閥)と呼ばれる大手企業グループのトップの中で最年少の具氏とその姉妹は、5年間で9215億ウォン(約875億円)を納める。

ほぼ全ての大手韓国企業はどこかの時点で、創業者一族の支配を維持するための汚職や違法行為の責任を問われている。

専門家らは、創業家が資産や支配力を次世代に移転する際の打撃を和らげるため、親会社と関連会社間の複雑なグループ内取引に手を出す恐れがあるとの懸念を抱く。

韓国の競争監視機関によれば、10大財閥のそのようなグループ内取引は2018年に総額151兆ウォンに達し、各社の取引に占める割合は約15%だった。

調査会社CEOスコアのパク・ジュグン代表は「大手財閥で権力の移行が進んでいる」と語る。

「こうしたプロセスに高い相続税が重なり、各社が所有者の持ち分を移転する別の方法を見いだそうと腐心する中でさまざまなガバナンスの問題が生じている」という。

■サムスンの相続税の行方に監視の目

財閥に批判的な向きは、国内最大のサムスングループが相続税逃れをしようとしていなか目を光らせている。

韓国一の資産家であるサムスン電子の李健熙(イ・ゴンヒ)会長(78)は、2014年に急性心筋梗塞で入院して以来、病床についている。

同会長はグループ内61社の株式16兆3000億ウォン相当を保有し、長男の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長(51)を含む3人の子どもは9兆8000億ウォンの納税に直面する。

李一族の広報担当者は、「創業家は相続に関連する全ての税金が法律の定めに従って透明に支払われると言明している」と話した。

また「一族は税制に関するコメントは差し控える。(李健熙氏の)容体は現在も安定しており、将来の納税について予測を立てたり、この問題に関する筋書きを議論したりすることはできない」と述べ、それ以上の質問に対する回答は拒否した。

だが、韓国政府のある当局者は匿名を条件に、肥大化する財閥の相続税逃れのやり方を規制当局が監視することはほぼ不可能だと指摘した。「規則を順守する各社の道徳基準に頼るしかない」という。

一方、資産家一族の資金状況に注がれる世間の厳しい目や、不正なグループ内取引に対する政府の取り締まりを考慮すると、財閥が課税を逃れることは一段と難しくなっているとの声も聞かれる。

調査会社チェボル・ドットコムのチョン・ソンプCEOは、財閥一族が「かつてのような疑わしい手口で納税額を減らそうとした場合」、今では世間の反感が一層強いという。「創業家の経営支配を維持するのは現世代が最後かもしれない」

■相続税を理由にした会社売却も

同CEOによると、相続税が同族所有に及ぼす影響はすでに見受けられる。

「多くの知人が非常に重い税負担を理由に自社を売却し、海外へ行くのを目にした」と話す。

ただ、サムスンの場合、李一族は税金を払うために傘下の証券・保険会社を含む非中核事業や所有不動産の処分を検討する一方で、最重要部門であるサムスン電子については経営支配の維持を目指すだろうと、事情に詳しい関係者は明らかにする。

財閥を批判する人々は、相続税負担を過小評価しており、相続人は自社の非中核部門や関連会社の持ち分を売却し、増配し保有株式を担保とすることで支払えると主張する。

同税は5年間で納付することができ、さらに2年延長できる可能性もあるという。

最近になって富を築いた国内の一部企業の間では、新たな意識も芽生えている。

上場するあるバイオテック企業の創業者は「我が国は急速に発展したせいで社会的セーフティーネット(安全網)が欠けている。

だから高い相続税に反対ではない」と話した。「われわれは皆、能力がどんなにあろうと社会インフラの恩恵を受けている。財産の一部は社会に還元すべきだ」という。

また、政府の取り分に不快感を抱く一部の財閥家の願いをよそに、世論ははっきりしている。

南西部の光州で牛乳を販売するJSアンさんは「税金の額がいくらであれ、彼らは残りの人生に費やすには十二分のものを手にしている」と話す。

「私はどれだけ牛乳を売っても生涯で数兆ウォンもの稼ぎは得られない」


By Song Jung-a and Edward White


(2020年1月14日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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