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徴用工問題 「今度こそは」か 重大局面の日韓関係

2022-07-30 18:45:25 | 日記
徴用工問題 「今度こそは」か 重大局面の日韓関係

7/30(土) 10:00配信


韓国政府が開いた徴用工問題の解決を模索する「官民協議会」の終了後、記者団の取材に応じる原告側の関係者=ソウル市内の韓国外務省前で2022年7月14日、坂口裕彦撮影
 タイムリミットは着実に迫っている。本当に大丈夫なのか。日韓関係の未来がかかる重大局面にさしかかっているだけに、徴用工問題をめぐる韓国側の動きは何とも心配だ。  

◇日韓関係を揺さぶる判決  韓国最高裁(大法院)は2018年、日本の植民地だった第二次世界大戦中、日本企業で働かされた韓国人の元徴用工らへの賠償を命じた判決を確定させた。このため、敗訴した日本企業が韓国国内に持つ資産を売って、原告への賠償に充てる「現金化」に向けた裁判所の手続きが着々と進んでいる。 

 なぜ判決は、日韓関係を大きく揺さぶるのか。日本政府が、元徴用工への損害賠償を含む戦後補償問題は1965年の日韓請求権協定で、「完全かつ最終的に解決された」と判断しているからだ。

  この協定に基づいて、日本は韓国に対して、有償・無償計5億ドルの経済協力を行った。

日本政府は「韓国最高裁が出した判決によって生じた問題は、韓国国内で解決すべきだ」と主張している。

日本が過去の不幸な歴史を直視し、反省を忘れてはいけないのはもちろんだが、「国同士で約束したことは守るべきではないか」という日本政府の主張は妥当に思える。 

 タイムリミットと書いたのは、敗訴した三菱重工業の特許権や商標権の売却命令が最高裁で8~9月にも最終確定するとの見方が出ているからだ。

日本企業に実質的な被害が出た場合、日本政府は報復措置に乗り出す構えで、日韓関係は根っこから崩れかねない。

◇改善に前向きな尹大統領  三権分立を理由に傍観した文在寅(ムン・ジェイン)前大統領とは異なり、5月に就任した尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、冷え込んだ日韓関係の改善を目指している。

尹氏に近い複数の関係者は「腹が据わっていて、人の面倒見も良いリーダーだ。

日本には好印象を持っている。お酒も好きだから、酒豪とされる岸田文雄首相とは絶対に気の置けない仲になれる」と口をそろえる。 

 6月には羽田空港とソウルの金浦空港との間の航空路線が再開したが、もっとも前向きだったのは、尹氏自身だったという。

人的交流の拡大が、硬直した日韓関係をほぐすと踏んでいるようだ。 

 実際、尹氏は記者会見でも、率直な発言が目立ち、「元検事総長」の前職から連想される重々しいイメージとはずいぶん異なる。

尹氏と4日に韓国大統領府で会談した経団連の十倉雅和会長は「日韓関係を正常化するという尹氏の強い決意、熱意は揺るぎない。ユーモアも気遣いもある人だ」。

傍らで聞いていて、尹氏の人柄に好感を抱いたことが伝わってきた。 

 けれども、「それなら徴用工問題も心配なし」とはならない。

韓国政府が楽観的で、解決案づくりも詰めが甘いように思えてならないからだ。

  たとえば、尹氏と岸田氏が先月28日、北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議に合わせて、スペイン・マドリードで数分間、初めて顔を合わせて交わした会話。

日本政府の発表では、岸田氏は尹氏に対して「非常に厳しい日韓関係を健全な関係に戻すため、尽力してほしい」と伝えた。

ところが、韓国政府の発表では、岸田氏は「より健全な関係に発展できるように努力しよう」と尹氏に話したことになっていた。

まるでニュアンスが違う。

 ◇ボールは日本政府にも  尹政権発足から約2カ月。ようやく、といった感じで韓国政府は4日、解決策を模索する「官民協議会」を発足させた。

韓国政府が日本企業の賠償金をいったん肩代わりする案や、日韓両国の企業や個人による寄付で基金を作って、原告への賠償に充てる案が浮上している。

しかし、一部の支援団体は

「韓国政府は、日本の要求に合った解決策を探している」と反発して、会合への不参加を決定。合意形成は難航している。

 尹政権の支持率の低下も気がかりだ。

世論調査会社「韓国ギャラップ」が15日発表した調査結果によると、尹氏の支持率は32%で、不支持率は53%。

政権の求心力が低下するほど、多様な世論をまとめあげて難題を決着させることは難しくなる。

尹氏に近い関係者は「韓国の世論が納得してくれる解決案を作るには、日本側の協力が必要だ」とこぼしていた。 

そんな簡単な話ではないだろう。日韓両政府は15年に慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」で合意した。

しかし、文前政権は19年に、合意に基づいて韓国で設立されていた元慰安婦を支援する財団を一方的に解散。

合意は骨抜きにされた。合意時に外相として汗をかいたのに、メンツを潰されたのは岸田氏本人なのだ。 

 一方で、北朝鮮は核・ミサイル開発を加速し、軍事、経済両面での米中対立も深まっている。

特に安全保障面で、日米韓3カ国が連携する重要性は増している。

良好な日韓関係は国益にもつながり、同盟国の米国も期待している。

文前政権が放置した問題に取り組む尹氏の顔を簡単に潰してよいのかということもあるだろう。

  14日の官民協議会に出席した原告側の関係者は「日本政府は強硬な姿勢を崩していないから、日本企業だけでも必ず謝罪すべきだ」と述べた。

基金を作って肩代わりする場合は、被告企業の参加が最低条件だとも伝えたという。

18日の日韓外相会談で、朴振(パク・ジン)外相は

「現金化される前に望ましい解決方法が出てくるように努力する」。

本気なのなら、尹氏や朴氏が原告らと真摯(しんし)に向き合ってはどうだろう。  

そしてボールは日本政府にもある。

「今度こそは」と期待して手を差し伸べるのか。

それとも「言葉だけならいらない」と突き放すか。判断は難しいが、韓国政府が真摯な答えを持ってきたなら、真正面から受け止めて協力すべきだろう。

【ソウル支局長・坂口裕彦】

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